世界への挑戦編②
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イタリアチームのフィディオが機能していないバラバラな様子に鬼道が気づかないわけがなく、皆に的確な指示でボールを奪わせ敵陣へ切り込んでいく。
それを見たフィディオがディフェンスラインを下げろと指示を出すが従ったのは、MFのアンジェロだけでオルフェウスの選手達はボールを持った佐久間から奪い返そうと指示とは真逆に上がって行く。
自分の方へと集まっていると分かっている佐久間は最大限に彼らを引き付けた後、素早く斜め前の鬼道へパスを回した。
ボールを受け取った鬼道は佐久間が向かってきたマルコ、ジョルジョ、ベントの3人の前を抜けた瞬間ボールを戻した。
鬼道となんの合図もなく華麗にワンツーパスを決めた佐久間かゴール前へ大きなセンタリングを上げた。
ゴール前はがら空きで、ノーマークの豪炎寺が駆け上がり焦ったようにキーパーのブラージがゴールエリアからペナルティエリアに飛び出した。
その瞬間、豪炎寺の横を豪炎寺の横を彗星の如く駆け上がって飛び上がった少年がセンタリングボールを叩き落としラインの外へと出した。
「危ないところだったな、ブラージ」
間に合ってよかったというようにフィディオが言えば、ブラージはなにも言わず彼に背を向けた。
普通なら、助かっただの、ありがとうだのありそうなものだが、今のオルフェウスのメンバーの態度は冷ややかなものだった。
だが、フィディオはそんなチームメンバーに諦めず、話を聞いてくれと声を上げる。
「俺たちのやってきたサッカーをすれば、悔いのない試合ができるだろう!でも、それでは今のイナズマジャパンには勝てない。けれど、ミスターK、あの人のサッカーなら、カテナチオカウンターを完成させることができるなら勝てるはずなんだ!そのためにはみんなの力が必要なんだ!」
「どうしてあいつにそこまで肩入れする!」
説得しようと力説するフィディオにブラージが問えば、周りの子たちもそうだそうだ!と声を荒らげた。
「アイツにやられた事を忘れたのか!」
「忘れてはいない!あの人は自分の犯した罪をきちんと償うべきだと思っている。でも、あの人の考えているサッカーは俺たちを次の次元に導いてくれるかもしれない。そんな予感がするんだ」
フィディオはブラージの傍に駆け寄って彼の両腕を自分の両手でがっしりと掴んだ。
「頼む。わがままだと分かっている。でも5分だけ俺にくれ!イナズマジャパンに勝つために。そして世界の頂点に立つために!」
その言葉を聞いたブラージは今までの険しい顔から一変し、口元を綻ばせた。
「向こうのスローインだ。フィディオ、みんなにスローインの指示を」
そう言ってブラージは自分の腕を掴んていたフィディオの手を反対の手で取り外していく。
「お前に頭を下げられれば誰も断ることはできない。キャプテンはお前だからな」
フィディオの手を外し終えたブラージはゴールエリアへと戻っていく。
「5分だ。5分だけはお前を信じる。いいな、みんな」
唯一影山によって怪我を負ったブラージが折れてしまえば異論を唱える者など居なくなった。
分かった言うように頷いた皆に、フィディオがディフェンスの指示を出し、スローインされたボールを的確に奪った。
今までフィディオに回ってこなかったボールもパスされるようになって一丸となって攻め上がってくるが、あっさりとジャパンのディフェンスにボールを取り返され、取り返しても連携が上手くいかない様子。
「動きが噛み合ってませんね、向こうのチームは」
これ幸いと言った様子で目金がメガネのフレームを人差し指を持ち上げる。
オルフェウスの取りこぼしたボールを拾った綱海から鬼道へボールが渡り今度はイナズマジャパンが攻め上がるが、オルフェウスは先程攻めようとした時の陣形のままボールを追いかける。
ディフェンスに選手たちを戻して集中して正面からブロックする事も可能だが、それをせずに彼らはフィディオを中心に他の選手たちが一定の距離を等間隔に並んだ状態で鬼道を追いかけた。
鬼道を追う為に中心のフィディオがスピードを上げても他の選手たちの距離感が一定に保たれる。先程まで合わなかったそれを土壇場で合わせた彼らは、鬼道へ追いついた。
フィディオが1歩、ギアを上げて鬼道の前へ飛び出し、瞬時に体を捻って鬼道の足ものボールを掬い取ろうとした。鬼道の方が1枚上手で足の側面でボールを軽く逸らしてフィディオを足を避けたが、あんなギアを上げてすぐ急ブレーキでターンしてボールを奪うなんて……そう簡単に出来る代物じゃない。
『あれが、影山東吾のプレー』
「なに、」
思わず呟けば驚いたように響木さんが私の方を振り返った。
「そのプレーをやめろ!」
そう言って、イタリア代表のベンチから焦ったように大声を上げたミスターKが飛び出した。
「私の全てを壊したあの男のプレーなど!!」
「いいえ!!やめません!!」
フィディオは逃げる鬼道を追いながら大声で叫び返した。
「あなたが求めていたサッカーは、あなたの父、影山東吾が中心にいることで完成するのですから!!」
そう言いながらフィディオは鬼道を追いかけ回す。
他のイナズマジャパンのメンバーがフォローに入りたくとも、フィディオを囲うように等間隔にいるオルフェウスの選手達が邪魔で鬼道から周りにパスする事が出来ない。
フィディオが追いついた時点で鬼道は檻に閉じ込められてたわけだ。
しっかり
「これがあの特訓の成果なんだ!」
「そしてこれが、ミスターKの目指したサッカー……!」
ガッチリと囲まれて行き場のない鬼道にフィディオが正面から突っ込んで行く。
ただ、真正面から取るのではなく、フィディオは先程見せたターンを今度は後ろ向きでしてみせた。右足を軸に左足で空を蹴り遠心力で回転し、左足の踵でボールを押し出し鬼道の後ろへ回る。
右足を軸に左足でただ蹴るのでは、おそらく鬼道には交わされると読んでのトリッキーな動き。
「サッカーを愛する者だからこそ作り上げることの出来た完璧な必殺タクティクス」
そう叫んでフィディオをジャパンのゴールの方を向き、右足を天高く上げた。
「これがカテナチオカウンターだ!」
フィディオがボールを大きく蹴り飛ばしラファエレがボールを受け取りカウンター速攻を開始する。
「絶対に止めて見せる!」
ボールに足を乗せ腕を組みコースを定めるラファエレを前に円堂が構える。
その足元がパキパキと音を立てゴールエリア一帯がスケートリンクのように凍って行く。
「フリーズショット!」
その地面を滑らせるようにラファエレがボールを蹴り飛ばした。
飛んできたボールを円堂が掴もうとするが、つるりん、と滑って腕をすっぽ抜けゴールネットへと突き刺さってしまった。
ホイッスルが鳴り響く中、私はイタリア代表ベンチへ視線を移した。
自分の率いるチームが、しかも憎いはずの円堂大輔の孫がいるイナズマジャパンから1点取ったというのに、いつもの不敵さはなく、ミスターK……いや影山零治は驚愕した様子だった。
そして、影山はその場で膝から崩れ落ちるのだった。
憎愛
本当にサッカーが憎くて嫌いなのならきっと見たくもないほどのはず。それならば、この男なら日本では出来ないように禁止するとかサッカーというもの自体を消したはず。
そうじゃ無かったというのはきっと、サッカーが好きだったからなんだろうね。