世界への挑戦編②
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3対3の同点に持ち込んだものの、残り時間でどちらも決勝点を決めることなく引き分けで試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
フィールドでは選手たちが疲れと悔しさから崩れ落ちるように倒れ、ベンチではすっかりお通夜ムードとなってしまった。
そんな中、目金が立ち上がる。
「みなさん。まだ、予選通過出来ないとは決まってませんよ」
「他のチームの負けを期待しろってのか!」
染岡に噛み付かれた目金は、ひぃと悲鳴を上げて私の後ろに隠れてきた。
『もう、そんなことは言ってないでしょ?目金は目金なりにみんなを励まそうとしたんだよね?』
後ろに隠れた目金にそう声をかければ、コクコクと首を縦に振った。
その様子を見て染岡は口を結んでムスッとしている。
しょうがない子だねぇ。
染岡に近づいて肩にポンと手を乗せる。
『悔しいのはわかるけど当たるのは違うでしょ』
「……わるかったな、目金」
「い、いえ!」
よし、と肩に乗せていた手を伸ばして染岡の頭を撫でる。
「ばっ、か!子供扱いすんなっつーの」
真っ赤な顔をした染岡に後ろに逃げられて、残念と空いた手を下ろす。
坊主頭って触り心地いいんだよね。
それから、整列を終えたフィールドプレイヤーたちがベンチへと戻ってくる。
この試合で引き分け、これまでのリーグ戦で勝利数2で負け1のうえ大量得点がなく得失点差が1しかないイナズマジャパンは、明日のアメリカ代表ユニコーンの試合の勝敗と得点差によって結果が決まる。
出来れば自分たちの力で確実に決勝トーナメントに上がりたかっただろう選手たちの顔は暗い。
「勝たなければならない試合に勝てなかった。それが今のお前たちの現実だ」
久遠さんは相変わらず選手達に厳しい言葉をかける。
「だが、誰に恥じることはない。最良のプレーだったと言えるだろう。後は結果を待て」
珍しい称えるような言葉に選手一同が大きく、はいと返事をするのだった。
「お前は最初から俺にヒントを与えていたんだな」
私の隣にやってきた鬼道はそう言って、向かいのベンチでフィディオに何故カテナチオカウンターを完成させる上で影山東吾のプレーが必要だと気づいたのかと問うてる影山を見た。
『ん?最初から?』
今回カテナチオカウンターを攻略する上で、鬼道が影山に師事をしていたことが重要になるからその事をチームKとの戦いの頃から伝えようとはしていたけれど、最初からってなんだ、と心当たりがなく首をかしげる。
「なんだ、忘れたのか?土門に影山総帥の過去を自分の過去と偽って伝達させただろう」
あー、そう言われればやったやった。
『あの時はそんなこと考えなかったよ。ただ影山さんに私がちょっかいかけたかっただけ』
「ちょっかい……。あの人にそんなことしようとするのはお前くらいだな」
『ふふ、でも絶望した人間にはそういうの意外と効くんだよ』
昔病院で、DS片手に毎日のように私の病室にやってきて好き勝手してた小さな男の子の事を思い出す。
『それより、私となんか話してないで、影山さんと話してらっしゃい。最後に、…………』
「水津?」
『最後に、言いたいこと言ってきなさい』
そう言って鬼道の背中を押す。
口を滑らせた上に言葉に詰まってしまったから、鬼道は察してしまったかもしれないが、最後に悔いなく話してくれたらいい。
「私の憧れた父を超えた者……。流石だ、お前たちは本物だ」
「貴方こそ」
鬼道がそう声をかければ影山は鬼道に振り返った。
「私もなりたかった。お前たちのように」
「貴方ならなれたはずです」
鬼道のその言葉に影山は、ふっ、と小さく笑を零す。
そんな中、スタジアムの外から段々とサイレンの音が近づき大きく聞こえてくる。
「まさか!自分で!?」
「私にとってこれは最後の試合だ。楽しかったよ」
心からそう言ってる様子の影山に、鬼道は目に付けていたゴールを外してみせた。
「久しぶりだな。お前の素顔を見るのは」
赤い瞳に鋭い切長の眼。
両手にゴーグルを乗せた鬼道を見て影山はどこが懐かしそうに口元を緩めた。
「お前にはもう必要ないか」
その言葉に鬼道は直ぐに、いえ、と返しゴーグルを目に当て、頭の後ろにゴムバンドを通す。
「これからも使わせてもらいます。これは俺のトレードマークですから」
「そうか」
胸を張ってそう言う鬼道に、影山はフフと小さく笑った。
そして、ドタドタとグラウンドへ幾人もの足音が聞こえてきた。
「ミスターK!いや、影山零治。傷害罪及び国内逃亡の容疑で逮捕する」
そう言って現れた警察官が影山を取り囲む。
警察官たちの後ろに、夏未ちゃんを連れた鬼瓦刑事の姿も見えた。
影山は大人しく警察に従い、彼らに着いていく。
その中でふと、足を止めた。
「私がこの言葉を口にすることなどないと思っていたが……。ありがとう、フィディオ。そして鬼道」
そう言って影山は再び歩き出す。
「監督……」
「影山総帥……」
フィディオと鬼道がその背を見送る中、鬼瓦刑事が影山に駆け寄る。
「まて、影山。お前を操っていたのは誰だ。40年前バスに細工し、ここまで全ての陰謀を企めたとは思えん!お前に力を与え、闇に引き込んだ人物がいるはずだ!」
それを聞いて影山はまた足を止めた。
「そこまで調べていたか……」
そう呟いた影山は、何故だか私の方を向いた。
「水津、お前は私のようになるな」
『それは……』
あの人とは関わるな、ということだろうか。
私が考えているうちに、観客席からおじさんと呼ぶ女の子が声が聞こえた。
観客席の1番端まで走ってきて、少女は柵から身を乗り出す。
「どこ行くの?ルシェ、お話したいことがいっぱいあるんだよ!」
「また手紙出すよ」
そう言って影山は、ルシェの顔見たあとまた警察と共に歩いて行くのだった。
フィナーレ
終わりは唐突にやってくる。