世界への挑戦編
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「水津?大丈夫か?」
ハーフタイムに入りベンチに戻ってきた円堂が心配そうにこちらの顔を覗き込んだ。
『え、あ……大丈夫』
心配されてどうする。私は心配する側だろう。
『それより、円堂お腹は?』
皇帝ペンギン1号を受けた時はかなり手が腫れて痺れていたはず。
『皇帝ペンギン1号より威力があがっているのなら……』
ゾッとして身震いして円堂を見るが彼は意外と元気そうだ。
「そんなに心配しなくても大丈夫だぜ、水津。俺たちだってあれから強くなってるんだからな!」
『そう、ね……』
特に円堂は強化人間達のやばいシュートいっぱい食らってきてるもんね……。
「……?水津?」
『ああ、うん。とりあえず後半始まるまではしっかり休んで』
不思議そうな顔をする円堂をとりあえずベンチに座らせる。
自分の失敗よりまず子ども達のケアだ。
チームKたちは帝国学園や真・帝国学園の時のようなラフプレーがなかったから怪我を負わされた子は居ないようだ。
『……って、そう!不動!!』
「うおっ、突然なんだよ!」
水分補給をしていた不動は突然怒鳴られた事でボトルの中身を零しかけて慌てている。
『煽られてラフプレーするのやめなさい。後ろからのスライディングがどれだけ危険か分かっているでしょう。そういう所が二流だって言われるのよ』
「なっ、」
『自分が1番分かってるでしょう?なにせ、チームKはラフプレーなんかせず、こちらを打ち負かしに来ている』
チッと大きく舌打ちした後、不動は何かに引っかかったように、あ?とこちらを見た。
「……随分と変な言い回ししやがるな」
そうね。普通なら実力で、とか正々堂々とかいう所だろうけど、彼らはそうじゃないし。
『神のアクアだの、エイリア石だの使ってた影山が今更正攻法になるとおもう?』
「ハッ、そういうことかよ」
『だからこそ、自分が一流のプレイヤーだと影山に見せつけたいんならラフプレーはやめなさい』
「ちっ、わーったよ」
『よろしい』
ぽん、と頭に手を置いたらヤメロ!と叫んで逃げられた。
気難しい子が多いね。影山チルドレンは……。
『次は………鬼道』
心ここに在らずといった状態の鬼道の元に向かう。
『影山の呪縛から逃れる方法が知りたい?』
そう言えば、彼はゆっくりと顔を向けた。
「……ああ。俺は、いったいどうしたら……お前は知っているんだろう」
縋るように見てきた彼に大きなため息を吐く。
今までの鬼道なら自力で解決しようとしただろうに。
私に頼らなきゃダメなくらいか……。
『知ってるよ。キミは……』
ゴーグルの奥の瞳が一筋の希望を描いていた。
『どう足掻いても影山から逃れることはできない』
鬼道の瞳から光が消えるのは一瞬だった。
「なぜ、だ……」
『キミが影山零治に育て上げられた事は変えることのできない真実だからだよ』
「変えることができない………。はは、そう、だな………俺は……」
とぼとぼと鬼道は歩いてフィールドのサイドラインの前で立ち止まり、向かいのベンチに座る影山を見た。
「おい、水津!」
ガシッと後ろから強い力で肩を掴まれる。
振り返れば怒った顔の佐久間がいた。
なんてことを言うんだって顔だ。
『ああ、そうだ。佐久間にも言いたいことがあったんだよ』
「なんだ」
『そろそろ鬼道を尊敬するのやめたら?』
「なっ、チームメイトをリスペクトするのは当然の事だろう!」
何を言ってるんだコイツは、と言う顔をして佐久間は言い返してきた。
『そうね。尊敬できる仲間がいるって素晴らしい事ね。でも、不動の事をあれだけ嫌っといて良く綺麗事が言えるわね』
「それは勘違いしていたから……!今はもうアイツがそこまで悪いヤツじゃないって知っている!」
『うん、そうだね。今までと違ってちゃんと話を聞いて素直に受け取ったのはいい事だね。これでやっと不動とは対等になれたわけだ。じゃあ、鬼道は?』
そう聞けば佐久間は、え?と固まった。
「なに、を……俺たちは対等だろう」
『鬼道はそう思ってるだろうね。でも、佐久間。気づいてないんだろうけど、キミが対等じゃなくしてるんだよ』
「そんなことはない、俺は……!」
『さっき私を咎めたのだって、せっかく鬼道が立ち直り始めたのに…!って事でしょう?彼のゲームメイクだったら勝てると思ってるから』
「そうだ。俺は鬼道を信じているからな。信じることが悪いことだっていうのか!」
『悪くないね、調子のいい時の鬼道なら』
どういうことだよ、と佐久間は黙って聞く。
『鬼道ならやってくれる!そう思いたいのも分かるけど、人間ダメな時は何やったってダメよ。どうして貴方が代わりにやろうとしないの?』
「それは……」
『自分じゃ鬼道程のことは出来ないと思ってるの?私は、佐久間のことそんなに能力のない人間だとは思ってないけど?』
「俺は……」
『いい加減、鬼道に尊敬や羨望し期待してすがるのはやめなさい。不動は対等……いや、いつだって鬼道には負けまいとした。だから彼の言葉で鬼道は1度目を覚ましたでしょう?』
憧れとは理解から最も遠い感情、なんて言葉もあるくらいだ。
結局理解できたからこそ、不動はあそこで鬼道を煽り立ち上がらせた。
「キミはなかなか厳しいね」
どうどう、と言うようにフィディオが割り込んできた。
「オレにも憧れている人がいるからわかるよ」
そう言ってフィディオを佐久間の肩を叩いた。
「オレはあの人の隣に自信もって立ちたいと思っている」
フィディオは佐久間の肩から手を離して、自身の腕のキャプテンマークの辺りを握りしめた。
「すぐには難しくてもさ、1歩ずつなら近づけるよ」
そう言って今度は佐久間へと手を差し伸べるのだった。
時には厳しく
まあ、これだけ言えば後は自分で考えるでしょうよ。