世界への挑戦編
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冬花ちゃんの提案で、明日は1日練習は休みとなった。
みんなは大喜びで明日の予定を立てているだが、その中で立向居だけが元気がない。
試合が終わったあとは、円堂の新必殺技を見て感極まっていたはずなのに、宿舎に帰ってきた頃には何か思い詰めたような顔をしていた。
『これは、トレーニングメニューの見直し言ってくるかなぁ』
彼が次に進むために必要なのは……。
選手ごとに個別にまとめた資料をペラペラをめくっていれば、横から手が伸びてきてファイルごと資料を奪い取られた。
『え?』
顔を上げれば、ファイルを持った響木さんがいた。
「隙があれば仕事をしているな、お前は」
『まあ、役立てることがそのくらいなので』
そう答えれば、響木さんはやれやれと言ってため息を吐いた。
「明日はお前も休みだからな」
『あ、はい』
響木さんは、ぽん、とファイルを私の頭の上に乗せてきた。
「何か予定があるか?」
『いえ……』
言われなきゃ仕事しようと思っていたので、何の予定も入っていない。
「それなら悪いんだが、アイツらについて行ってやってくれ」
そう言って響木さんは、幾人かの男の子たちの方を指さした。壁山に栗松、虎丸、それに土方、染岡、綱海がいる。
「海に行きたいらしいんだが、小学生も居るしな。流石に中学生だけで行かすわけにもいかん」
『あー、なるほど』
そりゃ、大人からすれば子供たちだけで海は行かせられんよな。
かと言って、響木さんは体調良くないしずっと炎天下の元はキツイだろうし、久遠さんも海苦手そうだし、なにより他の子たちの事を見に島中を巡回するだろうしなぁ。
『構いませんよ』
すまんな、と言ったあと響木さんは子供達の方へ体を向けた。
「おーい、お前たち。海へは水津が保護者としてついて行く。しっかり言うことを聞くんだぞ」
響木さんがそう言えば、子供達は元気にはーい!と返事をしたのだった。
「えー、梅雨先輩、海行っちゃうんですか」
残念そうな声が聞こえて振り返れば春奈ちゃんを筆頭に、秋ちゃん、冬花ちゃんと女子マネ勢揃いだった。
『うん。子供らだけで行くの危ないからねー。監視役』
「そうなんですね。実は、ショッピングに誘おうかって、3人で話してたんですけど」
『ありゃ、それは残念』
女の子たちとお買い物も楽しそうだったけどなぁ。
『またの機会に誘ってね』
はい!と春奈ちゃんが力強く頷く。
「ところで、梅雨ちゃんはどんな水着で行くの?」
『あー、』
秋ちゃんの質問で、持っていない事を思い出す。
『遊ぶ暇ないと思って持ってきてないんだよね。まあ、保護者として行くんだしTシャツ着てくよ』
「ダメですよ!」
ずい、と春奈ちゃんが身を乗り出してきた。
「せっかく海に行くんですから、梅雨先輩も遊ばないと!」
「あ、じゃあ、朝イチで私達と水着買いに行きませんか?その後、水津さんは海に、私達は他のお店にってすれば……」
「冬花さんナイスです!」
「ええ、いい案ね!」
と、女の子達がノリノリで予定を組み出して、断り切れなかった私は結局、次の日朝イチで女の子達と水着を買いに行くのであった。
(染岡視点)
試合後の休暇に海に行くことにした俺たちに、響木監督が水津を保護者として指名した。
そして、マネージャー達に連れられて水津は朝から水着を買いに行った。
響木監督もマネージャー達も、マジでナイスだ。
ライオコット島内の海水浴場に昼前に到着した俺たちは、マネージャー達との買い物を終えた水津と合流して更衣室で着替えた後、砂浜に集まった。
「水津のやつおせーな」
早くサーフィンがしたい、と言わんばかりにサーフボードを小脇に抱えた綱海が呟く。
『ごめんごめん。お待たせ〜』
水津のそんな声に振り返って見れば、青い色のビキニ姿でこちらに走ってやって来ていた。
「おぉ……」
「すげー……」
水津のたわわな胸に思わず視線が行けば、俺の隣に立つ土方も珍しく口に出して感想を述べていた。
1年達もぽけーっと水津に見惚れているようだ。
『えっと、変、かな?秋ちゃん達に選んでもらったからおかしくないと思うんだけど……』
「おう!似合ってるぜ!じゃ、俺はサーフィン行ってくるぜ!」
『あ、うん。ちゃんと準備運動するんだよー!』
常日頃からサーフィンする綱海はビキニなんて見慣れてるのか、興味も無さそうにサーフボードを抱えて早々に海に走っていった。
「せ、先輩っ、すっごく綺麗でやんす!」
『わ、ありがとう。栗松はいい子だねぇ』
そう言って水津は栗松に近づいて、その頭を撫でた。
おい、気づけ水津!そいつ鼻の下伸ばしてんぞ!!!
「水津さん、オレも海泳いできていいですか!」
虎丸も綱海と同じく水津の水着姿には興味がないようで、遊びたい!と海の方を指さした。
『うん、いいけどまず準備運動ね』
「はーい!壁山さん栗松さん準備運動しますよ!」
そう言って虎丸が2人の腕を引く。
「……あっ、はいッス!」
依然ボッーとしたように水津を見ていた壁山がハッとしたように返事をする。
「水津さんも、一緒に泳ぐでやんす?」
デレデレとした様子で栗松が水津に問う。
『私?荷物番も居るだろうしここにいるよ』
皆、それぞれ携帯やら昼飯用の財布やら少しずつの荷物がある。
「荷物番なら俺らがやるから、水津、泳いでこいよ」
な、と土方が俺に同意を求めてきた。
「おー、俺らは泳ぎじゃなくて焼きに来たからよ」
俺らの傍に荷物置いときゃ取られる心配もないだろう。
『そう?じゃあ、お願いしようかな。2人も泳ぎたくなったら声かけてね』
そう言って水津は後輩たちと一緒に準備運動をしてから海の方へ走っていった。
それを見て俺らも2人並んで砂浜にうつ伏せになる。
「いやぁ、しかしすげぇな」
しみじみと言ったように土方が呟く。
「お前、あんま見んなよ」
「そう言う染岡もガン見じゃねーか」
俺はいいんだよ俺は。
マネージャーたちが水津に水着を着せてくれたのはナイスだと思ったが、他の奴らが見るのは気に食わねぇ。
水津は後輩達と水かけあってキャッキャとしている。
くっそ、可愛いな。
んで、鼻の下伸ばしっぱなしの栗松は後でシバく。
ジリジリと照らす太陽の下、心も焦がすのであった。
(梅雨視点)
「水津さん!勝負しませんか!」
虎丸にそう言われて、勝負?と首を傾げる。
「ここらから泳いであの岩をグルっと回ってここまで先に戻ってきた方の勝ちです!」
どうですか?と虎丸が見上げてくる。
『いいよ。勝ったら焼きそば奢っちゃる!』
先程、海の家で売ってたのを見たのを思い出してそう伝える。
「わー!いいんですか!」
喜ぶ虎丸は勝つ気マンマンらしい。
「虎丸くんだけずるいッス!オレも参加したいッス!」
食べ物に釣られた壁山がオレもオレもと手を挙げた。
『いいよ。いっその事全員でやろうよ』
栗松を見れば、負けないでヤンス!と彼も意気込んだ。
4人で1列に並んで、準備する。
「それじゃあ行きますよ!よーい!どん!」
虎丸の掛け声で一斉にスタートする。
自信の通りのスピードで虎丸が先陣を切る。その後を私と栗松が変わらぬ速度で追いかけて、最後尾を壁山が進んだ。
岩の元までたどり着き、ぐるりと岩を回った後で、私はスピードを上げた。
一応、田舎育ちとしての意地があるのでね。
ぐんぐんと追い上げて、虎丸を抜かす。
『はい、いっちゃーく!』
大人気なく、1番を取った私が海から上がれば、2着の虎丸が水の中から頭を出してくやしー!と声を上げた。
その後、栗松、壁山も続いてゴールした。
「先輩泳ぎも得意なんでヤンスね……」
「忘れてたッス。沖縄の時、颯爽と溺れた目金さんの事助けてたッスもんね……」
「えっ、なんですかそれ?」
「ほんと凄かったんッスから」
そう言って壁山が、宇宙人との戦いの最中あった出来事をあの時その場にいなかった栗松と虎丸に語り出した。
『3人とも、私、焼きそば買ってくるからね』
「えっ、オレたち負けちゃったのにいいんッスか!」
みんなの買って来るとは言ってないのに、買ってもらう気マンマンじゃないか。
もう、しょうがないな。
『いいよー』
「「「やったー!」」」
大喜びの3人に見送られて、砂浜を歩く。
染岡と土方も焼きそば食べるかな。
「ねえねえ、キミひとり?俺らと遊ばない?」
「あーちょっとちょっと!行かないでキミだって!」
『はい?』
急に見知らぬ男性に腕を掴まれた。
目の前にいる金髪にピアスといったチャラい感じの男2人に、マジかとため息を吐く。
『あの、離してください。1人じゃないんで』
そう言って虎丸たちの方を顎で指す。
「あー、弟と来てるんだ!」
「でも弟は友達と楽しそうじゃね?子供は子供と、大人は大人と遊ぶ方が楽しんじゃねーの?」
髪色が少し近いからか、虎丸の事を弟と勝手に勘違いしたようだ。
『あのー、大人じゃないです。中学生です』
「嘘つくなよ、棒読みじゃん」
「それに、そのカラダで中学生は無理でしょ」
ニマニマと笑い男達は私の胸に視線を落とした。
そして、馴れ馴れしく肩をつかんできた。
『あんまりしつこいと警「何やってんだお前ら!」
その声に顔を上げれば、染岡と土方が走ってこちらにやってきた。
「なんだお前たち?」
「なんだはこっちのセリフだ!人の連れに手ぇだしてんじゃねえよ!」
ただでさえおっかない顔してんのに、目も眉も吊り上げて染岡は男たちに怒鳴って、私の肩に乗っていた手をたたき落として、私の肩を引いて自分の方に寄せた。
『え、ちょ……』
「あ?お前もその子の弟か?」
「誰が弟だ!誰が!」
ムキッーと怒ってる染岡はかなり密着していることに気づいていないようだ。
『あの、染岡………』
「染岡?染岡って……あ!コイツら日本代表じゃねえか!」
「はあ!?じゃあマジでその子、中学生かよ!」
「おう、アンタら犯罪者になる前にどっかいった方がいいと思うぜ」
ギロリ、と土方も男たちを睨みつける。
「悪い悪い、ほんとに中学生だと思わなかったんだって!」
「ま、まあ!お前らも青春楽しめよ!」
そんな捨て台詞を吐いて男たちはそそくさと居なくなってしまった。
「なんなんだよアイツら」
「水津、大丈夫か?」
悪態をつく染岡と、土方は心配そうに声をかけたきた。
『あ、の、あんまり、大丈夫じゃないかも………』
自分でも分かるくらい弱々しい声でそう言えば、染岡はやっと気がついたのか、うわあ!と大声を上げて手を離し距離を取った。
「わ、悪い!」
『いや、うん……だ、大丈夫』
恐らく赤いであろう頬を抑えると熱い。
意識しないようにすればするほど泥沼にハマっているような気がする。
中学生相手にトキメクな私。さっきのアイツらと一緒だぞ。
『2人とも助けてくれてありがとう!それじゃあ!』
早口でそう言って、海の方へかけ出すのだった。
泡となって消えたい
水津先輩、焼きそばは?そんな壁山の声を無視して、海の中に飛び込み顔を冷やすのだった。