世界への挑戦編
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コイントスの結果、チームKのキックオフで試合がスタートした。
「アンタはジャパンのマネージャーか?」
ベンチに座って始められたイタリア代表決定戦を見始めた途端だった。
横から声を掛けられて顔を上げれば、赤い長袖のユニフォームに頭には紫のターバンを巻いた大柄の男が立っていた。そして、彼の肩から腕にかけてアームスリングが付けられていた。
『いえ、私はトレーナーよ。貴方は確か、オルフェウスのキーパーの……』
「ジジ・ブラージだ。ジャパンのみんなが協力してくれるって話をフィディオたちから聞いた。よろしく」
そう言ってブラージはギプスの巻かれていない右手を差し出して来た。
『水津梅雨よ』
こちらこそよろしく、とその手を握り返して隣に座ることを勧めれば、彼は一瞬、後ろを気にしたように見たあと静かにそこに腰を下ろした。
「この試合でお前には消えてもらう!」
デモーニオの声にフィールドへ視線を戻せば、彼は真正面から鬼道に突撃しに行った。
「真イリュージョンボール!」
鬼道似た姿の彼は鬼道と同じ技であっさりと鬼道を抜き去ってしまう。
そのまま猛スピードで駆け上がるデモーニオにベントが立ち塞がる。
「行かせるかよ!」
ブロックしに来たベントをデモーニオは小さく鼻で笑った。
そして、ヒールリフトでボールを背面から大きく跳ねさせて弧を描いたボールがベントの背後に落ちる寸前に回り込んで拾って走る。
『……鬼道が良くやるやつだね』
フリースタイルフットボールでなら良く使われる技だが、走りながら行われるうえに相手がいる試合でやるのって結構難しいんだよね。
「ビオレテ、上がれ!ビアンコは右サイドだ!」
そしてデモーニオはボールを運びながらも司令塔として次々と指示を出す。
ヘアバンドを巻いた銀の長髪のイケメンと若草いろの髪をソフトリーゼントのようにした長身の男子がデモーニオの後ろを三角になるような陣形でついて走る。
「これは……!」
佐久間が声を上げた。これは彼が最もよく知る布陣だろう。
「ジャパンのメンバーはさっきから何を驚いているんだ?」
『フィディオたちから聞いた?あのミスターKってのが鬼道や佐久間のいたミドルスクールでの監督だったって』
そう言えばブラージはああ、と頷いた。
『チームKは鬼道達の帝国学園と全く同じ動きをしてるの』
「全く同じ……?それは監督が一緒なら同じ戦法になるのは有り得るのではないか」
『うん、私もそれはそうだと思うんだけど、見た目まで偽られたとあっちゃねぇ……。全く無いことでは無いと言うことが彼らの頭からは抜け落ちてるんだろうな……』
だから彼らは余計に恐怖する。影山という存在に。
「これ以上進ませるな!マルコ!ダンテ!ディフェンスラインを下げるんだ!」
「遅い!」
フィディオの指示にそう叫んだデモーニオは、瞬時にダンデを抜き去った。
それでもすぐさまオルフェウスのDFであるオットリーノとアントンが最終ラインを固める。
だが、デモーニオはボールを左サイドのビオレテに流した。
「クソッ、ディフェンスラインがバラバラだ!」
ブラージが悔しそうに拳を握る。
MFがほぼイナズマジャパンになってしまっているからいつもと連携が違ってしまうのも無理は無い。
もしブラージが普段後ろから状況を見て指示を出すタイプのキーパーなら尚且つ悔しいだろうな。
でもまあ、それならうちのキャプテンもそのタイプのキーパーよ。
「鬼道は影山の戦術を知ってる!中盤を──」
円堂は両手を顔の前に持ってきてメガホンのようにして大声で叫ぶ。
「……そうか!わかった!」
頼む鬼道!とフィディオが叫べは、鬼道は既に走り出してビオレテからボールをパスされたデモーニオを追っていた。
「ロッソ!逆サイドへ!ベルディオは右だ!」
不敵に笑ったデモーニオが、褐色肌の鼻が隠れるように前髪のセンターだけ伸ばした赤目の少年と、黄緑の髪を高い位置で結んで、ひと房だけ斜めに輪のように掛けた少年に指示を出す。
「アンジェロ!逆から来るぞ!アントン!右サイドだ!」
鬼道も負けず劣らずの速さでオルフェウスの2人に指示を飛ばした。
「佐久間、ロッソにつけ!」
「わかった!」
鬼道から指示を受けた佐久間は険しい顔でロッソに迫っていく。
『……、これじゃダメね』
「ダメ?ディフェンスが機能し始めたと思うが……」
『佐久間は鬼道を尊敬し過ぎなのよ』
その結果、拗らせたのが真・帝国学園の事件だし。
『それに鬼道も試合前に佐久間に何か言われてたせいかあの子の事を使わないし……』
フィールドに目を戻せば、ロッソを追いかけていた佐久間が不意に彼から離れた。
その瞬間、デモーニオはボールをベルディオ側にパスした。
「もらった!」
そこへパスをするだろうと読んだ佐久間がベルディオの前に回り込んだ。
だがしかし、ボールは走る彼らの少し後ろに落ちた。
「なにっ!?」
コロコロと転がったボールはおめめキラキラでピンク髪の可愛い少年ロゼオに渡った。
「まさかこいつも囮だったのか!」
彼らの知る帝国学園の、鬼道の動きならきっと佐久間の呼んだベルディオへのパスが正解だったのだろうな。
『相手は彼らの切り捨てた教育の先だからね』
勉強と同じだ。大半の人間は習ってないことは分からない。
まあただ、今までの知識とか経験で予測はできるよね。諦めなければ。
『…………ふむ』
鬼道の思考は停止してしまったのか、次の指示が飛ばない。
その隙にデモーニオはどんどんディフェンスを突破していき、ゴールの前に立ちはだかった。
「はあああああ!」
デモーニオがシュートを打つ。高い打点に上がったボールを円堂はジャンプして手を伸ばし、何とかボールをキャッチし、地面に転がった。
「うおおお!やるなアイツ!」
感極まったのかブラージが立ち上がる。
『まあね、うちのキャプテンですから』
へへっと喜んでから、円堂がキャッチしたボールを蹴り飛ばした先を見る。
鬼道と並んでいた佐久間がトラップし、そこからドリブルで駆け上がる。
鬼道もついてくるだろうと、後ろを振り返った佐久間は思わず足を止めた。
佐久間の視線の先にはふらふらと、影山の方を虚ろな様子で見て歩く鬼道の姿だった。
呪縛
呪いを解く鍵は……と、ファイアートルネード治療法を思い出したのは胸に閉まっておこう。