サブストーリー
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総理の時間の都合もあって、誰よりも先に塔子ちゃんが雷門中を去っていった。
散々彼女とアクロバットをやった後だったので、疲れたと、ベンチに腰掛けひと息ついた。
そんな私の隣に、少し早歩きで寄ってきた木暮がちょこんと座った。
『木暮も休憩?』
「そう。アイツらあんな試合した後だってのに元気すぎるんだよ」
愚痴ってはいるものの、うしし、と木暮の顔は笑っていた。
彼は、すっかりみんながお気に入りのようだ。
「前もこうやって2人で休憩したよな」
『あー、キャラバンの中でね』
なにわランドの修練場で、サボっていた木暮と一緒に話しをした覚えがある。
「あん時鬼道さんが来て、怒られる前に梅雨さんがオレのこと庇ってくれただろ。オレそんなの初めてだったからさ、ちょっと嬉しかった」
『そう?』
「うん。なんかさ、姉ちゃんとか居たらこんな感じなのかなって。ほら、音無と鬼道さんって兄妹だろ?ああいうのちょっと羨ましかったからさ」
いつもは天邪鬼な木暮の、素直な言葉。
この旅を通して、彼は真っ直ぐに自分の言葉をぶつけてくるようになったと思う。
『私も弟分が出来て嬉しかったよ』
よしよしと木暮の頭を撫でる。
「へへ。オレ、梅雨さんに会うまであんまり頭撫でられたことなかったかも」
『そうなん?こんなにいい子なのにね』
「いい子なんて言うのも梅雨さんくらいだよ」
『えぇ?だって、それこそさっきの2人でキャラバンで話したって時だって、木暮は私のお腹の怪我の様子心配してくれてたでしょ?そんな子がいい子じゃないわけないじゃん』
そう言えば、木暮は少し恥ずかしそうにそっぽを向いた。
「そんな単純な事でいいのかよ」
『いいんじゃない?』
「ふーん」
そう言って木暮は足をプラプラと揺らした。
「………オレさ、今朝梅雨さんが居なくなったって聞いて結構ショックだったんだ」
ああ……。急に研崎が来て連れていかれたからなぁ。
「また、裏切られたって。この人もかあちゃんと同じだったって」
木暮はそうか。お母さんにここで待っててって言われて置いていて行かれたんだもんね。
私も話すと言って消えた。そりゃあ木暮からしたら、また裏切られたと思うだろう。
「でもさ、梅雨さんは帰ってきたし、何より理由があっただろ。だから許してやってもいいかなって」
『木暮………』
「かあちゃんも何か理由があったんかな……」
俯く木暮の頭をそっと撫でる。
『私は木暮のお母さん本人ではないから分からないけれど、やむを得ない理由があったのかもしれないね』
「……あるって断言しないところが梅雨さんらしいよね。やむを得ない理由かぁ。……オレは、理由を聞いてもやっぱり、かあちゃんのことは許せないかもしれない」
『いいんじゃない?許してもらおうなんて、おこがましいよ。私だって許される事だとは思ってないし』
「そうなんだ」
こっちを見てきた木暮に、うん、と頷いてみせる。
「じゃあ、やっぱり梅雨さんのことも許さなくていい?」
『いいよ』
「じゃあ許さない。だからさ、お詫びに、またオレにフリースタイルってやつ教えてよ!あれ結構楽しいし悪くないなって」
そう言って木暮はうしし、といたずらっ子のような笑みを浮かべたのだった。
天邪鬼な子
約束だとそう言って、木暮はベンチを飛び降りて京都へ帰る準備をしに行ったのだった。