サブストーリー
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朝の見た天気予報では降水確率60%だった。
予報通り5時間目辺りからパラパラと雨が降り出して、結構な雨量に傘持ってきてない最悪だと嘆くクラスの女子に今日は普通の傘も持ってきてるから、どうぞ、と折りたたみ傘を貸したのが間違いだった。
HRが終わり雨で屋外の部活になるサッカー部も今日は中止になった。
ただ、朝練の時に洗濯したタオルを部室の外に干した事を思い出して、回収しに向かった。思い出さなきゃ明日の朝秋ちゃんと泣く羽目になっただろう。まあどの道びしょ濡れだったので、もう一度校内の部活棟内にある洗濯機に放り込んで明日の朝すぐに干せるように時間設定しておいた。
それから昇降口に向かったらこれだ。
下駄箱で靴を履き替えて、さあ帰るぞと傘立てを見たら私の傘がない。
ビニール傘なんかじゃなくて、ピンクの布地にネコちゃんの可愛い柄のやつ。
『マジか...』
はあ、と大きくため息を吐いて、下駄箱の前にある簀子の上に座り込む。
さっき部室の鍵を返しに職員室に行った時に、学校の置き傘借りに来た生徒に、もうないのよと先生が言ってるのを見たしなあ。
なんで人に親切にしたはずの私が傘パクられて雨に濡れて帰らなきゃならんのだ。
「お前...なにやってんだ...?」
後ろから引き気味の声でそう声をかけられて、ゆっくりと振り返る。
『染岡。まだ帰ってなかったの?』
染岡とはクラスが同じだ。HRが終わってからでもだいぶ時間立ってるけど。
「うるせーな再試だよ再試」
そう言いながら染岡は上履きを脱いで自分の下駄箱から靴と入れ替えて履き直している。
『ああ、小テストの。女の子誰か残ってた?』
「いや?女子は今回いなかったな」
じゃあ、誰かクラスの女の子の傘に入れてもらうのも無理か。別クラスの秋ちゃんとかももう帰ってるだろうしなぁ。
「お前こそこんな所で何やってんだよ」
『私は雨止むの待ってる』
そう言えば染岡は不思議そうに首を傾げた。
「お前、傘あるからって折りたたみ貸してなかったか?」
『あるつもりだったんだけどね。パクられた』
「はあ?マジかよ」
『マジだよ』
ため息を吐けば、置き傘は?と聞かれてそれもないってと返す。
「どうすんだよ」
『雨止むの待つしかないよね。止まなかったらダッシュで帰る』
家がそんなに遠くないのが救いだ。
『染岡、気をつけて帰りなね』
「お、おう。...雨止むといいな」
傘立てから乱雑に突っ込まれたであろう黒い傘を引っこ抜きながらそう言った染岡に、ありがとうと返す。
「じゃあ、な」
『うん。また明日ね』
バイバイと手を振りながら昇降口を出て正門に向かって歩く染岡の背を見詰めていれば、彼はピタリと足を止めたかと思うとくるりとUターンして昇降口の中に戻ってきた。
『どうしたの?』
「...、あー、その...」
そう言って染岡はキョロキョロと忙しなく目線を動かした。
「...ッー、入ってく、か?」
真っ赤に染めた顔を背け、恐る恐ると言った感じにそう言われた。
『えっ、いいの?』
染岡、女子と相合傘とかそういうの絶対嫌だと思ってたんだけど。男同士だとノリで入れてくれそう感はあるけど、女子相手だと彼女とですら嫌がりそうなのに意外だ。
「お前ここで置いて帰ったら、そのまま帰ってまた風邪引くだろ」
え、優しいかよ。
そっか。そう思って引き返してくれたのか。可愛いヤツめ。
『じゃあ、お言葉に甘えるけど』
「お、おう。さっさと入れ」
簀子から立ち上がって、お邪魔しますと染岡の持つ傘の右半分に入る。
黙って歩き出した染岡のペースに合わせて少し早歩きで昇降口から出て、染岡は正門ではなく裏門の方に向かう。
『あれ、送ってくれるの』
「はあ?そうじゃなきゃ入れなんて言うわけねぇだろ」
『1回染岡ん家帰ってそこから傘貸してくれんのかなって』
「いや、それお前だいぶ遠回りになんだろ。それに普通男が送ってくもんだろ」
凝り固まった男性論だが、それは普通に嬉しいな。
けれど、私の方が車道側なのエスコートし慣れてなくて可愛いな。
『あ、』
河川敷上の道路の左側の歩道を歩きながら進んでいれば、染岡の肩が傘からだいぶはみ出してるのに気が付いた。
『染岡もっと寄りなよ。肩もカバンもびしょ濡れじゃん』
そう言って染岡を見上げてみれば、彼は、顔を真っ赤にして、いや、と口篭った。
『教科書ダメになるわよ』
「ぐ、...う...そう、だよな」
よく分からない唸り声を上げた後、染岡は少し右に詰めた。
『もし教科書濡れてたらドライヤーで半乾きくらいにして後はページの間に綺麗な紙を挟んで重しするといいよ。冷凍するって方法もあるけど...』
「冷凍?」
『うん。フリーザーパックに入れてチャック止めないで縦に置いて冷凍して1日2日凍らせたらそれを取り出して重しをして放置すれば綺麗に戻るんだって。ただ時間がかかりすぎるから明日使う教科だと無理だからね』
「へー。おばあちゃんの知恵袋かよ」
『うん。そういうの読むの好きなんだよね』
おせんべいの小袋の裏とかに書いてあるやつマジマジと読んじゃうんだよね。
「ふーん。まあ、やってみるわ、って、わ、悪ぃ」
肩と肩がぶつかって、染岡が慌てたように離れる。
『大丈夫よ。そんな気を使わなくても』
今はセクハラだのなんだのの冤罪で男の子達も気を使うもんなぁ。
「いや、そういう訳じゃ...はあ。いや、なんでもねぇ」
どこか諦めたようにため息を吐いた染岡はずんずんと歩くペースを早める。
あー、ただ照れただけか。
後ろから見ても分かるほど真っ赤な耳を見てくす、笑う。
「なんだよ」
振り返った染岡に微笑み返す。
『なんでもないよ』
「そうかよ」
そう言って、私が遅れている事に気がついたのか染岡は歩くペースをゆっくりに戻した。
あめあめふれふれもっとふれ
昔そんな歌があったけど、確かに来たのはいい人だな。
予報通り5時間目辺りからパラパラと雨が降り出して、結構な雨量に傘持ってきてない最悪だと嘆くクラスの女子に今日は普通の傘も持ってきてるから、どうぞ、と折りたたみ傘を貸したのが間違いだった。
HRが終わり雨で屋外の部活になるサッカー部も今日は中止になった。
ただ、朝練の時に洗濯したタオルを部室の外に干した事を思い出して、回収しに向かった。思い出さなきゃ明日の朝秋ちゃんと泣く羽目になっただろう。まあどの道びしょ濡れだったので、もう一度校内の部活棟内にある洗濯機に放り込んで明日の朝すぐに干せるように時間設定しておいた。
それから昇降口に向かったらこれだ。
下駄箱で靴を履き替えて、さあ帰るぞと傘立てを見たら私の傘がない。
ビニール傘なんかじゃなくて、ピンクの布地にネコちゃんの可愛い柄のやつ。
『マジか...』
はあ、と大きくため息を吐いて、下駄箱の前にある簀子の上に座り込む。
さっき部室の鍵を返しに職員室に行った時に、学校の置き傘借りに来た生徒に、もうないのよと先生が言ってるのを見たしなあ。
なんで人に親切にしたはずの私が傘パクられて雨に濡れて帰らなきゃならんのだ。
「お前...なにやってんだ...?」
後ろから引き気味の声でそう声をかけられて、ゆっくりと振り返る。
『染岡。まだ帰ってなかったの?』
染岡とはクラスが同じだ。HRが終わってからでもだいぶ時間立ってるけど。
「うるせーな再試だよ再試」
そう言いながら染岡は上履きを脱いで自分の下駄箱から靴と入れ替えて履き直している。
『ああ、小テストの。女の子誰か残ってた?』
「いや?女子は今回いなかったな」
じゃあ、誰かクラスの女の子の傘に入れてもらうのも無理か。別クラスの秋ちゃんとかももう帰ってるだろうしなぁ。
「お前こそこんな所で何やってんだよ」
『私は雨止むの待ってる』
そう言えば染岡は不思議そうに首を傾げた。
「お前、傘あるからって折りたたみ貸してなかったか?」
『あるつもりだったんだけどね。パクられた』
「はあ?マジかよ」
『マジだよ』
ため息を吐けば、置き傘は?と聞かれてそれもないってと返す。
「どうすんだよ」
『雨止むの待つしかないよね。止まなかったらダッシュで帰る』
家がそんなに遠くないのが救いだ。
『染岡、気をつけて帰りなね』
「お、おう。...雨止むといいな」
傘立てから乱雑に突っ込まれたであろう黒い傘を引っこ抜きながらそう言った染岡に、ありがとうと返す。
「じゃあ、な」
『うん。また明日ね』
バイバイと手を振りながら昇降口を出て正門に向かって歩く染岡の背を見詰めていれば、彼はピタリと足を止めたかと思うとくるりとUターンして昇降口の中に戻ってきた。
『どうしたの?』
「...、あー、その...」
そう言って染岡はキョロキョロと忙しなく目線を動かした。
「...ッー、入ってく、か?」
真っ赤に染めた顔を背け、恐る恐ると言った感じにそう言われた。
『えっ、いいの?』
染岡、女子と相合傘とかそういうの絶対嫌だと思ってたんだけど。男同士だとノリで入れてくれそう感はあるけど、女子相手だと彼女とですら嫌がりそうなのに意外だ。
「お前ここで置いて帰ったら、そのまま帰ってまた風邪引くだろ」
え、優しいかよ。
そっか。そう思って引き返してくれたのか。可愛いヤツめ。
『じゃあ、お言葉に甘えるけど』
「お、おう。さっさと入れ」
簀子から立ち上がって、お邪魔しますと染岡の持つ傘の右半分に入る。
黙って歩き出した染岡のペースに合わせて少し早歩きで昇降口から出て、染岡は正門ではなく裏門の方に向かう。
『あれ、送ってくれるの』
「はあ?そうじゃなきゃ入れなんて言うわけねぇだろ」
『1回染岡ん家帰ってそこから傘貸してくれんのかなって』
「いや、それお前だいぶ遠回りになんだろ。それに普通男が送ってくもんだろ」
凝り固まった男性論だが、それは普通に嬉しいな。
けれど、私の方が車道側なのエスコートし慣れてなくて可愛いな。
『あ、』
河川敷上の道路の左側の歩道を歩きながら進んでいれば、染岡の肩が傘からだいぶはみ出してるのに気が付いた。
『染岡もっと寄りなよ。肩もカバンもびしょ濡れじゃん』
そう言って染岡を見上げてみれば、彼は、顔を真っ赤にして、いや、と口篭った。
『教科書ダメになるわよ』
「ぐ、...う...そう、だよな」
よく分からない唸り声を上げた後、染岡は少し右に詰めた。
『もし教科書濡れてたらドライヤーで半乾きくらいにして後はページの間に綺麗な紙を挟んで重しするといいよ。冷凍するって方法もあるけど...』
「冷凍?」
『うん。フリーザーパックに入れてチャック止めないで縦に置いて冷凍して1日2日凍らせたらそれを取り出して重しをして放置すれば綺麗に戻るんだって。ただ時間がかかりすぎるから明日使う教科だと無理だからね』
「へー。おばあちゃんの知恵袋かよ」
『うん。そういうの読むの好きなんだよね』
おせんべいの小袋の裏とかに書いてあるやつマジマジと読んじゃうんだよね。
「ふーん。まあ、やってみるわ、って、わ、悪ぃ」
肩と肩がぶつかって、染岡が慌てたように離れる。
『大丈夫よ。そんな気を使わなくても』
今はセクハラだのなんだのの冤罪で男の子達も気を使うもんなぁ。
「いや、そういう訳じゃ...はあ。いや、なんでもねぇ」
どこか諦めたようにため息を吐いた染岡はずんずんと歩くペースを早める。
あー、ただ照れただけか。
後ろから見ても分かるほど真っ赤な耳を見てくす、笑う。
「なんだよ」
振り返った染岡に微笑み返す。
『なんでもないよ』
「そうかよ」
そう言って、私が遅れている事に気がついたのか染岡は歩くペースをゆっくりに戻した。
あめあめふれふれもっとふれ
昔そんな歌があったけど、確かに来たのはいい人だな。