オリオンの刻印
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約束通り入院した野坂のお見舞いを買いに私と西蔭はスーパーマーケットに来ていた。
西蔭にカートをついてもらって青果コーナーで果物を見てまわる。
「こちらにしましょう」
そう言って、西蔭はスイカをひと玉手に取った。
『いや、いくら野坂がスイカ好きでも、病院だよ?ひと玉は切るの大変だし保存も大変だからカットフルーツにしようよ』
そう言って私は既に1口大にカットされパックに入れられたスイカを指さす。
『今は果物カット用のペティナイフの持ち込みも禁止にしてる病院だって多いし』
「大丈夫です。病院の方に事前に確認し素手でなら割ってもいい許可をいただきました」
『うん?』
素手で!?スイカを!?
いやまあ、超次元キーパーだし割れるか?割れるか……西蔭ゴリラだもんな。
てか、いいんだ病院……。絶対西蔭の熱量に根負けしてOKだしたでしょ病院側。
『やっぱりカットフルーツにしない?』
「いえ、それでは足りませんよ。野坂さんですから」
そう言って、西蔭はひと玉で飽きたらず、もうひと玉追加でカートにスイカを乗せた。
「それはダメだ」
「なんで?見舞いの果物って言えばバナナだろ」
聞いた事のある声が聞こえて前へ顔を向ければ、バナナを手に取った私服姿の稲森明日人と、その横でカゴを腕に掛けた同じく私服姿の灰崎凌兵がいた。
「ばーか。アイツがバナナ食ってるところ想像してみろ」
「……。なんか違うような……」
「だろ?アイツが食うのはせいぜいプリン」
そう言って灰崎はカゴに入れていたプリンを取り出して持ち上げて見せた。
「なんだよそれ」
『ふふっ』
2人のやり取りが面白くて思わず笑い声を零せば、ん?と稲森がこちらを見た。
「あ!水津さん、西蔭!」
『こんにちは。仲良いわね』
「こんにちは!」
「お前らも野坂の見舞いか?」
仲良いの部分をスルーした灰崎がそう聞いてきたので、うん、と頷く。
というか、もって事は彼らも野坂のお見舞いの為にここに来たのか。
「まさか……、それは野坂にか?」
西蔭の押しているカートの中身を見て、灰崎が驚いた顔をしている。
そりゃあ2玉もスイカ乗ってたら驚くよね。
「野坂さんはスイカに目がなくてな」
西蔭の言葉に2人は、ええっ!?と大きな声を上げるのだった。
「失礼しまーす」
そう声を掛けて稲森が扉を開け、病室に入る。
「ああ!」
雑誌を見ていた顔を上げた野坂はずんずんと中に入っていく稲森と灰崎を見て嬉しそうな顔をした。
「やあ、野坂」
「よぉ」
「2人とも来てくれたんだ!」
王帝月ノ宮中以外の人が見舞いに来てくれるのは初だろう。
私はそっと扉を閉めて、2人のように野坂のいるベッドに近寄った。
西蔭はというと、2つのスイカをもって給湯室に向かった。
「なんか凄い部屋だね」
稲森はキョロキョロと病院の中を見渡す。
洗面所とトイレの付いている個室なのだが、それだけでなく大部屋位の広さがあり、来客用のテーブルとソファまである始末だ。
月光エレクトロニクスからの慰謝料として治療費も入院費も負担して貰えることになったのでやりたい放題だ。
「わざわざ来てくれてありがとう」
「うん、もうすぐアメリカに立つって聞いて」
「そうなんだよ。今は向こうの手術のための検査中さ」
「で?具合はどうなんだ」
灰崎は被っていたキャスケット外して、ソファの肘置きに凭れかかった。
「心配はいらない。しっかりと治して戻ってくるから、待ってて」
「うん。また皆で凄いサッカーやりたいしな!」
そう言って稲森は太陽見たいな笑顔でニカッと笑って見せた。
「そうだね。それより、いよいよ明日だろ?」
「日本代表イナズマジャパンの発表!」
『次は世界だからね』
「楽しみだね」
野坂がそう言えば、灰崎はフンッと鼻で笑った。
「どうでもいいさ」
それを聞いた稲森の顔がにやぁと笑って揶揄うものに変わった。
「へぇ、代表候補としての招待チケットをもらって喜んでた癖に」
「はあ!?」
灰崎は慌ててもたれかかっていたソファから離れて稲森に詰め寄る。
「オレはただ、ドリンクラウンジに入れるって書いてあったんで得したって言っただけだ」
「またまたぁ、超喜んだ癖に!」
「明日人!!」
アハハとみんなの笑い声が溢れる。
「野坂や西蔭も招待状もらったんだろ?」
「ああ。一応ね」
入院中にはなるが野坂にもちゃんと招待状が届いた。
『明日は代理で私が行くよ』
「代理って……、水津さんにも届いてるでしょ、招待状?」
『まあね』
「じゃあ、代理もなにも本招待じゃねえか」
『まあ、そうだけど、そうじゃないんだよねぇ』
はあ?と灰崎が怪訝そうな顔をしているのを見て、また野坂が笑った。
「明日のお楽しみですよね、梅雨さん」
『ええ』
当日まで秘密ってことで。
招待チケット
私のは特別製。