サブストーリー
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ダンボール箱いっぱいに詰め込まれたチョコレートの山にため息を吐いた。なんせダンボールは1つではなく数十箱あるからだ。
『今年も凄いな野坂は……』
去年、王帝月ノ宮で過ごしたバレンタインの時もすごい量のチョコレートやプレゼントを貰っていたが、FFで準優勝し、FFIに出場している今年は更に凄い。
「本当に凄いですね……」
隣りにいる杏奈ちゃんも複雑そうな顔をしている。
「風丸くんや吹雪くん、基山くんもダンボールの数すごいですね」
つくしちゃんの言うように、王子様系の雰囲気がある子達は段違いで多い。
とりあえず代表メンバーの中でダンボールがひとつも無い子は居ないみたいだから良かった。格差は凄いけど。
「でもこれ、私たちが部屋まで運ぶんですか……?」
フリスタやるために普段から筋トレしてる私はともかくとして、細腕の杏奈ちゃんやつくしちゃんにはこれだけの量を各部屋に運ぶのは無理があるだろう。
『自分たちに運ばせればいいじゃない。ファンからの愛なんだから喜んで運ぶでしょ』
「そうですね。皆さんには夕飯の時に伝達しましょう」
「水津先輩は今持って帰られますか?」
杏奈ちゃんの質問に、ん?と首を傾げる。
『私……?』
「はい、先輩の分も1箱ありますよ」
ここに、と杏奈ちゃんが箱を指さした。
その箱を見れば、確かに私の名が書いてある。
『私の分もあるとは思わなかったなぁ』
「なに言ってるんですか!梅雨ちゃんだってフリスタの日本代表なんですから!」
『うん、まあ、そっか』
確かに同じ女性である、のりかちゃんにもダンボールがちゃんとあるし、最近のバレンタインは男女関係ないのかな。
『私にもこんなにファンがいてくれるんだね、初めて知ったよ』
ダンボール箱を抱えると結構重たい。
この箱ひとつにチョコレートと1つだけって事はなさそう。
「え?FFの頃から梅雨ちゃんファン結構いますよ?」
『えっ、嘘だぁ』
「……野坂くんや西蔭くんと居たから気づかなかっただけでは?」
「そうですよ!私もファンですし!」
『え〜!ありがとうつくしちゃん!』
まあ、確かに野坂や西蔭は熱狂的ファンが多いから、ファンのイメージが変についたのかもしれない。ファンは表に見える人たちだけじゃないって事か。
悪口言われてたら悲しいからエゴサとかしないので、本当に知らなかった。
『じゃあ、私はこれ部屋に持ってってくるね』
「はい」
バイバイと2人と別れてダンボールを抱えたまま廊下に出る。
部屋に向かいながら歩いていれば、トレーニングルームから出てきた西蔭と鉢合わせた。
『おつかれ〜』
「あ、はい。……その荷物どうされたんですか?」
『これ?チョコだよ。今日バレンタインでしょ?』
そう言えば何故か、えっ、と呟いて西蔭は固まった。
『西蔭?』
背の高い彼を下から見上げれば、西蔭はハッという表情をした後、目線を逸らした。
「それは、その……誰に…………」
なにか言いにくそうな様子で、眉尻を下げた西蔭を見て首を傾げる。
『ん?誰って……これはファンに貰ったやつだよ。私にも送ってきてくれる人がいるなんてビックリだよねぇ』
「あ、貰い物…………なるほど、そうでしたか」
いつもの真顔に戻った西蔭はそう言って頷き、持ちますよ、と私が持っていたダンボールを奪った。
『このくらい大丈夫なのに』
「いえ、恐らく野坂さんでもこうしますから」
そうかなぁ。野坂なら、梅雨さん力持ちだね、で終わりそうだけど。
『まあ、ありがとうね。西蔭の分もたくさん届いてたから後で食堂まで取りに行ってね』
「たくさん…………。分かりました」
西蔭は眉を顰めて嫌そうな顔をする。
まあ、自分の分だけじゃなくて恐らく野坂の分のも食すの手伝わされるだろうからね……。
『ファンが多いってのも大変だね』
「はい」
『好意だから無下にもできないしねぇ』
「好意、ですか…………。その……、水津さんはチョコを渡すんですか?」
『え?私?』
西蔭がそう言う話題を振ってくるの珍しい。
『うーん、みんなたくさん貰ってたし要らないんじゃないかなぁ。あれだけの量、消費するの大変そうだし』
「……俺は欲しいです、水津さんのチョコ」
顔を背けて西蔭がボソリと呟いた。
『へ……?』
それはいったい……と西蔭を見れば、耳が赤く染っていた。
「そういうことですので……。では」
そう言って西蔭は私の部屋の前にダンボールを置いて、一礼をした後、走り去って行ってしまった。
心待ちチョコレート
あんな可愛い反応されたら渡さないわけにはいかないじゃない?
今からでも間に合うレシピ探さないと。
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