世界への挑戦編
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フィールドの中心で立ち止まって動かなくなってしまった鬼道に佐久間が何度も声をかけるが反応がない。
「しっかりしろ鬼道!」
そう叫んで佐久間は持っていたボールを鬼道へと蹴り飛ばした。
そのボールは鬼道の胸にぶつかり、彼はハッと目が覚めたように佐久間の方を向いた。
「お前がゲームメイクしなければ、奴らに勝てないぞ!!」
「あ、ああ…」
鈍く返事を返した鬼道はボールをドリブルして進み出す。その背中をデモーニオが余裕そうな顔をして見つめていた。
「キドーはいったいどうしたんだ?」
ブラージが心配して見つめる鬼道は、フェイントでベルディオを抜いた後、ゆるゆるとドリブルを止めて先程と同じように足を止めてしまっていた。
『呪いにかけられてんのさ』
呪い?とブラージは不思議そうな顔をしている。
まあ、これは私が何かしなくても普通に彼が進めてくれそう、と中央から猛スピードで追い上げてきた彼を見る。
「いつまでも昔の事を引きずってんじゃねぇ!!ウジウジとうぜぇんだよ!!」
いつも飄々としている彼が、いつになく怒ったような必死な顔して鬼道に追いついた。
「俺たちは人形でも作品でもねぇだろぉ!!!」
相手チームの選手にやってたらイエローカード切られてただろう、という勢いで真後ろから不動はスライディングを仕掛け、鬼道を転ばし足元のボールを奪った。
「ふ、不動……!」
「あいつ……!」
『随分と危険な事を……』
後ろからのスライディングタックルは相手を怪我させる悪質な行為だからね。
あの鬼道や円堂でさえ驚いてるのは当然だ。
「本性を現したな不動!」
キリリと眉を吊り上げ睨みつけてきた佐久間に不動は、あ?と聞き返す。
「お前が影山に寝返る事は分かっていた!」
そう叫ぶ佐久間を見て頭を抱える。
昨日、円堂が不動を信じるって言ってたの明らかに納得してなかったもんなぁ…。
「勘違いしてんじゃねーよ!俺が影山に近付こうとしたのは仲間になるためじゃねぇ!!」
「ん!?」
佐久間は随分と驚いた様子で、黙って続きの話を聞いた。
「俺は影山の奴に直接見せつけてやりたかったのさ。俺はもう、お前の力なんざ必要としてないってなァ!!」
ギッと不動は相手ベンチに佇む影山を睨みつけた。
「いつまでも鬼道、鬼道って見苦しいぜ影山!」
「不動……」
地に伏せたままの鬼道は、その言葉に何か動かされたのか顔を上げた。
先程まで不動を睨んでいた佐久間も、自分が思っていた反応と違って困惑している様子だった。
「俺ひとりで奴の企みを突き止めようとしてたのによぉ。水津は口を割らねぇし、挙句にお前ら全員連れてくとか言い出すし……」
ったく……、と不動は吐き捨ててこちらを睨んできた。
不動はコレに限らず今までもそうだけど、使えるもんは使うで、私から情報得ようとしてるもんなぁ。
まあ、イライラしますわな。
「奴が日本代表を破壊するってんなら俺は……、サッカーで影山を潰す!」
そう力強く宣言した後、不動は地に伏す鬼道を見下ろし笑った。
「お前はどうするんだ、鬼道クン。影山の作品に戻るか?それとも……」
「俺は、人形でも……作品でもない!」
そう叫んで、鬼道は立ち上がる。
そして、先程不動に取られたボールを自分の足で取り返した。
「力を貸してくれ!不動、佐久間!俺たちの手で影山を倒すんだ!!」
「鬼道!」
「……お前が俺を手伝うんだよ」
佐久間は嬉しそうに名を呼び、不動はやれやれと言った様子で呟いて、2人は先を走る鬼道を追った。
「鬼道、不動、佐久間……」
3人の連携でチームKのディフェンスを突破していく。
「みんな、いっけぇー!!!」
円堂が叫びフィディオも3人に追いついて左サイドから上がっていく。
鬼道が蹴りあげ、マークの付いていない佐久間側へボールが飛んでいく。
「止める!」
すかさずチームKの小柄なDFネッロが佐久間へ駆け寄っていくのを見て、不動が馬鹿が!と笑った。
「こっちだ!」
カーブがかけられていたボールは佐久間の前には到着せず、不動の足元へ落ちた。
不動はそのボールを間を置くことなくリフティングで持ち上げ、左サイドへとセンタリングを上げた。
そのボールへとフィディオが駆け上がり飛びついた。
「決める!」
でりゃああ、と彼がオーバーヘッドキックで蹴り飛ばしたシュートはチームKゴールへ飛んでいく。
チームKのGKインディゴはニヤリと笑った後、軽いジャンプで飛んできたボールの高さに合わせ、両手でがっしりとキャッチしてみせた。
「なんなんだ、コイツらは……これ程の実力のプレイヤーがイタリアの何処に隠れていたんだ……」
フィディオは驚いたように、取られたボールを見つめている。
日本と同じように、オルフェウスもイタリアの強いプレイヤー達が集められたはずで、そのメンバーを決めるために試合があったりしただろうに、誰一人としてここまでの実力のチームKのメンバーを見たことがない、というのは不思議な事だろう。
インディゴからボールがデモーニオの足元へ飛ばされる。
「お前らみたいな二流品が、総帥の作品だっただと?悪い冗談だ!」
嘲笑うようにそう言ってデモーニオは不動の横を通り過ぎて行く。
「なにぃ!?」
地雷を踏まれた不動は怒って、反則スレスレの後ろからのスライディングを仕掛けた。
だが、それはぴょんと軽い身のこなしで避けられてしまう。
「みんな、戻れ!」
速攻でカウンターを仕掛けに行くチームKに慌ててフィディオが叫ぶ。
「俺たちチームKこそ総帥の理想のチーム!」
ゴール前にたどり着いたデモーニオは足の裏でボールを止める。
「そしてこれが、究極のシュートだ!」
そう叫んだデモーニオは右の親指と人差し指で丸を作って天高く掲げた。
そして、それを口元に持って行き、ぴゅいと指笛を吹いた。
その音に呼び寄せられて、地面からボコボコとペンギン達が現れていく。
「あれは……!」
空を飛んでいく5匹のペンギンに見覚えのあるであろう鬼道、佐久間、不動は足を止めてしまう。
『……ッ』
赤い瞳のペンギン達が、高くあげたデモーニオの右脚に集まって嘴を突き立てる。
私にとっても苦い技を思い出させる構図。
「皇帝ペンギンX!!」
デモーニオがそう叫んでボールをシュートすれば、足を振り下ろしたと共に離れたペンギン達が今度はボールに突き刺さって、シュートの威力を上げ飛んでくる。
「いかりのてっ、速いッ!!」
拳を振り上げ飛び上がったところで、シュートが円堂の元に到着した。
本来ならボールに拳を叩きつけて止める技だ。振りかぶりの間はあまりにも無防備だった。
「円堂!!」
『円堂!!』
ボールは円堂の腹にぶつかり、そのままの勢いでゴールネットに突き刺さった。
チームKの先制点。そして、どう見ても見覚えのある皇帝ペンギン……1号の姿。
倒れた円堂にフィディオが駆け寄る中、帝国に関わる3人は青い顔してデモーニオを見つめている。
「ふっ、打つだけで消耗する未完成な技と一緒にするな」
不敵に笑うデモーニオに3人は信じられなさそうな顔をしていた。
「究極のペンギン。それが、皇帝ペンギンX!そして俺が究極だ!!」
「大丈夫か?顔色がわるいぞ?」
笑うデモーニオを見ていれば、ブラージがこちらを見て心配そうにしていた。
『あ、ああ、うん……。あのシュートはちょっと、トラウマものでね……。いや、彼の言う通り、改良されてるんだけど……』
そう、そういえば彼らは被験者なんだった。
ねえ、確か、ゲーム版って………。また、間違えた……?
過ちを繰り返す
そうだよとでも言うように、ピッピッピーと前半終了のホイッスルが鳴るのだった。