フットボールフロンティア編
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一足先に選手達が帰った部室内で、マネージャー4人はそれぞれの仕事を行っていた。
部の活動日誌が秋ちゃん、撮った映像データの整理が春奈ちゃん、皆の運動記録をデータとしてグラフに書き起すのが夏未ちゃんで、それを元に次の日の選手それぞれの練習メニューや筋トレメニューを考えるのが私の仕事である。
『よし、終わったー!』
書き終えたルーズリーフをリングファイルに閉じ込んで、んー!と伸びをする。
「お疲れ様」
既に日誌を書き終えた秋ちゃんがニコニコと笑ってそう言ってくれて凄く癒される。
「こちらも終わったわ」
夏未ちゃんは、クリアファイルに用紙を差し込んで、縦に持ったそれをトントンと机の上で叩いた。
「あっ、先輩たち待ってくださいね。私もあとこれだけ編集したら終わるんで!」
『大丈夫大丈夫、待つよ』
「ええ、慌てなくて大丈夫よ」
先にジャージから制服に着替えながら、春奈ちゃんを待つ。
「終わりましたっ!私も急いで着替えますね!」
「ええ。音無さん、お疲れ様」
それぞれ着替えを終えて部室を出て施錠する。
「鍵は私が返却しておくわ」
『よろしくね夏未ちゃん』
じゃあね、と3人で夏未ちゃんに手を振って校門へと向かう。
「あれ、水津先輩今日こっちから帰るんですか?」
正門よりも、河川敷側の裏門から出て稲妻総合病院の前を通った方が家に帰るのは近いから、いつもはそっちから帰るので春奈ちゃんが疑問に思ったようだ。
『うん、今日もうめんどくさいから雷雷軒でラーメンでも食べて帰ろうかなって』
「あ〜いいですね」
「水津さん、一人暮らしって言ってたもんね。自炊大変そう」
そうそうと秋ちゃんの言葉に頷く。
『2人も一緒に行く?』
そう言えば2人は、うーんと悩み出した。
「私はやめときます。晩御飯前に食べると、その、太っちゃいそうなので」
「えっ、じゃあ、私もやめとこうかな。うちもお家でご飯作って待ってるだろうし」
乙女2人の言葉に、そうよねぇと心の中で呟く。体重とか気にする年頃よね。コンビニでアイス買って食べるのとラーメン屋でラーメン1杯食べるのじゃ話が全然違うしな。
私は体重云々より、家に帰って今から自分でご飯を作る面倒くささが勝ってしまっているので、俄然行く気である。
『そっかー。おうちの人も作って待ってるもんね』
せっかく作ったのに、途中で買い食いして家のご飯が食べられないんじゃ、おうちの人に失礼だしね。
『まあ、女3人ラーメンってのも何だかなって感じだし、今度はスイーツで誘うわ』
「あっ、それならいつでも誘ってください!」
「春奈ちゃん、太るって今言ってたのに」
くすくすと秋ちゃんが笑えば、スイーツは別ですよ!と春奈ちゃんが力説する。
「あっ、じゃあ私こっちなんで!」
「あ、うん」
『気をつけてね』
はーい!と返事をした春奈ちゃんに秋ちゃんと2人でバイバイと手を振って歩き出す。
『秋ちゃんはスイーツは太るからダメ?』
「えっ、うーん。...私もスイーツは別かな?」
少し恥ずかしそうに答えた秋ちゃんを見て笑顔になる。
『おっ、良かった。じゃあ、夏未ちゃんも誘って4人で行こうね』
「ええ、楽しそうね」
それから2人でたわいない会話をしながら歩いて、しばらくして商店街に入り雷雷軒の前までたどり着いた。
『じゃあ秋ちゃんここまでだ』
「うん。今日は一緒に帰れて楽しかったわ」
『そう?じゃあまた明日ね』
バイバイとお互いに交わして、私は雷雷軒の扉を開けのれんを潜り、秋ちゃんは商店街の中へと進んでいった。
「いらっしゃい」
店主が振り返ってそう言うのと共に、中に居たお客さんが皆、入口を見た。
「おっ、水津!」
『ああ、みんなも来てたの』
入口側のテーブル席に座っていた客、円堂守に名を呼ばれ店の中に進めば、円堂と同じテーブルに染岡が座り、L字になっているカウンターの入口側...いつも新聞読んでるおじさんがいる所に少林と壁山が座っていて、他の空いてるカウンターに宍戸と半田が居た。
『おじさん、いつもの』
そう言ってカウンターの半田横の席に腰掛ける。
「はいよ」
店主はそう言ってカウンターに背を向けて、フライパンを振る。
「お前いつものってそんな来てんの?」
半田の質問に、んー...と考える。
『ご飯作るのめんどい時はここ来るね』
「あー、一人暮らしなんだっけ?」
そうそうと頷けば、宍戸がえっ!?と半田を挟んでこっちを見た。
「水津さん料理とか出来るんですか!?」
宍戸のこの反応出来ないと思ってるな。悪いがレシピがあれば大概のものは作れるぞ。
『まあねぇ、一人暮らし長いし』
高校卒業してからだから何年かな。うん悲しくなるから数えるのやめようかな。
「先輩、苦労されてるんですね...」
何かを察したように少林寺が呟いた。
ああ、普通に中学が一人暮らしが長いって言ったらそういう反応だよなぁ。
「はいよ」
そう言って隣の半田の前に、ごとりとお皿が置かれる。それから他の席にもそれぞれが注文したであろうラーメンが並べられていく。
『半田だけチャーハンだ』
「んー、今月金欠なんだよなぁ。まあチャーハンなら安いし米だし腹持ちいいし、家帰るまでの繋ぎ」
中学生のお小遣いなんてしてれるもんねぇ。それでもおうち帰ってご飯があるならいいじゃないか。
『なるほどねぇ』
「水津さんって何作れるんですか?」
ああ、まだその話続ける気なのね宍戸は。
『和洋中なんでも作るよ。昨日はさば味噌作ったし、一昨日は...何したっけな。...あ!鳥の甘酢あんかけ作ったね』
「へぇ、意外にちゃんと料理してるんですね!カップラーメンとかかと思ってました」
うん、失礼だぞ宍戸。カップ麺はカップ麺で美味いけどな。
「はい、おまち」
そう言って目の前に来た店主がカウンター越しにラーメンと餃子を置いていく。
『あっ、あと半チャーハン下さい』
そう言えば、あいよと返事して店主はまた後ろを向いた。
「水津、お前それにチャーハン追加って...」
半田がそう言ってきたので、何よ?と返す。
「いや、太るぞ」
『はあん?喧嘩売ってる?運動した後に食事するのってめちゃくちゃ大事なんだけど?タンパク質取らなきゃいけないの。このメニューもちゃんと考えてタンパク質が多く取れるようにとんこつチャーシューメンにしてるのわかる?』
マネージャーだけど、君たちに付き合ってフルではやらないにしろ、ランニングしたり筋トレしたりパス練したりしんてんのよ私。
「ああ、うん、俺が悪かった」
素直に謝った半田に満足して、箸を取って、いただきますと手を合わせる。
『あ、少林寺、壁山、餃子たべる?』
「えっ、いいんですか!?」
「食べるっス!!」
驚いたように聞いてきた少林寺の横で壁山は目を輝かせてそう応えたの見て思わず笑顔になる。
『少林寺、取りにおいで』
小柄で店内をウロウロしても邪魔にならなさそうな少林寺を呼んで、カウンターに積み重ねてある小皿を取ってそれに半分ほど移して、残りの餃子皿事少林寺に渡す。
『2人で半分こしな』
「ありがとうございます!」
そう言って皿を受け取った少林寺が壁山の元に戻っていくの見れば、宍戸が再び半田越しにこちらを見た。
「水津さん、俺は!」
「あっ、俺も!」
宍戸につられるように半田がそう言って手を挙げる。
『宍戸と半田は失礼なこと言ってきたんで無しでーす』
そう言って2人を無視してラーメンを啜る。うむ。いつ来ても美味しい。
「俺は半田さんみたいに失礼な事言ってないですよ!?」
ぐっ、と項垂れた半田の横で抗議した宍戸に、いいや、と首を振る。
『料理出来ないと思ったでしよ?失礼だよ、失礼』
「ぐ...思ってましたけど、だって俺水津さんの料理食べたことないんですもん」
『そりゃ全員そうでしょ』
「俺は水津さん料理出来ると思ってたッス!」
壁山の言葉に、俺も俺も!と少林寺が乗る。
『よしよし、壁山と少林寺は可愛い後輩だなぁ。何か食べたいものがあるならお姉さんが今度作って持ってってあげよう』
「ほんとスっか!やった!!」
何がいいなかなぁと少林寺と壁山が2人で話始める。
「マネージャーの差し入れの定番って言ったらはちみつレモンじゃねえか?」
なかなか思いつかない様子の1年達に染岡がアシストを出すが、水津が首を振った。
『それ切って漬けるだけだし、料理の腕前関係なくない?』
というか、染岡ははちみつレモン食べたいのか?可愛いところもあるね。
「うーん、おでんとか」
「この時期にスっか?」
『あっ、じゃあ今度の土曜練習にアレ作って来ようか』
アレ?と男子一同が首を傾げる。
『決勝戦出るんだし、験担ぎにカツサンドとか、どう?』
「カツ食べて勝つってか?」
「いいな、それ!」
ダジャレじゃねーかと呆れた染岡と反対に、スゲーいい!と円堂には好感触だ。
どう?と壁山と少林寺を見れば、壁山の方がじゅるりとヨダレを垂らしている。
『これはOKそうだね。じゃあ、土曜日に作ってくよ』
やったー!と男の子達の歓声が雷雷軒に響いた。
部活帰りにラーメン
たまには悪くないよね。