世界への挑戦編①
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水津と土門が抱き合ってるのを見て、ショックのあまりその場から逃げ出してしまった。
水津が俺を追いかけて来たようだったが、船の出港時間が来て監督に移動を急かされ話すタイミングを失い、そのまま日本エリアの寄宿舎へ着いた。
その後も、夕飯の時に水津が話しかけようとしてくれていたにもかかわらず、その声を遮るように他の奴らに話かけて俺は距離を取ってしまった。
そして、1度無視してしまった気まずさからズルズルと水津を避けるようにし1日が過ぎてしまった。
次の日の朝は、円堂が河童を見ただなんてアホな話題を提供してくれてそれに混ざる事で話たそうにしている水津から逃げてしまった。
「何やってるんだ俺は」
朝食の後、練習の為に全員グラウンドへ出てストレッチを始める中、ベンチの方を盗み見ればいつもはテキパキとストレッチの指示や手伝いをしている水津がぼんやりとしていて木野や音無に心配されていた。
「本当に何やってるの」
その声に振り向けばすくそばに呆れ顔の吹雪がいた。
「昨日から水津さんの事避けてるみたいだけど、押してダメなら引いてみろ作戦でもしてるの?」
「いや、そういうわけじゃねぇけど……」
じゃあなに?と睨みつけてくる吹雪に、周りには聞こえないように小声で昨日見た事を話す。
「…………抱き合ってただけ?」
「だけってなんだよ!」
「だって、キスしたりしてたわけじゃないんでしょ?」
「なっ!?」
いや、そりゃあまあ確かに抱き合ってただけと言えばそうだが……。
「水津さんって結構パーソナルスペース狭いよ?ほら、ああやってすぐ人の頭撫でるし」
そう言って吹雪が指さす先にいる水津は音無の頭を撫でていた。
そういえば昨日も土門の頭を撫でていた気がする。
「多分今からボクがハグしてってお願いしたら、いいよって言ってくれると思うよ?」
思わず吹雪の腕を掴む。
「行くなよ?」
「行かないよ。誰かさんが怖いからね」
くすくすと吹雪は笑った後、それに、と話を続けた。
「昨日フェリーで、キャプテンと木野さんから一之瀬くんの話聞いたでしょ?あの話から察するに土門くんを励ましてたとかなんじゃないの?」
俺だってその可能性は十分にあると思う。
だけどもし、水津が俺に話そうとしてる内容が、土門と付き合い出しただとか、付き合ってるから見た事を黙っててくれとかだったら、俺はどうしたらいい。
前に水津が、大会中は選手の邪魔をしたくないから付き合うことはないって言ってたけど、土門はアメリカチームの奴だし、水津は結構押しに弱いし……。
「しょうがないなぁ。そんなに気になるなら、お昼にボクがそれとなく聞き出しといてあげるよ」
だから練習は集中しなよ、と吹雪に背中を叩かれる。
「ああ、サンキューな」
気にしてくれた吹雪に礼をいい、ストレッチに取り組み始めるのだった。
午前の練習が終わり、皆でぞろぞろとグラウンドから寄宿舎へ帰る途中だった。
「染岡さん!」
寄宿舎の門を過ぎたところで声をかけられ振り返ればボールを小脇に抱えた木暮が、門の向こう側に立っていた。
「練習に付き合ってくれませんか?」
「練習?」
正直、ラッキーだと思ってしまった。
吹雪が水津に探りを入れてくれるのは今からだし、このまま皆で一緒に移動するのは気まずいと思っていた所だったから。
「ちょっとはやる気出したみたいだな!よし、付き合ってやる!」
そう言って前へ進んで行けば、後ろから水津の、あっ、という声が聞こえた気がした。
それと共に、ずるり、と地面が抜ける感覚がしたかと思うと、ガシッと右腕を掴まれた。
そちらへ首を向ければ、青い顔をした水津が居た。
水津は俺を助けようと腕を掴んだのだろう。
だけど、どう考えたって俺の方が重いし、既に落ちかけていた身体は重力に逆らえ無かった。
手を離せなんて言う暇もなくて、そのまま一緒に落ちる水津は腕を引っ張って寄せて俺の後ろ頭に胸を当て、俺の顔の前で腕をクロスさせて、俺の頭を守るようにして一緒に落ちた。
ドシンと落ちた衝撃の後、後ろからハッハッ、と短く荒い息が聞こえる。
緩くなった水津の腕の隙間からどうにか上半身だけ抜けだして、俺を庇った彼女を見ればまだ荒い息を繰り返していた。
「水津、大丈夫か?……水津?」
顔を覗き込んで見るが、目の焦点が合っていない。
未だ荒い呼吸は短く早い。
どう見ても様子がおかしい。
「染岡、大丈夫か?」
木暮の作った落とし穴から出てこない俺らを心配してか、円堂を筆頭に幾人かが穴を除き込む。
「水津の様子がおかしい!そっちで引っ張り上げてくれ!」
そう声を張り上げれば、なんだって!と驚く声が上から聞こえる。
「分かった!」
そう言って円堂が手を伸ばす反対側から土方が任せろと腕を伸ばした。
どうにか狭い穴の中で水津の体を起こして持ち上げる。
「水津、腕伸ばせるか?……くそ、ダメか」
息するので精一杯といった様子の水津の腕をどうにか片方ずつ持ち上げて、円堂たちに順に掴んでもらう。
「円堂、土方、行けるか?」
「おう!」
「任せろ!」
力自慢の2人がグッと引っ張り上げて、何とか水津を上に上げた後、俺も自力で地上に出る。
「これは……過呼吸だな。春奈、何か袋を、出来れば紙袋を持ってきてくれ」
鬼道がすぐにそう言って、わかったと音無が寄宿舎へと走り出す。
「私、お父さんに伝えてきます!」
そう言って久遠はまだグラウンドにいるであろう監督の元へ走り出す。
「梅雨ちゃん、ゆっくり、ゆっくり呼吸して!」
木野が水津に駆け寄りその背を摩る。
「お、オレ………」
小さなその声は、事の発端である木暮のものでグッと顔を向けると木暮は青い顔をしていて、そして、逃げ出し。
「なっ!木暮!!!あのやろう……!」
俺がここに居ても鬼道みたいに知識があるわけでもない。
木野のように傍で支えられるわけでもない。
なら……
「木暮ー!!!」
今回ばかりは許しちゃおけない
木野に水津を頼むと告げて、逃げた木暮を追って走り出すのだった。