フットボールフロンティア編
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『お願い』
ギュッと指を組みただ祈る。
ピィーっとホイッスルが鳴るのと同時に、ドゴッと鈍く金属と金属のぶつかる音がして、天井からフィールドへと鉄骨が降り注いだ。
ドコン、ドゴンといくつもの鉄骨が音を立ててフィールドに刺さり土埃を舞上げた。
「ああっと!?ど、どういう事だ!!?突然雷門中側の天井から鉄骨が降り注いできた!大事故発生!!」
観客もフィールドにいる帝国選手達も、ベンチのマネージャーと監督も皆が突然の出来事に唖然としていた。
雷門中生でいつも実況に来てくれている角馬くんは、実況者として何とか言葉を紡いだが彼も青い顔をしている。
「ひ、酷い...グラウンドは鉄骨が突き刺さりこれでは...雷門中イレブンも......、えっ!?」
立ち上がっていた土埃が徐々に晴れていく。
「なんと!?雷門中イレブンは無事です!誰一人怪我をしていない模様です!これは奇跡だ!!!」
実況のその言葉に、ホッと息をつき、肩を下ろす。良かった。
試合は一時中止だ!!そう言って鬼瓦刑事が警察手帳片手にフィールドに入って来るのが見える。
騒然とする客席を立って、選手達のロッカールームへと走る。
『みんな!!』
廊下を走っていれば、ちょうど雷門、そして帝国の両イレブン達が、グラウンドから中に戻ってきた所だった。
恐らく刑事さん達の判断で、選手は控え室にとでも言われたのだろう。
「水津さん!」
声をかけてくれた秋ちゃんの傍に駆け寄って、皆を見る。
『誰一人怪我はない!?』
「ああ、大丈夫だ」
「鬼道のおかげでな」
円堂の言葉に、帝国選手達の先頭に立っていた鬼道に視線を移す。
『帝国の子達も、特にFWの子達。怪我は!?』
捲し立てるようにそういえば、えっ、と帝国選手はざわついた。
「皆、怪我はない」
『は...、良かった...』
万が一、私の存在のせいで、鉄骨が倒れるのがズレたりしたら帝国側の前衛にいるFW選手達も怪我する可能性あったからな。何もなくて良かった。
ほっと息をついて、パンパンと手を叩く。
『とりあえずみんな、ロッカールームへ』
移動しようと急かせば、皆どこか呆然としたようすで動きだす。
まあ、目の前にあんなぶっとい鉄骨が落ちてきて、数メートルズレてたら自分達に刺さってたと思うとトラウマ物だろう。
雷門中の皆が動き出す中で、鬼道が足を止めたままでいて、帝国イレブン達が彼を不安そうに見つめていた。
『鬼道?』
「すまない。皆は水津に従って戻ってくれ」
そう言って鬼道はマントをはためかせ、ロッカールームとは違う方へ足を踏み出した。
「待てよ鬼道。総帥の所だろう?俺も行く」
「なら、俺も」
源田がそう言えば、寺門が続く。そうすれば、俺も、俺もと他の選手たちも声を上げた。
「お前達...」
「俺も行くよ鬼道」
円堂までもが声を上げる。
「円堂...」
「そうだ。1人で抱え込むな。俺も奴とは蹴りをつけなきゃならん」
そう言って後ろから響木監督が現れた。
「だが、全員で行くのは得策ではないな...。水津、皆の事を頼めるか」
突然の抜擢に少し驚きながらも、はい、と返事を返せば響木監督はうむと頷いた。
「最初に声を上げた2人以外は、ロッカールームで待機だ。警察からの事情聴取もあるはずだからな」
監督の言葉に、帝国イレブン達は少し悔しそうに、わかりました、と返事をした。
それか、源田と寺門に頼んだぞ、と皆が声をかけている。
「監督!俺は!」
「円堂...お前もある意味無関係ではないからな。仕方がない」
行くぞと響木監督が円堂の肩を叩けば、こっちです、と鬼道が案内をするように歩き出し、選ばれた2名も慌ててついて行く。
『みんな、気になるだろうけど、とりあえず戻ろうか』
残りの選手達に声をかけて、鬼道達とは逆方向、ロッカールームへと歩き出した。
『秋ちゃん、一通り皆に怪我がないかチェックしてね。夏未ちゃん、刑事さんが来たらその指示に従ってね』
雷門中のロッカールームで、選手達には極力座りなさいとベンチに腰を下ろさせて、それからマネージャーたちに指示を出す。
雷門中の選手のメンタルケアは、精神力強め、円堂に少し似てる秋ちゃんが居るし、尻たたき要因として夏未ちゃんもいるから大丈夫だろう。
『春奈ちゃん』
ぼんやりした様子の彼女に声をかける。
「あ、はい。何か...?」
『今から、帝国選手達のケアに行くから手伝って...』
そこまで言って、ふと言葉を区切った。この子が今1番メンタルケアが必要な子かもしれないな。
『いや、秋ちゃんや夏未ちゃんのサポートしてあげてね。特に1年生達は2人よりも同じ1年生の春奈ちゃんの方が気を使わないで済むだろうしね』
「はい」
いつものような元気はないが、ちゃんと頷いてくれた春奈ちゃんの頭をよしよしと撫でて、雷門のロッカールームを出ようとしたところで、待った!と声をかけられて。
振り返れば、土門か立っていた。
「俺も行くよ。顔知ってる奴がいる方が向こうも気使わないだろ?」
『確かに。でも気まずく無い?』
元帝国選手と言えど、スパイから雷門中に寝返ったわけだし。
「まー...それを言われりゃそうだけど。でも、それが俺の戒めだから」
真っ直ぐにそう言われてしまえば、来るなとは言えないわ。
『君がいいんならいいよ。行こう』
2人で雷門中のロッカールームを出て帝国のロッカールームを目指す。
本来なら他校のロッカールームならノックするべきなのだが、如何せんこの施設は自動化されているので扉の前に立った瞬間、ウィーンと音を立てて扉は両側に開いて行った。
開いた扉の先にあったのはどんよりとした空間。まるでお通夜だ。
『お邪魔するよ』
「失礼しまーす」
「雷門の暴力女と、...土門」
佐久間がそう言って、ロッカールームに踏み込んだ私達を片目でじっと見つめた。しかし、そのあだ名はどうにかならないものか。
「何しに来たんだ?」
怪訝そうな顔をしていう万丈に、手に持った救急箱を掲げて見せる。
『本当に怪我してる子居ないかチェックしに来た。鉄骨当たってなくても、びっくりして転けた子とか、転けそうになって足首捻った子とかいない?』
ぐるり、とロッカールーム内にいる帝国の選手顔を見れば、一応確認とグリグリとつま先を立てて足を回してみる子達がいる。
「大丈夫だ」
「問題ない」
その返事に良かったと胸を撫で下ろす。
「お前、なんで...」
そう言って怪訝そうな顔で万丈が見つめてきた。
『ん?』
「...なんで、俺らの心配をするんだ。俺らはあんな事をしたチームだぞ!」
そう言って万丈は身体の横でギュッと拳を握りしめている。
『あれは君らの意思でやったことではないでしょう?』
「それは...そうだけど...」
『影山が勝手にやったことを君らのせいとは私は言わないよ』
他の雷門中の子達がどう思うかは人それぞれだから何とも言えないけどね。
『私から見れば君らも被害者だし』
「けど、今回の件だけじゃないだろ」
そう言った大野を見れば、ゴーグルと一体化したメットを被っているので表情は良くわからないが、気が滅入っている様子だ。
「影山の手の者がバスに細工をしたって話も聞いたし、土門の事もある」
そうって見られた元スパイの土門はなんとも言い難い表情を作っている。
『バスの事も君らがやってくれって言ったの?』
「違う!」
大きな声で否定した佐久間に、そうだよねと頷く。
「それにしたって普通、怒るだろ」
そう言ったのは辺見で、まあ辺見ならすぐキレそう。
『まあね。みんな怪我どころか下手したら死んでたし、正直影山には怒っているけど。でもそれは私ら雷門だけじゃなくて君らもでしょう?』
皆も影山への怒りが湧いたからこそ、あの場で鬼道について行くと手を挙げたのだから。
「そりゃあそうだろ」
「俺らはあんな事しなくても、十分やれるはずなのに」
「総帥は俺らの力を信じてなかったんだな...」
帝国イレブン達は、怒りを通り越してすっかり落ち込んでしまっている。
「今まで俺たちは強いと思ってたのが、全部影山の根回しのおかげだったなんてな」
自らを嘲笑うように、咲山が言うので首を振った。
『それは違うよ。君らはちゃんと強いし、これまで練習して身に付けた力は嘘ではないよ』
「そんなこと...」
『君らと戦った事があるから分かるよ。きっと、雷門の他の子たちもそう思ってる。ね、土門』
「おう。それこそ円堂なんか電車の中で、あの帝国とまた戦えるってワクワクしてるみたいだったからな」
容易に思い浮かべれて、思わず笑顔になる。
「そう言ってくれる相手と戦ってみたかったですね」
しゅんとした様子の洞面にそうだなと成神が頷いた。
「今の俺たちには雷門と戦う資格はないからな...」
『いや、それは...』
そこまで言いかけて、辞めたのはちょうど後ろで扉が開く音がしたからだ。
「鬼道さん!」
「鬼道!!」
振り返れば、ちょうど自動ドアを鬼道と源田と寺門がくぐり抜けて入ってくる所だった。
「影山は捕まって警察に連行された」
そうか、と皆が頷いた。
「それで試合なんだが、」
「ああ、中止だろ」
「仕方がない。こんなこと後があったんだ」
負けか、と落ち込む帝国イレブン達にいや、と源田が話を切り込む。
「試合はやることになった」
そう言えば、えっ!?と皆が驚きの声を上げた。
「警察の事情聴取を請ける合間に、グラウンドを入れ替えて、それが終了次第に試合を行う」
「えっ、けど、雷門側はそれで...?」
「ああ。円堂が試合をしたいと申し出てくれた」
「円堂らしいな」
『だね』
土門とそう言えば、やっとこちらに気がついたのか、3人は目をぱちくりとさせて、なんでここに居るんだと言いたげに見てきた。
『怪我ないかのチェックに来たの』
「帝国はマネージャーいないから手当とか困るだろうからって梅雨ちゃんが。ちなみに俺はただの付き添いな」
土門の言葉に、帝国イレブンはなるほどと頷いた。
「それで様子を見に来たのか」
『そういう事。とりあえずみんな試合に出ても大丈夫そうよ』
「そうか。すまないな」
謝る鬼道に対し、いいえ、と頭を振る。
『困った時はお互い様よ』
そう言えば、ありがとうなと源田が笑った。
「しかし、総帥がいなくなったとなると監督はどうするんですか?確か大会規約に、監督不在のチームは出場禁止とあったはずですが」
五条が手を挙げてそう言えば、それは...と鬼道が言い淀んだ。
『ああ、それなら!』
ポンと手を叩けば、ああ、と土門も頷いた。
「うちみたいに新しい監督を立てればいい」
「新しい監督ってそんな急に...」
『いやいや。確か、帝国は部活顧問の先生がついてたでしょうよ』
そう言えば、みんながあっ!と声を上げた。
「なるほど安西先生か!」
よし、頼みに行こうと、全員が立ち上がる。
『それじゃあ土門、私らも帰ろうか』
「そうだな」
また試合でな、そう声をかけて2人で帝国のロッカールームを後にした。
試合は事情聴取の後で
刑事さんに土門はスパイさせられてたこと、私は今日、ボール蹴ったら天井に″偶然″当たってボルトが落ちてきたこと、よーく話さないとね。