世界への挑戦編①
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朝から監督に何か言付けられ練習にいなかった水津が吹雪を連れて戻ってきたのには驚いた。
思っていた以上に早い代表復帰に皆が喜ぶ中、吹雪が戻ってきたということは誰かが落とされるって事だと不動が釘を刺す。
事実、その通り監督は栗松を代表から落とすと告げた。
ふと、監督の後ろにいる水津を見ればバツの悪そうな顔をしていた。
まあ、監督から事前に聞いてたのもあるだろうが、それ以前に知っていただろうしな。
監督みたいに淡々と割り切れないのが水津らしい。
俺の横で壁山や立向居、音無がアルゼンチン戦での活躍や魔王・ザ・バンドへの協力など栗松の功績を必死で監督にアピールしている。
「栗松、帰国の準備をしろ」
それだけ言って監督は背を向け歩き出す。
「「監督!」」
「栗松、お前からも頼むッス!」
「やめろ!」
気づけば、でかい声でそう叫んでいた。
えっ、と栗松と壁山がこちらを向く。
「栗松に必要なのは同情じゃねぇ。とっとと日本に帰る事だ」
冷たくそういえば、2人はえっとまたも声を上げた。
俺は代表選考に落ちた時のことを思い出していた。
あの時水津は俺らにこう言った。
『キミらに落ちてクヨクヨする時間はないよ?入れ替えチャンスを狙って練習あるのみよ』と。
今の栗松がそうだ。監督に抗議する暇があるのなら一刻も早く戻って練習するべきだ。
「染岡……」
「さあ、練習始めようぜ!」
円堂が何か言いたげだったが、俺は声を張り上げてそう言ってグランドへ走り出すのだった。
夕方の便で帰国する栗松のことを全員で見送った。
そこで、不動が要らねぇ事を言う。
「水津チャンさあ、知ってたよなぁ」
『………なにを?』
「栗松の足の怪我」
不動の言葉に水津は少し目を逸らしてから、うん、と頷いた。
「えっ、どういうことだ?良くなったから練習許可が降りたんじゃ……」
アルゼンチン戦で怪我をした風丸が驚いた顔をしていた。
俺もあの試合で結構ぶっ飛ばされたから、と状態を伝えろと水津に呼び出された時に風丸も栗松もいた。
俺は擦り傷くらいのもんだったし、風丸も栗松も軽い捻挫だったはずだ。
『虚偽報告……。風丸みたいに素直に状態を教えてくれたわけじゃないってこと』
まだ、痛みがあるのに痛くない良くなったと栗松が言い張ったわけか。
「けど、それが嘘な事くらい知ってんだろ?アンタなら」
不動が鋭くそこを突けば、水津は自嘲気味に笑って、そうだね、と呟いた。
『トレーナーとして本当は止めるべきだった……』
水津は少し目を瞑った後、ゆっくりと開いて飛行機の飛んでった空を見つめた。
「止めなかったのはどっちにしろ代表を外されるって分かってたからだろ。気色悪い気遣い二度とすんなよ」
そう言って、不動がその場を離れて行く。
「おい、不動!」
鬼道が咎めるように呼ぶが、いいよ、と水津が止めた。
『仕事を全うしなかった私が悪い』
そう言う水津に誰も何も声をかけることが出来なかった。
翌日、イギリス代表ナイツオブクィーンとイタリア代表オルフェウスの試合があり、その中継を観戦した後、練習が始まったのだが……。
影山の作戦で動くイタリア代表を見たからか、アルゼンチン戦の起こったあの日、影山のチームと戦いに行った4人……いや、水津も入れて5人の様子が明らかにおかしかった。
円堂は至近距離でのシュートを受けるめちゃくちゃな練習を吹雪に頼むし、不動と佐久間も妙に気合いが入っているし、鬼道は珍しくラフプレーが多い。
水津はベンチに座っているが、心ここに在らずといった様子で練習を見ているわけではない。
そんなわけで監督に練習中止を言い渡されてしまった。
「キャプテンたち、ちょっと様子おかしかったもんね」
ボールを片付けながら、吹雪が寄ってきてそう言った。
「ああ。あいつらは特に影山に思うところあるだろうからな」
円堂に取ってはじいさんを殺された仇だし、鬼道や佐久間、不動に取っては師だし、水津は……それらを全部知ってるから、ああなってんのかねぇ。
まだベンチに座ったままの水津は、携帯電話が鳴っているのに気づいて居ないようで、冬花にトントンと肩を叩かれて初めて気がついたようで慌てて電話に出ている。
「水津さんも様子変だね」
「ああ。なんつーか、最近元気ねぇんだよな」
「そっかぁ。じゃあさ、せっかく練習中止で時間が出来たわけだし気晴らしにどっか連れってあげれば?」
「どっかって……」
「観光地でもあるんだし、いろいろあるでしょ?デートスポット」
さらり、とそう言った吹雪の方に思わず振り返る。
「なっ!デ、デートって……!」
「ええ!?デート!!?」
少し離れた所から驚いた声が聞こえ、今の話が聞かれたのかと声の方を向けば、電話を終えた水津に驚いた顔をして詰め寄る音無の姿があった。
『うん。だからちょっと出かけてくるついでに買い出しも行ってくるよ』
「ええ!?ダメですよ!買い出しなら代わりに私が行きますから」
珍しく冬花も大きな声を出してそう言っている。
『え、でも……』
「任せてください」
女子2人の圧に負けている水津の様子を見たあと、処理の追いついていない頭で考える。
「つまり……」
「水津さん、今から誰かとデートするってこと?」
先に答えを出した吹雪を嘘だろ、と見れば、吹雪は顎で女子たちの方を差した。
「ほらほら、デートなら可愛い格好しないと!」
『いやいや、デートとは言ったけど多分いつもの軽口……』
グイグイと音無に背中を押されて水津は宿舎の方へと連れていかれてしまった。
先を越される
いや、誰だよ相手!