世界への挑戦編
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『見つけた!!』
数日掛かったが、ようやく目当ての金髪ロン毛を見つけることができた。
『こんにちは、おじさま。この間はありがとうございました』
黒塗りの車から降りてきたその御仁に、大きな声で話掛けながら近ずいた。
「貴様か」
サングラス越しの瞳に見つめられて、ニッコリと笑い返す。
『よろしければ、この間のお礼がしたいのですが』
そう言えば、おじさんはフンと鼻で笑った。
「必要な……いや」
おじさんは言葉を不意に止めて考えだした。
「丁度いい。その心遣いを受け取ろうではないか」
『えっ?』
まさか受け取られるとは思っていなかったので間抜けな声が出る。
だが、それを気にも止めずおじさんは真っ直ぐ歩き始めた。
「着いて来い」
『あ、はい』
慌てて追いかければ、おじさんは目の前の煉瓦の建物の扉を開いた。
「入りたまえ」
レディーファーストと言わんばかりに扉を押え立っているおじさんの横を抜け、建物の中にはいると、どうやらお土産屋さんのようだった。
『えっと、ここで何を?』
この間のお礼にここから何か買えばいいのか?
「子供向けの贈り物を選ぶ。礼はそれでいい」
早急に答えをくれたおじさんはつかつかと店の奥へ進んでいくので、雛鳥のようにその後を追いかけて行く。
『子供向けって……お子さんがいるんですか!?』
甥っ子がいるのは知ってたけど、まさかお子がいたんか!?
「私に子はいない。これは……知り合いの子供にだ」
ふむ。甥っ子なら知り合いではなくきょうだいの子だと言うだろう。
『どんな子なんですか?性別とか年齢とか特徴とかあれば』
「盲目のイタリア人の少女だ」
『ああ、あの子か』
「そんなとこまで知っているのか」
感心したようにいうおじさんに、いや、と首を振る。
『知ってるのは名前くらいのもんですよ』
ボンバー勢とアニメ勢は急に出てきたこの金髪の子誰!?だったからな。
スパークでイタリア代表の彼と関わり合いがあるって事ぐらいしか知らない。
『それにしても、目の見えない子か……。さわったり落としたりして痛く無いものがいいかな』
ぐるり、とお店の中を見渡して見れば、痛くないもの代表のようなおもちゃがあった。
『ぬいぐるみなんかいいんじゃないですか?女の子ですし』
そう言ってぬいぐるみが並べられている棚に向かえば、今度はおじさんが私の後ろを着いて回る。
『目の見えない分、指先の感覚とか鋭いだろうし、触り心地の良いのがいいよね』
どれがいいかなとぬいぐるみのひとつを抱えあげ、触感を確かめてみる。
こっちはどうだ、と他のぬいぐるみも同じように触っていく。
一般的なうさぎやクマだけでなく、ライオコット島の各島の動物がぬいぐるみになっているようで、ウミガメ、ヤマネコ、ウミヘビ、クジャク、コンドルがある。
一般的に見目可愛いくて女の子が好きそうなのはウミガメとヤマネコかな。
私個人的にはウミヘビも愛嬌あって可愛い顔してると思うし、クジャクは羽根が綺麗だし、コンドルはかっこいい。
『うーん………』
「貴様は相変わらず警戒心が薄いな」
『え?』
まさか、また?とカバンを漁ればちゃんと財布は入っていた。
「確かにそれもそうではあるが、私に対する警戒心の話だ」
『はあ、必要性を感じないので』
「……おかしなことを言う。我々は敵対しているはずだが」
『確かにそうですけど、私に何かする気なら愛媛で会った時にしたでしょう?それに、この間のスられたのをわざわざ私に教えてくれた人がそれを言うのはおかしいですよ』
見て見ぬフリをして、ざまあとあざけ笑うことも出来たのに、この男はわざわざ私に
「そこに何か裏があるとは思わないのかね」
『小娘ひとりのためにわざわざそんな回りくどい事します?バスに仕掛けをして自分のチーム全員病院送りにした人が?』
豪炎寺を出場させない為に夕香ちゃんを事故に合わせた人が?
試合中に鉄骨落としてきた人が?
『邪魔なら消す。それが1番手っ取り早いと分かっているのにわざわざそんな事しないでしょ』
「確かに、邪魔であるならばな。……そろそろ決まったか?」
『うーん、この子はどうでしょう』
悩んだが、クジャクを選んだ。目が見えるようになった時、この翼の美しさに感動してくれるかもしれない。
『本当はペンギンがいればよかったんですけどね』
帝国学園と言えばペンギンだし。
「ふむ。それにしよう」
そう言って、おじさんは私の手からぬいぐるみを奪い、レジカウンターへ持っていく。
傍から見ていれば金髪ロン毛でサングラスの白スーツのおじさんがぬいぐるみを持ってるのミスマッチで面白い。
支払いを終えたおじさんが手ぶらで私の元に戻ってきた。
『ぬいぐるみは?』
「プレゼント用に箱に包んでもらっている」
なるほど、とレジカウンターを見れば店員さんが大きな箱を開けてそっとぬいぐるみを箱に入れていた。
可愛い包装紙も横に置かれているのでラッピングにもう少し時間がかかるだろうと推測する。
「ところで貴様の要件はなんだ。先の礼が本来の目的ではあるまい」
『あはは、そうですね。あんなに探したのにこれで終わりじゃ泣くとこでした』
レジに向けていた視線をおじさんに向け直す。
『ミスターK。あなたは、神代と言う名に聞き覚えはないですか?』
「神代?」
おじさんは顎に手を当てて考える。
「覚えがないが……何者かね、その者は」
やっぱり知らないか。吉良会長とも私の件は疎通が出来ていなかったようだし。
『何者かわかんないから探してるんですよ。ところで、ガルシルドさんに会いたいですけどあなたのコネで会うことってできませんか?』
ガルシルド・ベイハン。石油王であり、世界平和を掲げ、世界サッカー大会フットボールフロンティア・インターナショナルを開いた、大会会長である。
「その者が、あのお方に関わりがあると?」
『会って話してみないことには分からないですけど』
そう言えば影山は鼻で笑った。
「あのお方が一介の小娘にわざわざ会うとは思わんが……。いや、貴様は一介の小娘ではなかったな」
『まあ、そりゃあ歳は喰ってますけど』
「そうではない。だが……」
ふむ、とおじさんは考え込みだした。
歳の事言ってるんじゃないのは分かってる。
異世界人って事を言ってるんだろうけど。
「明日の昼過ぎ、イタリアエリアに来い。あのお方は私もなかなか会える方ではないからな、引き合わす事は難しいが……あの方の手下に言付ける事ぐらいはできるだろう」
そう言ってこちらの返答も聞かず、おじさんはレジカウンターでラッピングされた箱を受け取っていた。
『明日の昼って……』
急だけど休み取れるかなぁ。
何かに託けて抜け出すか?
「行くぞ」
大きな可愛いラッピングの箱を抱えたおじさんは私に声を掛けて扉へ歩いていく。
またも、慌てて追いかけて、一緒に扉の外へ出た。
「では、明日にな」
『あ、はい』
おじさんはこちらを見ることもなく、つかつかと歩いて、来た時と同じ黒塗りの車に乗り込んだ。
「水津?」
急に後ろから名前を呼ばれて、ビックリして心臓が止まるかと思った。
ホラーゲームさながら
怖くて後ろを振り向けなかった。