フットボールフロンティア編
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辞める事になった時の為にと夜遅くに皆の練習メニューを書き綴っている内に机の上で寝落ちてしまい、結果風邪を引いて翌日1度起きた時に移動しようとした結果、思っていたよりも重症だったようで床に倒れて、ちょうどヨネさんが2泊3日の旅行に出かけているタイミングだったばかりに起こす人も居らず、そのまま1日経過してしまっていたようだった。
夏未ちゃんにこっぴどく叱られながら、彼女の家の車で病院に送ってもらったのだが、医者曰く2、3日安静にということで昨日は学校を休んだのだが。
「いよいよ地区大会決勝戦!あの帝国とまた戦えるんだ!特訓の成果、見せてやろうぜ!」
おおー!!と皆が電車に乗り意気込んでいるであろう中、私は治りかけと言えど選手達に風邪を移す可能性があるからと夏未ちゃんに彼女の家の車に乗るよう押し込められそちらに座っていた。無論、夏未ちゃんに移す訳にもいけないのでマスクはしている。
みんな盛り上がってるんだろうな、と並走して走る電車を見上げていれば、隣で優雅にジュースを飲んでいた夏未ちゃんがあら、と声を上げた。
「見えてきたわね」
電車とは反対方向の窓を振り返って見れば、広大な敷地にまるで要塞と言わんばかりな建物が建っている。
『帝国学園、』
1番の危険が彼らの身に降ってくる回だ。もし、私のせいで物語が変わって皆に何かがあったら、そう思うとブルりと震えた。
「水津さん?顔色が悪いわ。やっぱり今日も休んだほうが良かったんじゃ」
『ううん、大丈夫。皆の試合、見守りたいからさ』
「そう、そうね。でも無理をしてはダメよ」
ありがとうと夏未ちゃんに微笑んだ。
電車から降りて歩いて帝国学園スタジアムの入口まで来た、皆と合流してスタジアムへと足を踏み込む。
「気をつけろ!バスに細工してきた奴らだ。落とし穴があるかもしれない!壁が迫ってくるかもしれない!」
響木監督が皆の盾になるように手を広げそう言えば、1年生達が壁を押してみたり床をじっと確認したりしている。
「監督が選手をからかうなんて」
「多分監督なりの緊張を解す方法なんだと...」
呆れた様子で夏未ちゃんと秋ちゃんが言うが、多分本人は大真面目なんだよなぁ。影山ならやりかねないと絶対本気で思ってるって。
皆で気をつけながら廊下を進めば、緑の扉の前に雷門中学校様と書かれていた。
「ここが俺らのロッカールームか。開けるぞ」
円堂が1歩足を踏み出し、ドアに近づく前に機械音と共に自動でドアが開き真正面に鬼道が現れた。
「鬼道!?」
「無事に着いたみたいだな」
自動ドアを潜り、鬼道は立ち止まれば、なんだと!?と染岡が凄んだ。
「まるで事故にでもあった方が良かったみたいな言い方じゃねぇか!まさかこの部屋に何か仕掛けたんじゃ!!」
「安心しろ何も無い」
そう言って鬼道は踵を返して歩き出す。
「待て!何やってたのか白状しろ!」
「染岡、鬼道はそんな奴じゃない」
「止めるな円堂」
「勝手に入ってすまなかった」
そう謝って鬼道はスタスタと歩いていく。
「鬼道!試合楽しみにしてるからな!」
廊下を曲がっていく鬼道の後ろ姿に円堂が声をなげかけるが鬼道からの返事はなかった。
「...?音無さん?」
唇を噛んでじっと鬼道の去った方を見つめている春奈ちゃんを不思議に思ったのか秋ちゃんが声をかけている。
『春奈ちゃん、』
そう声をかけて、ぽんと背中を叩く。
『敵陣だもんね。緊張するよね?御手洗行ってくる?』
「えっ、」
彼女自信が隠そうとしているし、秋ちゃんや他の皆の手前鬼道を追っておいでとは言えない。
『気になるなら行っておいで』
小声でそう囁いて、ぽんぽんと優しく背中を押す。
「水津先輩...。はい、行ってきます」
そう言って春奈ちゃんは鬼道が曲がって行った道を追って走っていった。
「音無さん大丈夫かしら?」
『どうだろうね...』
まあぶっちゃけ大丈夫じゃないだろうけど。
「まずは何か仕掛けられてないかチェックしろよ」
春奈ちゃんを心配している私たちの後ろで、そう言って染岡を筆頭にみんながロッカールームに入っていく。
「水津、お前は観客席で待機だ」
『あーはい、分かってます』
ロッカールームなんて狭いとこで皆と居たら移し兼ねないもんね。
「俺は向こうさんに挨拶してくるからお前達、準備しておけよ」
皆に響木監督がそう声をかけて、それから行くぞと私を見た。
どうやら観客席まで送ってくれるようだ。
準備大変だろうけど頑張ってね、と秋ちゃんと夏未に私も声をかけて、それから響木監督と共に廊下を歩き出す。
「改めてきちんと喋べるのは今日が初めてだったな。監督に就任した響木正剛だ」
『はい。水津梅雨です。この度は決勝戦前と言うのに不注意で風邪を引いてしまい大変申し訳ございません』
「全くだ」
『はい...』
「冗談だ」
そう言って響木監督は、カッカッカッと笑った。
『響木監督、1つ聞いてもいいですか?』
「なんだ?」
『なんで、みんなに私に会いに来させたんですか?裏切り者かもしれないのに』
響木監督自身、40年前に同じチームメイトから裏切り者が出ている経験をしているのだから、私の事を警戒してもおかしくないはずなのに。
「お前、うちの店に来てラーメンができるまでの間に時々ノートに何か書いてただろう」
はい?と首を傾げる。確かに書いてたが。
「最初は宿題でもしてるのかと思えば、書いてあるのは筋トレ方のメモで笑ったんだが、今回監督になるに当たって、お前たちの部室でこれまでの記録のファイルをいくつか読ませてもらってコレだったか、と納得した。先日の皆の運動データを元に翌日のトレーニングメニューを考案してたりしていただろう」
『そう、ですね』
「飯の前まで、選手の事を考えてたサッカー馬鹿だからなお前は」
『いや、サッカー馬鹿ではないですよ』
「いや、鬼瓦と時々サッカーの話題でヒートアップしてただろ。どう見てもサッカー馬鹿だよお前さんは」
えー...と不貞腐れていると、響木監督はぽんぽんと頭を撫でて来た。
「お前さんもサッカー部の一員だ。雷門から色々聞いたが、随分と無茶をするようだ。今日は大人しく観客席で座っていろよ」
そう言って観客席入口前で響木監督は立ち止まった。
『ういっす』
じゃあな、そう言って響木監督は来た道を引き返す。
恐らく今から影山に喧嘩売りに行くんだろうなぁ。
ここに居てもしょうがないしと、中に入り1番見やすい位置でも探すか、と観客席をウロウロする。
他のお客さんも入って来ているし、邪魔にならぬよう間をぬって歩いていく。
『この辺なら...』
雷門側のフィールドが、よく見渡せるだろう。自由席だし、ここにするかと腰を下ろす。
試合まではまだ少しかかるかな。
フィールドでは両選手とも準備運動を行っている。
それをじっ、と眺めて居たのだか...いくら待っても事が起きない。
『おかしい...』
記憶が正しければ、ボルトが天上から落ちてきたはずなのだが...。
「水津!」
名前を呼ばれ振り返れば、ユニフォームに着替えた円堂と秋ちゃんが居た。
『どうしたの。もうすぐ試合始まるけど』
「頼みがあるんだ!」
そう言ってガシッと肩を掴まれ、頼み?と首を傾げた。
「鬼道の奴、何かを探してるみたいだったろ!あれ多分帝国に仕掛けられた罠を探してるんだと思うんだ!」
そう言う円堂の横で秋ちゃんもうんうんと頷いている。
「さっき、響木監督と鬼瓦刑事も罠が仕掛けられてるんじゃないかって話をしてて」
『うん』
「それを探すの手伝って欲しいんだ」
分かった、と頷いて客席から立ち上がる。
『円堂と秋ちゃんはアップしに戻りな』
「え、けど...」
『もう試合開始まで時間ないからね。何かあったらすぐ伝えるよ』
「...そうだな。わかった!木野、戻りながら怪しいところがないか注意して歩こうぜ」
「そうね」
じゃあ戻るよと踵を返した円堂と秋ちゃんに、あっ、と声をかける。
『探すのに下ばっか見てたら危ないから気をつけてね』
「おう!じゃあ頼むぜ水津!」
そう言って今度こそ円堂と秋ちゃんは帰っていく。
『さてと、』
まあ、罠は分かっているんだけど、どうしたものか。ボルトが落ちてこない事には鬼道は気づかないだろう。
私のせいでボルトが落ちてこないなら、私が鬼道に気づかせるのが仕事って事だよなぁ。
そう思い、観客席の柵の前に立つ。
フィールド場で難しい顔をして立っている鬼道が気づかないかな、と手を振って見る。
「あっ、水津さんだー!」
私に気がついた宍戸が、いえーい!と手を振ってきた。
いや、宍戸じゃなくて鬼道に手を振ったんだけどな!!!
けど可愛い後輩を蔑ろにするわけにもいかないので、手を振り返す。
というか、鬼道を気づかせるなんてまどろっこしいことしないで、私が上からボルトを叩き落とせばいいのでは!?
『宍戸!ここまでボール蹴りあげれる?』
マスクを顎まで下ろしてから大声で叫べば、宍戸は首を傾げながらもボールを持って柵の真下まで来てくれた。
「蹴りあげればいいんですか?」
『うん』
行きますよ!そう言って宍戸は真っ直ぐに高くボールを蹴ってくれたので柵の外にめいっぱい手を伸ばして、何とかボールをキャッチする。
「ボールがどうかしたんですか?」
『ああ、うんちょっとね』
キャッチしたボールを胸の前で掲げたまま、フィールドの上を見る。
『あの辺かな、』
雷門陣側のフィールドの真上に狙いを定めて、手からボールを離す。ここは超次元の世界だ。きっと運良く届いて当たる筈。
重力に従って足元に落ちるボールを思っきり蹴り飛ばした。
「うわぁ、水津さんどこ狙ってるんですか!!」
宍戸が慌ててボールを追っかけていく。
それと共にボールはドゴッと音を立てて、天井にぶつかって真っ直ぐ下に落ちた。
見つめた天井は一瞬キラリと何かが光り、そのまま勢い良く落ちたボールは緑の大きなアフロの上にぼふんとぶつかった。
「うわぁぁぁ!!?なんっすか!!!」
突然の事にビビって腰を抜かした壁山の身体スレスレに、ボトリボトリと何かが落ちた。
壁山の声に反応した皆がどうした!と駆け寄っていく。これには帝国学園の皆、無論鬼道も気づいたようだ。
壁山の周りに落ちているボルトを染岡が拾い上げて円堂に渡す。
『ごめーん壁山!』
再び大声で叫べば皆の意識が私に向いた。
『宍戸にボール返そうと思ったら上に高く蹴りすぎちゃった』
ごめんね、と両手を合わせて詫びのポーズをとる。その横目で鬼道を見れば、彼は上?と天井を見つめていた。
「大丈夫っス!」
「先輩意外とノーコンなんですね」
『うるさいぞ宍戸!』
2人とそんなやり取りを交わす後ろで、円堂が落ちてきたボルトを集めて響木監督に渡すのが見て取れた。監督に任せればあとは鬼瓦刑事の部下に回してくれるはずだ。
『試合、頑張ってね!こっから応援してるから!』
「はい!」
「はいっス!」
いい返事をくれた2人にバイバイと手を振って客席に戻った。
『さてと、』
あとは祈るだけ
鬼道が気づいて、皆が無事でありますように。