世界への挑戦編
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心当たりというか、可能性がある人物が1人いる。
ただ、その人に正規で会う方法はずっと先になる。
だとしたら裏のルートを使うしかないんだけど………、そのためにはまずある人に会わないと。
あのおじさんまた日本エリアウロウロしてないかなぁ……。
ゲームだとあの人けっこうあちこちに居たんだけど……。流石に、どの時期にどこに居たかまでは覚えてないなぁ。
まだ、監督に就任してないだろうからイタリアエリアに居るかも分からないし……。就任の日まで待つと、彼らと一緒になるし、そのタイミングで話をするのは無理だし……。
『うーん………』
「随分と考え込んでいるな」
その声に顔を上げれば、鬼道が目の前に立っていた。
「立向居の事か?」
そう言った鬼道は、練習が終わってみんなが宿舎へ帰ろうとする中、1人で裏の練習場へ歩いていく立向居へと視線を送った。
『あー、うん』
本当は別の事で悩んでいるとは言えないので、頷いておく。
『円堂みたいな無茶な練習はしないし、ちゃんと休息の大事さもわかってる子だから大丈夫だとは思うんだけど』
「ちゃんとしてるぶん口出ししにくいと言うわけか」
『そう』
練習メニューの見直しも言ってくるかと思って用意してあるのだけれど、立向居が見直しを頼んでくることはなかった。
ひとりで黙々と考え、特訓をしている様子。
『とりあえず今は助けを求めて来るまでは見守ろうかなって』
「そうか」
『さて、私も上がろう。この後、買い出し行かないとだし』
みんなと同じ様に宿舎へ帰ろうと体を向ける。
「荷物持ちが必要なら付き合うが」
同じように鬼道も宿舎の方へ向いたので一緒に歩き出す。
『ううん。ちょっとした物だから大丈夫』
というか、買い出しはただの口実で、人探しをしてまわりたいから鬼道について来られるのは困るのだ。
「そうか。もし必要な時はいつでも言ってくれ」
『ありがとう。その時は頼らせてもらうね』
鬼道に礼を述べれば、前から視線を向けられた。
なに?と見れば、円堂と豪炎寺と共に前を歩いていた染岡がこちらを見ていた。
「……荷物くらいだったら、俺も手伝ってやるから、その、言えよな!」
「ああ!オレも手伝うからいつでも言ってくれよ!」
染岡が叫ぶように言えば、同じようにこちらを向いた円堂がニコニコと笑ってそう言って、彼の間に立つ豪炎寺が小さく笑った。
一緒懸命な染岡と、それが分からない円堂が面白かったんだろうなぁ。
あまりにも可愛い二人に私も笑みが零れてしまう。
『ふふ、ありがとう。2人の事も頼りにするよ!』
久遠さんに、期待を持たせるようなことはしない事だって言われたし、一線引くべきだと分かってはいるけど、やっぱり優しさを無下にはできないよ。
「お、おう!」
「ああ!」
照れたように顔を背けた染岡と、力強く頷いた円堂にまた笑って、先行く彼らの後に続いて、一旦宿舎へと帰るのだった。
数日、合間を縫って人探しをしているが、見つからない。
今日も全然会えなかった、と食堂でため息を吐く。
何さあの人、前は人が困ってる時に現れた癖に!!今も困ってんだから現れなさいよね!!!
「あの……、梅雨先輩?怒ってます?」
『はい?』
恐る恐る、と言った声に顔を上げれば春奈ちゃんが居た。
「あ、いえ……その、険しいお顔してたので……」
困ったような、怯えたような顔をして春奈ちゃんは目を逸らした。
『ああ、ごめんね。ちょっと考え事をしてたから』
なんか前に考え込んでた時に土門にも顔が怖いって言われたな。気をつけなければ。
『それで、どうしたの?』
そう言えば春奈ちゃんはホッとしたように胸を撫で下ろした。
「実は立向居くんの事なんですけど」
『ああ、立向居か』
兄妹揃って本当に良く見ているなぁ。
「はい。実は木暮くんの余計な一言で思い詰めちゃってるみたいで……」
『あー』
そうそう。キャプテンの真似ばっか、みたいな事言っちゃうんだったよね。
「一応、私も叱ったんですけど、梅雨先輩からもよく言っておいて下さい!……じゃなくて、立向居くんが自分の必殺技を身につけるための特別メニュー!みたいなのって考えてもらえたりしないかなって思って……」
『あるよ』
そう言えば春奈ちゃんは、へっ?と間抜けな声を出した。
『いつ頼まれてもいいように、もう作ってあるんだ!立向居から言われないから、無駄だったかなぁと思ってた』
「無駄じゃないですよ!それに立向居くんも、梅雨先輩を頼りにしてないわけじゃなくて……。立向居くん、変更を頼むのは梅雨先輩に失礼なんじゃないかって思ってたみたいで」
『失礼?』
「はい。自分に合わせたものを作ってくれてるのに、それを変更してくれだなんておこがましいって。そんな事思わないですよね?」
『そりゃそうよ』
うんうん、と春奈ちゃんに力強く頷く。
『レベルに合わせて変更していくものでもあるし。なにより、私も手探りでトレーナーやらせてもらってるからね……選手達にとって物足りない練習をさせているのならそれは私が悪い。それに自分勝手に身体を壊す特訓をされるより、相談してメニューの変更をさせてくれる方がよっぽどいいよ』
まあ、立向居は身体を壊すようなめちゃくちゃをするような子ではないのだけれど。
「だって、立向居くん!」
そう春奈ちゃんは食堂の入口へ声をかけた。
『え?』
「あ、あの……すみません」
恐る恐るというように立向居が食堂へ入ってきた。
「梅雨先輩、もうメニューの変更考えてくれてたって!」
「はい。ありがとうございます」
良かったね、と春奈ちゃんが笑顔で立向居に声をかければ、立向居は私の方を向いて頭を下げた。
『私の方から声を掛けてもよかったんだけど、今はひとりで考えたい時期かと思ってね』
そう言えば立向居は顔を上げれて人差し指で頬をかいた。
「最近はそのつもりだったんですけど、今は春奈さんや木暮達手伝ってくれてて……。力になってくれるのってとても有難いです!」
『そっか。じゃあ、コレも仲間に入れてくれる?』
持っていたファイルの中から1枚の紙を取り出して立向居に手渡す。
「はい!」
仲間に加わった!
紙だけじゃなくて梅雨先輩もですよ!と春奈ちゃんに背を押されるのだった。