オリオンの刻印
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趙金雲監督からの合宿の説明が終わった後、私はいの一番にとある人物たちの元へ向かった。
『秋ちゃん、久しぶり』
「梅雨ちゃん!」
小柄なおばちゃんと喋って居た緑の髪の女の子が振り返って、ぱっと咲いた花のような笑顔を見せてくれた。
『ヨネさんもお久しぶりです』
おばちゃんの方にも声をかければ、まあまあまあ、と呟いて近づいて来られた。
「アンタちょっと痩せたんじゃないのかい?」
『あはは……』
味覚障害で味わかんなくて食欲落ちてた上に、ストレスで吐いてからねぇ。
「おばちゃん達が美味しいご飯を作るからしっかり食べるんだよ!」
そう言っておばちゃんはポンと自分の胸を叩いた。
ヨネさんと秋ちゃんはこの宿舎中の家事サポートをしてくれるそうだ。
代表メンバーは19人、まあ野坂が手術で居ないけど、フリスタ代表の私含めてもやっぱり19人。
それに、監督の趙金雲、コーチの久遠道也、監督の弟子の子分くん。
かなりの人数の世話をマネージメントをしながらマネージャー達が行うのは無茶があるということでサポートにヨネさんと秋ちゃんの2人がついてくれるそうだ。
ちなみにマネージャーは、大谷つくしちゃんと神門杏奈ちゃんだ。
そう言えば、冬花ちゃんはマネージャーに居ないんだな……。
いや、そもそも何かがおかしいこの世界では、冬花ちゃんも久遠冬花ではなく小野冬花のままなのかも。
だとしたら円堂のおじいさんは……この平行世界線では本当に亡くなっている可能性もあるな……。
「梅雨ちゃん?険しい顔をしてるけど、大丈夫?」
秋ちゃんが心配そうに顔を覗き込んできて、考え事から現実に戻される。
「あのコーチ?」
私の視線の先を追って秋ちゃんは首を傾げる。
「確か、鬼道くんの行ってた星章学園の監督よね」
『ああ、うん、そうだね。あの人が私のコーチングもしてくれんのかなぁ、って思って』
「水津サンのコーチは別の方にお願いしてありますよ」
後ろからそう言われ、ビクリと驚いて振り返れば趙金雲がヨホホホと笑っている。
『別の方?』
「ええ。だだ手続きに少し時間がかかるそうなので数日の間はサッカーの代表選手達と共に練習してもらうことになりそうです」
『手続き?』
「はーい。では、今日は荷物を置いてゆっくり休んで下さいね」
それ以上は教えられない、と行った様子の趙金雲が足早に去っていく。
手続きってなんだろうか。海外からくるとか?
趙金雲のコネクションがある人だろうし、中国の人かな。中国なら雑技とか少林寺サッカーとかのイメージあるしそういう方から教わるのはありそうだな。
なんて、想像をしてその日は監督に言われるがまま、部屋でゆっくり休むのだった。
「おはようございまーす!今日は皆さんに特別ゲストを紹介しますよ」
朝イチで練習コートに日本代表たちが集められたのだが、現れた趙金雲監督の横に立つ人達を見て、去年親善試合に参加した者達が驚きの声を上げた。
「スペイン代表キャプテン、クラリオ・オーヴァンさんです」
「よろしく」
そう言った彼の後ろには、同じスペイン代表のベルガモの姿もある。
「クラリオ・オーヴァン……!」
「世界のプレイヤー!」
険しい顔をする元雷門中のメンバーと変わって新生雷門だった伊那国メンバーは目を輝かせている。
氷浦なんかは稲森に夢が叶ったななんて声をかけている。
そんな中、趙金雲はパンパンと手を叩き皆に静かになるよう促した。
「はい、では皆さん、クラリオさんにお手合わせ願いますよ」
「お手合わせだと?」
「今から!?」
「ちょっと待ってくれ!あ、待って下さい監督!」
慌てて剛陣が言葉を訂正する。
「こっちは18人もいるんスよ?」
「構わん」
真顔でそういうクラリオに彼と戦ったことの無い者たちは、え?と呟く。
「なんならRanaも参加してくれて構わない」
「ラーナ?」
誰だそれは、そんな名前の人物は居ないと皆が首を傾げる中、私は大きくため息を吐いた。
「失礼。水津だったな。君は参加しないのか?」
『私、自分の土俵でしか戦いたくないんだよね』
「土俵?水津は相撲もするのか?」
真顔で聞き返して来たクラリオに頭を抱える。
『あー、日本語って難しいよね。フリースタイルフットボールで良ければ勝負してあげるって意味よ』
「ふむ。そうか。それは残念だ」
そう淡々と真顔でいうから本当に残念がっているのか分からないクラリオは、では手合わせ願おうかと、1人てフィールドの中央に立った。
本当に良いのか?何を企んでるんだ?と皆それぞれ不思議に思いながらも日本代表の18人がフィールドに並び立つ。
普段11人のフィールドに7人も多いと凄く狭く感じるな。
「では、初めて下さい」
監督の合図でつくしちゃんがホイッスルを吹いた。
ピッーという音と共にドリブルを始めたクラリオに、剛陣、吉良、灰崎が飛びかかるが華麗なステップで抜き去り、向かってくる基山、不動を追い抜く。
そこへ彼と1度対戦済みの鬼道と豪炎寺が連携して道を塞いだ。
クラリオは上手いフェイントで豪炎寺と鬼道を左右に振って抜き去った。
それでもまだ8人のMFとDFが3人のゴールキーパーたちより前に居る。
彼らの前で足を止めたクラリオはボールを蹴り上げ目を閉じ神経を研ぎ澄ますように息をした後、眼前に蹴りあがったボールを幾重にも切りつけるように蹴った。
「ダイヤモンドレイ!」
親善試合の最後に見せた光り輝くシュートが残る8人を蹴散らしていく。
『……へぇ』
一星って言ったっけ。ロシアに居たってあの子だけが吹っ飛ばされる間際受身を取っていた。
海外でプレイしてただけあって、見た事があったのかな。
「ぐあっ」
「グッ」
正面から両手で止めに言った砂木沼をぶっ飛ばしたシュートを今度は西蔭が正面から受ける。
先程の砂木沼よりかは持ちこたえたが、それでも鋭い光を放つクラリオのシュートは西蔭の腕をすっぽ抜け
て、ゴール前の最後の砦、円堂へとたどり着いた。
「今度こそ止めて見せる!風神雷神!!」
2体の魔神を呼び出した円堂が雄叫びを上げでボールを両手で受け止める。
あれから1年。進化した円堂の技だ。
どうだ!と目を凝らして状況を見守る。
「ほう」
前回とは違う様子の円堂にクラリオは少し嬉しそうにした。
だが、シュートの圧に押され円堂はジリジリと後ろに押されそのままゴールに押し込まれてしまった。
「凄い……!」
「全員でも歯が立たないなんて……」
彼と初めて戦った稲森や氷浦が驚いたように汗ひとつかいていないクラリオを振り返った。
「少しはレベルが上がったようだな。水津が入らなかったのにも頷ける」
「お前の目的はなんだ?」
鬼道が問えばクラリオは笑った。
「私は日本のサッカーが好きになったんだ。以前戦ってあなた達の気持ちのいいサッカーに魅力された。サッカーとしてはレベルが低かったけどな」
「嘲笑いに来たのか?」
ムッとした様子で風丸が言い返す。
「以前の日本とは全く違うようだ。本物の戦士の目になっている。いい兆候だ」
「高みの見物か」
鬼道の言葉にクラリオは、素直にああと頷いた。
「正直そのつもりだった。しかし、考えが変わった」
何?と豪炎寺が聞き返す。
「以前の日本は我々に遠く及ばない実力だった。しかし私は昨日、日本のある選手の練習を見てしまった。それを見て私は滞在予定を短縮し、国に帰ることにした。日本を迎え撃つ特訓のために」
へぇ、誰のことだろうと代表選手たちの顔を見るが、みんなして誰のことだといった様子だ。
「その者のプレーは私を驚愕させた。日本のレベルが我々に迫りつつあると感じたからだ」
「おお!ほんとか!」
「誰のことだ……?」
「フッ、そうか。気づいて居ないのか」
そう言ってクラリオは皆に背を向けて、ベンチにいる私の方へ歩み寄ってきた。
……え?私とか言わないよね?昨日は監督に言われるがままそのまま部屋で寝たよ?練習してないが??
「水津」
クラリオに名前を呼ばれ手を取られる。
ん?なんかデジャヴだな。
「エキシビションで貴女のフリースタイルフットボールが見られること、とても楽しみにしている」
そう言ってクラリオは私の指先に唇を落とす。
「ええっー!!!」
同じベンチにいるつくしちゃんが、いや、フィールドに居る何人かも同じように驚きの声を上げている。
そんな中、クラリオは私の耳元に顔を寄せた。
「オリオン財団には気をつけろ」
『え?』
小声でそう言った後、クラリオは私から離れてベルガモを連れてスタスタと練習グラウンドから出ていってしまう。
オリオン財団……?その名前どこかで……。
わざわざみんなに聞こえないように小声で言ったってことには何か意味が……。
「──水津さん!水津さん、大丈夫ですか」
その声にハッと顔を上げると、切れ長の目が心配そうに私を見ていた。
『西蔭、大丈夫だよ』
頭を撫でようと手を伸ばせばがっしりと掴まれた。
「洗いに行きましょう」
『え?』
西蔭に引っ張られベンチから立ち上がらされる。
『別にそこまでしなくても……』
汚物扱いみたいで可哀想じゃんと思うがグイグイと西蔭に腕を引かれる。
「ヨホホホ。青春ですねぇ、行ってらっしゃい〜」
呑気に手を振る趙金雲に見送られ西蔭に水道のある場所まで連行されるのだった。
守りが薄い
と西蔭に怒られて、私も手合わせに入れば良かったね、ごめんと謝れば、その守りじゃないと頭を抱えられるのだった。