世界への挑戦編①
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片付けを終え、マネージャーたちがあがってから30分くらい経った頃だろうか。
2人分の足音が廊下から聞こえてきて、データ入力をしていたノートPCの画面から顔を上げた。
「飛鷹さん?なんで食堂に……」
入口で足を止め困惑した様子の虎丸を置いて飛鷹が中に入ってくる。
『おかえり2人とも』
「うっす」
「あ、はい……」
飛鷹は小さく頷き、虎丸は気まずそうに中に入ってくる。
「姐さん、厨房借りてもいいっすか?」
『うん、いいよ』
作業中のノートPCを折りたたみながら立ち上がって、厨房に向かって消していた電気を付ける。
「虎丸、適当に座ってくれ」
飛鷹はそう虎丸に声をかけて、私の後について来て厨房へ入った。
『冷蔵庫のコレは明日の朝食のだからダメだけど、こっちの分は好きに使っていいよ。あと、響木さんが自由に使っていいってラーメンの具材チルドに入れてるからそれも……』
冷蔵庫を開けて使っても大丈夫な食材を説明すれば、ありがとうございますと頷いた飛鷹はタオルでねじり鉢巻を作り頭に巻いた。
『道具とか調味料とか何処にあるか分からなかったら聞いてね』
はい、と飛鷹の返事を聞きながら、私は2つのコップに水を注いで、食堂の方へ戻る。
『ほい、虎丸。水分補給してね』
コップのひとつを大人しく席に座っている虎丸の前に置く。
「……怒らないんですか?」
『なにが?』
「なにって、さっき……夕飯の時の………」
虎丸はゴニョニョと先程、綱海に当たってしまった時の事を呟く。
「それに食事も、残しちゃったし……」
『それで怒られると思ったんだ?』
「はい。なのに水津さん怒らないし、飛鷹さんもオレを謝罪させる為に連れてきたのかと思ったのに、なんか厨房に行っちゃうし」
訳がわからないと虎丸は厨房で鉄鍋を振るう飛鷹を見つめる。
『まあ、飛鷹の真意はすぐにわかるよ。で、まあ、さっきの事だけど……いつもなら怒ったかもしれないけど今回ばかりわね』
そう言って虎丸の頭に手を置きぽんぽんと撫でる。
普段なら子供扱いはやめてくださいと怒る虎丸が珍しく大人しく撫でられている。
『だって、食堂やってる家の子が……、ご飯作る大変さ身近で見てたような子が、ほとんど手を付けずご飯残すなんてよっぽどよ?そんなの調子が悪い意外ないでしょう?そういう時に誰かにあたってしまう気持ちも分かるしねぇ』
「……綱海さんたち怒ってましたか?」
『どちらかと言えば呆れてたかな』
「そう、ですか……」
『まあ、イナズマジャパンはお兄さん属性多いからね』
豪炎寺、鬼道のシスコンお兄ちゃん達に、土方、壁山、吹雪、栗松も兄弟のいるお兄ちゃんだし、綱海は地元でにーにと呼ばれる近所のお兄ちゃんだし、飛鷹も不良たちのアニキだし、結構いる。
『当たってくるだけ、まだ甘えられてんだなーって感じでしょ』
最後にわしゃわしゃと手荒く撫ぜて手を離す。
「うー、それってつまり子供扱いされてるってことですよね」
虎丸はムスッとした顔でそう呟く。
『いいじゃない、実際に子供なんだから存分に甘えればいいわよ』
「甘えればいいって……」
そういう方法がわからないってのも多分お母さん譲りなんだろうなぁ。
まあ、親の背中を見て育つものだしねぇ。
『まあ、手始めにそこのお兄さんに言いたいこと言ってみたらいいよ』
そう言って何かを持って厨房からこちらへやってくる飛鷹を指さした。
「え?なんっすか?」
『お姉さんはそろそろ部屋に戻るから、後の片付けよろしくって話』
「了解っす。ほら、出来たぞ」
そう言って飛鷹が虎丸の前にチャーハンの乗ったお盆をドンッと置くのと入れ替わりで席を離れ、置いていたノートPCを回収する。
「雷々軒裏メニュー、雷々丼だ!」
「らい、らい……?」
仁王立ちしている飛鷹に困惑している虎丸を横目で見ながら私は食堂を出ていき部屋へと歩いて帰る。
『ホームシックねぇ……』
虎丸の不調の原因はそれだったはずだ。
明日にはサプライズでそれも少し解消されるだろうけど……。
自分の部屋に戻ると、テーブルにノートPCを置いて昼間に届いた封筒を手に取った。
『家族、か……』
成人して一人暮らしも長かったからこっちに来てホームシックになるなんて事はなかったが、そういわれれば皆どうしているだろうか。
出来ることならこの世界にいたいと思っていたけれど、そうなると家族とは一生離れ離れだ。
うちは家族仲はいい方だし、なにより、フリースタイルフットボールがやりたいという私のわがままも聞いてくれて、怪我をした後も支えてくれた家族だ。
それを私は捨てるって事になる。
『ちゃんと考えてなかったなぁ……』
届いた封筒の中身を見るにも、やはりこの身体が消える状態をどうにかする方法は見つかっていない。
神代への接触方法もわからないままだ。
アイツがワンチャン知ってるのではと思って影山を頼ったのだけど、ダメだったからなあ。
このまま自然に身を任せたとして、体は別物だから無理なのは分かってるけど、みんなと過ごした記憶とかって向こうの世界に持って帰れるのかな。いや、持って帰れた方が辛いか。
そもそも、
今は選択肢がないけれど
ある状態なら、私は家族を捨てられるのだろうか。