世界への挑戦編①
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時間が経って落ち着いたはいいものの、いい歳してみっともなく泣いてしまったことと、この状況が恥ずかしくて染岡の顔が見れないし、今の自分の顔を見られたくなくて染岡の胸に顔を埋めたまま、小さくあの、と声を掛ける。
「どうした?」
いつもよりか優しい声色に、ドクリと心臓が波打つ。
いい声しやがって、と心の中で悪態をつきながら口を開く。
『その、そろそろ手が疲れたのでカップを置きたいんだけど……』
そう言って、染岡のユニフォームの裾を掴んでいた左手を離す。
「あ、ああ!そうだよな、わりぃ」
染岡は私の頭と背中に回していた手をパッと離して、後ろに距離を取ろうと下がって、真後ろにある椅子に盛大にぶつかった。
ぶつかった勢いで椅子が倒れ、染岡はワタワタと慌てて椅子を起こしている。
『クククッ………なにやってんだか』
「なっ、笑うなよ」
笑いを堪えようと思っていたけど、真っ赤な顔してこちらを睨みつけてくる染岡を見てダメだった。
『カッコつかないわね』
「ぐっ、」
そう言う所も染岡らしいと笑い飛ばしながら、私はベッドから立ち上がってテーブルへと持っていたカップを置いた。
「ったく……。それだけ笑えんならもう大丈夫だな」
染岡は少しぶすくれた様子で先程起こした椅子に腰掛けた。
『うん。ありがとうね』
礼を述べれば染岡は、別に、とそっぽを向いた。
その横顔に見える頬と耳は真っ赤だ。
「2人とも、ご飯持ってきたけど……食べられそう?」
そう言ってタイミング良く秋ちゃんが、開けっ放しの入口から顔をのぞかせた。
「おー、サンキューな」
『うん、いただくよ』
「梅雨ちゃん……!」
良かったと小さく秋ちゃんは呟いて部屋の中へ入ってくる。
『迷惑かけたね』
「迷惑なんて、そんな!それを言ったら昨日は私が梅雨ちゃんに助けてもらったし」
おあいこって事でと秋ちゃんは可愛く笑う。
『そっか。ありがとう。……ところで、それ多くない?』
可愛い笑顔の秋ちゃんの手には持ってきてくれたおにぎりが乗ったお皿があるのだけれど、2人分にしては少し量が多い気がする。
「私も一緒に食べようと思って」
「食堂で食べてこなかったのか?」
染岡の質問に秋ちゃんは、うんと頷きながら、どうぞと私たちにおにぎりのお皿を向けてくる。
と言うことは、だ。
結構長い間泣きついていた気がしたが、実際の時間にしたらそんなに時間は経っていないのだろう。
染岡がドアを開けっ放しにしてたから、他の子たちに泣いてた姿を見られたかもと少し杞憂していたが、そんなに長い時間じゃないなら大丈夫そうかな。
ほっと、してお腹も空いた事だしと、秋ちゃんが持ってきてくれたおにぎりに手を伸ばし、いただきますと、かぶりつくのだった。
ご馳走様でした、と皆口々に言い食事の終わりを告げる。
『おかかおにぎり美味しかった』
「ね、たまにはおかかもいいわよね」
昔から食い力とも言うし、食べて更に元気になった気がする。
食後後のおしゃべりをしていると、あの〜、と弱弱しい声が入口から聞こえた。
左右に2本ずつトゲトゲとした特徴のある青髪の少年がこちらを恐る恐る覗いていた。
その上には対照的な赤色の髪の少年の顔があった。
「お話中ごめんね、食堂で聞いたらここに居るって聞いたから。お邪魔するよ。ほら、木暮くん、謝るんだろう?」
そう言って赤毛の少年ヒロトはそっと前にいる木暮の背を押した。
「そ、染岡さん!ごめんなさい!」
前に押し出された木暮は慌ててそう叫んでぺこりと頭を下げた。
「俺にだけか?他に謝らないといけねぇんじゃないか」
染岡は腕を組仁王立ちで木暮を見下ろす。
恐る恐る顔を上げた木暮はそれを見てヒイッと小さく悲鳴を上げた後、私の方へ体を向けた。
「梅雨さん、ごめんなさい」
先程と同じように木暮は頭を下げた。
『木暮、こっちおいで』
そう声をかければ、はい、と大人しく頷いて、木暮は下を向いたまま、恐る恐ると近づいてきた。
手を伸ばせば木暮はビクッと震えた。殴られると思ったのだろうか。
私は両手を伸ばして木暮の両手をそれぞれ捕まえる。
その手を私の方へ、木暮の体の前に持って行って両手で包み込むようにする。
『木暮。落とし穴はやっちゃダメ』
「でも、」
『染岡がバカにしてきたのがムカついたんでしょ?』
うん、と木暮は小さく頷く。
今日の練習中、へばっていた木暮を染岡がからかっていたからそれが木暮のイタズラの発端なのだろうけど。
『でもね、落とし穴はやっちゃだめ。怪我のリスクも、最悪命を落とすケースもある。命は助かっても脳に障害が残ったり、足を怪我したら?責任、木暮は取れるの?』
真っ直ぐ木暮を見て言えば、彼は下を向いたまま、うっ、と言葉を詰まらせた。
『円堂や秋ちゃんが、フェリーで一之瀬の事話してくれたでしょ?事故の後遺症で再手術しなきゃいけなくて、サッカーが出来なくなるかもしれないし、最悪死ぬ可能性もあるって聞いたよね?下手をすれば、それと同じ事になっていたんだよ』
わかるよね、とできるだけ優しく声をかければ、木暮は、うん、と頷いた。
『例え命に関わらない怪我でも、軽い捻挫で試合に出れなくなったら?選抜を落ちた染岡がどんな思いでここまで来たか分からない子じゃないよね?』
「はい………」
しゅんとなっている木暮の手を離し、自分の手を彼の頭の上に乗せる。
『木暮はイタズラに悪知恵を割けるってことは地頭がいいのよ。それに私の折り紙付きのボールコントロールのセンスがある。それらを駆使して見返すんじゃダメなの?』
「それって、イタズラじゃなくてサッカーでって事?」
ええ、と頷けば木暮は顔を上げた。
「それって、梅雨さんは手伝ってくれんの?」
『もちろん』
そう言えば木暮は、分かったと頷いた。
「もう落とし穴はやらない」
『うん。約束ね』
頭から手を離して木暮の前に握った拳の小指だけ伸ばせば、彼は自分の小指をそれに絡ませた。
指切ったと、小指を離してもう一度だけ、ぽん、と木暮の頭に手を置いた。
『ほら、お昼まだだったら食堂で食べておいで』
「うん、行ってくる」
そう言って木暮は部屋を出ていく。
「じゃあ、俺も食堂に皿下げてくるわ」
そう言って染岡が椅子から立ち上がり空になった皿を手に取った。
「じゃあ俺も……」
静かに木暮の事を見守っていたヒロトが木暮について行こうとして、あっ、と足を止めて振り返った。
「そうだ、水津さん。カッパにあったよ」
『うん?それなら、昨日からきゅうりしか食べてないでしょ?ご飯行っといで』
なんで私にカッパの報告を、と首を傾げる。
「うん、じゃあ行こうか染岡くん」
と、入口を塞ぐ形になっていたヒロトは後ろに引いて、染岡も部屋を出ていこうとする。
「水津、お前は今日はゆっくりしとけよ!木野、悪いけどもう少し傍にいてやってくれ」
『え、いや、もう大丈夫……』
「ふふ、わかったわ」
任せて、と秋ちゃんが力強く頷けば、染岡は部屋を出ていき、ヒロトがドアを閉めた。
「染岡くんって、水津さんのことどう思う?」
ドアを閉めるや否やヒロトがそう言って染岡は、はあ!?と大きな声を上げた。
「どうって……、こんなところで話す内容じゃねぇだろ」
そう言って染岡は、先へ行ってしまった木暮を追ってつかつかと少し早歩きで進んでいく。
ヒロトは不思議そうな顔をして、染岡に歩幅をあわせた。
「お、お前はどう思ってんだよ」
ちらり、と染岡が横目でヒロトを見れば、彼は顎に手を置きうーんと考えた。
「やっぱりカッパではないかな」
ヒロトから帰ってきた言葉に染岡はまた、はあ!?と大きな声を上げた後足を止めた。
「なっ、そういう話かよ……。どう見てもカッパではねぇだろ」
「そうだよね。でも彼女は宇宙人だ」
「宇宙人って、そりゃお前だろ」
「そうだけど、違うよ」
フルフルとヒロトは首を横に振った。
「彼女は俺たちとは違う。本物だ」
「なんだよ?だいたい宇宙人じゃなくて異世界人だろ」
「この地球以外から来たってことは同じようなものだよ。そして、偽物の俺たちと違って、帰る星がある」
ヒロトは真っ直ぐと染岡を見つめた。
彼女は本物であるって事
忘れてはいけないよ。