世界への挑戦編
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「水津さんにお土産があるんですよ」
そう言ってヒロトは部屋に入ってきた。
『お土産?』
「はい。今日、円堂くんと風丸くんと食べ歩きに出かけたんですけど、その時に見つけて水津さん好きそうだと思って」
どうぞとヒロトに渡されたのは小さな可愛柄の紙袋。
『開けても?』
「はい。紅茶が好きでしたよね?ちょうど焼き菓子を売ってるお店があって」
開いてみれば、フィナンシェが入っていた。
開けた袋からふわりと香る甘い匂いと紅茶の匂い。どうやら茶葉の織り込まれたフィナンシェのようだ。
『わ、美味しそう。ヒロト、紅茶は飲める?それか、コーヒーならあるけど』
そう聞きながら部屋に置いている仕事用のデスクの上に貰った紙袋を置き電気ケトルのスイッチをオンにする。
「え?」
『ただ、お土産持ってきてくれただけじゃないでしょ?』
それは部屋に来ること他の人に見られた時のための口実で、実際は部屋でなければ話せない事があるのだろう。私の身体が透ける事とかの事で。
「そうですけど……。いいのかな、お土産にって買ってきたの俺まで食べるの……」
『いいのいいの。こういうのは一緒に食べた方がより美味しいんだから!』
私がそう言えば、ヒロトはキョトンとした後、小さく笑った。
「そうですね。じゃあ俺も紅茶で」
『はいはい』
紅茶を淹れたあと、デスクの椅子をヒロトに譲って、自分はベッドに腰掛ける。
紅茶をひとくち飲んで、ヒロトは口を開いた。
「姉さんから連絡があったよ。DNA検査の結果について」
瞳子さんから私に直接連絡して来なかったって事は言い難い結果だったという事か。
検査をすることで消える原因のヒントでも見つかればって事だったけど…何も分からなかったかな。
『どうだった?』
「その……、とても言いずらいんだけど……」
そう言ってヒロトは一旦口を閉じた。
『大丈夫。身体が透けるなんて事態だよ?何があっても驚かないよ』
「……そうですね……」
すう、と息を吸った後、ヒロトは真っ直ぐ私を見た。
「DNA検査の結果、水津さんは……ヒトゲノムと一致しなかったそうです」
『………はい?』
「そして、現段階の調査では一致する他の動物も見つかってない、と」
思わず頭を抱える。
異世界人だと言っていたのに、まさか人ですらないとは……。
「あの……」
心配そうなヒロトの視線が向けられて、大丈夫と片手を上げる。
『天使に悪魔、河童だっているんだし……』
その並びでなんで河童?とヒロトは首を傾げている。
『………吉良会長の話じゃ、神の子らしいし、肉体が人間判定じゃないのもまあ、有り得るか』
「良かった。もっと落ち込むかと思ってました」
『まあ、人間じゃないなんて言われたらねぇ』
「姉さんも流石にショックを受けるんじゃないか、って伝える事に悩んでて」
『瞳子さんが?』
はい、とヒロトが頷く。
事実なんだから伝えるしかないわとか言いそうなのに、他人への配慮が出来るようになったのか。
イナズマキャラバンでの生活あってか、それとも親のことで悩まなくて良くなったからか分からないけれどいい事だ。
『そっかぁ。後で私から連絡を入れておくね』
「そうしてください。伝えることを不安がってましたから」
ヒロトの言葉に頷いて紅茶を啜る。
今までで分かってることは、私が物語を変えようとしたりした時に体が透けるという事。
『この世界に合わせて神が作った体。その世界に反する行動をした事で肉体と魂に反発が起こったって事、か……?』
「なるほど……。エイリア石の首輪を付けられた時にだけ全身が消えたと言ってましたよね」
『うん。しかも、あの時、染岡が部屋に入ってきたけど、私の事を認識してなかった』
私が大きくシナリオを変えようとしたからだ。
「エイリア石には、人間の能力を引き上げる作用がある。それが悪い方に作用して肉体と魂が強く反発した結果、他者から見えないくらい体が透けた」
それが私が迎える末路なら、あの時のように意識だけはこの世界に残るのだろうか。
それなら、先のみんなを見守ることはできる。……ああでもそれって、テレビやゲームでみんなのことを見ていたのと同じ。
元に戻るだけ。
『未来を変えるなんて自我を出さなければ消えないのなら、このまま大人しくしていれば……いや、』
所謂最終回を向かえた先に、私が存在しようとすることが、そもそも大きな反発になる。
知らない先を見ようとすることが世界の理に反するのだ。
『神が作った体である以上、いずれ消える、か……』
「水津さん……」
シーンと部屋が静まりかえる。
「……やっぱり作った本人にどうにかしてもらうのが1番じゃないかな」
『本人って……神代にって事?』
はい、とヒロトは頷く。
『そりゃあそれが手っ取り早いけど、会ったことのある吉良会長すら、向こうからの接触がない限り会えないって言ってたし、夏未ちゃんのお父さん、雷門中の理事長は友人という記憶を植え付けられてあっているが、姿が分からないというし……それも一方的でしょ?』
「他に神代と接触したことがある人はいないんだろうか……?」
うーん、とヒロトは考える。
他に、他にね
心当たりが1人だけ。