フットボールフロンティア編
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土門が晴れて雷門中サッカー部の仲間入りをした次の日、梅雨は学校に現れなかった。
夏未が教員に連絡が来てないかと尋ねれば首を振られ、彼女自身も梅雨に電話もメールもするが返事はなかった。
「ええっ、水津さん、学校来てないでやんすか!?」
「やっぱりスパイだんたんじゃ」
放課後の部室では、皆がそのように声を上げる中、いや、と円堂が首を振った。
「決めつけるのはまだ早いだろ」
「けど、話を聞くって言ってるのに学校に来ないなんてスパイだったって言うようなもんじゃないか?」
半田がそう言えば、円堂は、う...と言葉を詰まらせた。
「土門、水津は帝国のスパイではないんだよな」
豪炎寺の問に土門は、ああ、と頷いた。
「帝国のスパイじゃないはず」
「お前が知らなだけじゃなくてか?」
染岡がそう聞けば、うーん、と土門は悩むような仕草をした。
「違う、と思う。そもそも俺、水津に二重スパイしないかって持ちかけられたから」
「二重スパイ!?」
「土門くん、その話詳しく聞かせてちょうだい」
夏未がそう言えば、土門は驚いたように彼女を見た。
「聞いてないのか?水津、俺にはアンタのスパイだって言ってたぜ」
「えっ?」
「その感じは知らなかったんだな。水津からは、総帥からどんな命令が来たかだけ教えろって言われてて。俺が雷門のデータを送らなきゃいけなくなった時に、二重スパイなのにそのままの情報を流していいとか言うしおかしいとは思ったんだけど」
「つまり、水津は土門が帝国のスパイなのも知っていたし、データを送るのも黙って見てたと。で、雷門は水津からそんな話聞いてないんだろ?」
半田が聞けば、ええ、と夏未は困惑した様子で頷いた。
「なら、帝国以外の他校のスパイって事?」
「そういえば水津も転校生だったよね?」
どこ中とか知らないの?と松野が聞けば夏未は首を振った。
「それが、分からないのよ」
えっ?どういう事だと一同首を捻る。
「ああ、それ、俺も調べたけど分からなかった」
「雷門は理事長の娘だろ?理事長に聞けば分かるんじゃないか?」
「もちろん聞いたわよ。昨日も、彼女が転校してきた時も。けど、彼女には複雑な家庭事情があると言って、お父様は教えてくれなかったわ。分かったのは彼女の親が父と知り合いで頼まれて雷門に編入したって事だけ」
「素性が分からないなんてますます怪しいですよ!」
宍戸がそう言えば、そうだよなぁと1部の部員が頷く。
「ひとまず、水津さんの件は置いてもいいんじゃないですか?」
「何言ってんだ目金!」
一同が彼を見れば、目金は紙の束を持ってそれに目を通していた。
「彼女の事より先に解決しないといけない問題があるようですよ。このフットボールフロンティア規約書によれば、監督不在のチームは出場認めないとあります」
ええっ、と一同から驚きの声が上がり、円堂は夏未を見た。
「お前知ってたのかよ」
夏未は顔を赤くして、知ってたわよ!と嘯いた。
「水津さんの件はもう少し私が調べます。だから貴方達は監督を探しなさい。これは理事長の言葉と思ってもらって結構です」
ええー!?と、皆の声が部室内に響くのだった。
それから円堂達は、帝国と戦えるサッカーに詳しい人を監督にしなければ、と頭を悩ませて、そこで豪炎寺が、雷雷軒の店主であるおじさんが秘伝書のことを知っていたと、鶴の一声をあげ、それだ!とサッカー部一同で交渉へ向かったのだか...仕事の邪魔だ、と追い返されてしまった。
仕方なく帰って河川敷で練習を始めるものの、監督がいなければ決勝戦に出られないという事態にやる気をなくした者もいて、上手く行っておらず結局その日はダラダラと練習を終えた。
翌日、円堂がPK勝負で交渉し、何とか雷雷軒の店主、響木正剛を監督として向かい入れることができたのだが...。
「なるほどなぁ」
部員たちから、今回の経緯に至った騒動の内容を聞いて響木は呟いた。
「それで、あの青髪の嬢ちゃんが居ないわけか」
そう言って響木は自分の前に集まっている子供たちの顔を見た。
「で?お前たちは全員、あの娘が他校のスパイだと思っているのか?」
「それは...」
「冬海も言ってたし」
「土門さんからの証言もありますし」
「帝国のキャプテンに会ってたんでしょ?」
部員たちがザワザワと騒めきだす中、円堂が1歩前に出た。
「俺は水津を信じてます!」
「お前まだそんなこと言って...。アイツもう2日も無断欠席してるんだろ?スパイだったから元の学校にでも帰ったんじゃないか」
風丸がそう言えば、円堂は反論する言葉が見つからないのか、ぐぅ、と唸った。
その横で、はい!と木野が手を挙げた。
「私も水津さんはスパイじゃないと思う。ううん、例えスパイだったとしても、皆が怪我した時誰よりも早く駆けつけて治療をする、そんな人が悪い人だなんて私は思えない!」
それは...と皆それぞれ思う節があるのか、騒めきが静まっていく。
「確かに、アイツいつも俺らが怪我しないか気にしてたよな」
ラフプレーが多く梅雨によく注意され、実際野生中戦で怪我をした染岡がそう言えば、同じく御影専農戦で怪我をして、更にはイナズマ落とし練習時に怒られた事のある豪炎寺が頷く。
「そもそも水津は俺らが尾刈斗中戦の時に無理に勧誘するまでは、サッカー部に入る気なかったんじゃなかったか?」
「...そう言えば、ずっと円堂勧誘断られてたよな」
「そもそも他校のスパイなら、最初に勧誘された時点でラッキーだと思い入りませんかね?」
目金がそう言えば、皆、確かに...と黙ってしまった。
「なあ、お前なら水津の家知ってるんじゃないか?」
円堂はそう言って夏未を見つめた。
「えっ、ええ...知ってるけど」
「教えてくれ!直接会って聞いてくる!」
「なるほど、円堂らしい。俺も行こう」
そう言って豪炎寺が立ち上がる。
「私も行くわ!夏未さん教えて?」
「俺も行くッス!水津さん俺がイナズマ落としにビビってた時、背中を押してくれたんッス!俺はマネージャーの言う通り悪い人じゃないと思うッス!」
普段ビビりで、何かに立ち向かうことを恐れる壁山が自ら立ち上がり、同じ1年生達は顔を見合わせた。
「水津先輩、俺たちにめっちゃ優しいでヤンス」
「よく練習見てくれるよね」
「うん。しかもめっちゃ奢ってくれるし」
栗松、少林寺、宍戸はそう話し合って互いに頷いた。
「俺達も行きます!」
その様子を見て響木は、なるほどな、と呟いた。
「なら、全員で行って解決して来い。モヤモヤしたままでは練習に身も入らんだろう」
新監督命令
そう言われ雷門イレブンは全員、木枯らし荘に向かうのだった。