フットボールフロンティア編
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ベンチに座りバインダーに挟んだ紙にフォーメーションを書き込みながら、1つ空いた空白の丸に円堂はうーんと頭を悩ませた。
「豪炎寺の代わりは...」
顔を上げてサッカー部のメンバーを見回していた円堂は、梅雨を見てピタリと動きを止めた。
「水津...」
『いやいや、″少年″サッカーの大会だから出られないし』
てか、豪炎寺の代わりにFWとか無理無理。私そもそもフリースタイラーだからね、シュート打ったりなんてした事ないし。
「だよなぁ。と、なると」
そう言って円堂は、土門の事を見た。
「はいよ、俺ね」
まあ残った土門と目金なら、実力的に土門を選ぶのが妥当なわけだけれど。
「ここは!」
快く引き受けてくれようとした土門より前に目金が一歩先に出た。
「切り札の出番でしょう!」
眼鏡のブリッジを押した彼に、円堂が切り札?と聞き返す。
「メイド喫茶に行ったおかげで彼らのサッカーが理解出来ました」
ホントか?それ、分かった!(分かってない)みたいな事ない?
「僕が必ずチームを勝利に導いてあげましょう」
ドヤ顔で自信満々にそう言いきった目金に対して、雷門イレブン達は微妙そうな顔をする。
「いいんじゃないか、目金で」
そう言ったのは、他でもない怪我で試合に出られない豪炎寺だった。
「そうね、やる気満々みたいだし。何とかなるんじゃねーの?ね、梅雨ちゃん」
次にそう言ったのは土門で、せっかくの出場チャンスをあっさりと譲ってしまう。
『そこで私に振るのか。まあ、なんだかんだ言ってちゃんと練習もしてきてるしね』
最近はランニングも最後まで走りきれてるし、イナビカリ修練場もみんなと一緒の分をこなしているわけだし。
「ああ、そうだな。よし!今日はお前がFWだ!」
目金に頼んだぞ!と立ち上がって気合いを入れた円堂に、ちょっと待った!と夏未ちゃんが止めに入った。
「彼が豪炎寺くんの代わりで大丈夫なの?あまりにも危険な賭けじゃない?」
夏未ちゃんがそう言えば、そうッスよと壁山が頷いた。
「帝国戦の時みたいにまたいつ逃げ出すか...」
うんうん、と帝国戦時に一緒にフィールドに立っていた一同が頷く。
まあ逃げたのは事実だし自業自得っちゃ自業自得だけど、今まで部活をサボった事はないし、もう少し信頼してあげてもいいんじゃないかな。
「今日のこいつのやる気は本物だ!俺には分かる!」
円堂はメラメラと瞳を燃やし力強く眼前で拳を握った。
「本気でやる気になってるやつが、ここ一番で必ず頼りになるんだ!俺は目金のやる気に賭けるぜ!」
目金欠流だけに?賭けるって?
いやまあ、自分で思っといてなんだが、つまらんギャグは置いとくとして。流石円堂。こういう時の言葉の力強さ素晴らしい。円堂がそこまで言うならと、皆を黙らせてしまった。
「大船に乗ったつもりでいてください」
うん...、これはやっぱり心配だわ。
その自信はホントどこからくるんだろうなぁ。イキった目金を見てため息を吐いた。
『うーん、』
雷門中対秋葉名戸学園の試合は、秋葉名戸側がボールをキープしたまま攻め上がっては来ず、前半戦は残り数分となっていた。
前回の御影専農戦といい、今回といい観客的には見ていて動きがなく面白みがないし、雷門選手的にはイライラとさせられる試合である。
しかも今回に至っては、秋葉名戸イレブン達のオタク特有の奇行に雷門イレブン達が振り回されている感じがある。
『攻めて来ないね...』
「来ないな」
隣に座っている豪炎寺も訝しげにフィールドを見つめている。
「何かの作戦でしょうか?」
春奈ちゃんの問に秋ちゃんが、そうかもと答えるが、夏未ちゃんは怪訝そうに口を開いた。
「何かを考えてるようには全く見えないわよ。なんなのアレ」
ロボットの動きを真似たり、さながらヒーローのようにポーズをとったりセリフを言ったり。オタクくん達さぁ...。
秋葉名戸の奇行のせいで全くボールが取れずに前半戦が終了し、みんながベンチへと戻ってくる。
メイド服のスカートを翻しながら、マネージャー総出でドリンクとタオルを配るのだが、
『おいこら1人くらい私の元に取りに来いよ』
皆が私を避けるようして、秋ちゃん、春奈ちゃんの方に集まり過ぎたため、給仕なんてしないわよと言っていた夏未ちゃんまでもが仕方なく参加して分担するようにドリンクを配っているのだ。
「いや、その...」
「...なあ?」
もう既にドリンクを貰った半田と染岡が、一瞬だけこちらを向いてすぐに目を背けて2人は互いに顔を見合せた。
その様子に、む、と頬をふくらませる。
『あっ、栗松と少林、ドリンクまだ貰ってないでしょ?ここにあるよ』
「え、えっと、だ、大丈夫でやんす!」
顔を真っ赤にして腕で目を塞いだ栗松と、同じように顔を隠した少林寺がコクコクと頷く。
その反応を見てにうーん、と呟く。
『そんな言うほど刺激強い服でもなくない...?』
「いやいや十分センシティブですよ。あっ、僕のドリンク貰っていいですか?」
『あーはいはい』
どうぞと目金にドリンクを手渡して、はて?と首を傾げる。1番女子に免疫力なさそうなオタクという人種の癖に、目金の私に対する態度は普通だな。
『なんで、だ...?初々しい反応しそうなのに...?』
「あぁ、僕ですか?僕ほどになればそのくらいの露出度のレイヤーさんは見慣れていますから、別に特段緊張したりなんかしませんよ。正直、夏雨様の衣装ならこの衣装よりネコミミ回の衣装の方があざと可愛くて僕は好きですし、ああ、そう言えば...」
永遠と早口でしゃべり続ける目金に、ああ、うん分かった分かったと繰り返す。
このままだと永久に語りそうなので、話を逸らさねば。
『ところで、前半戦戦ってみてどうなの。思ってた通りの動き?』
「まるで攻めてこないなんてこの僕でも予想外でしたよ」
「お前アイツらのサッカーが理解できたんじゃなかったのかよ」
思わず、横から染岡がツッコミを入れる。
「それにしてもなんでボールが取れないんだ?」
「アイツらの妙なノリに調子を狂わされたせいだ」
真剣に分析を始める半田と風丸に皆がうんうんと頷く。
「得体が知れない」
ベンチの後ろからヌッ、と影野が現れて夏未ちゃんと豪炎寺がビクリと肩を揺らした。
「...お前もな」
まあ、オタクの奇行に一般人がついていけなくて生じる戸惑いがボールが取れない理由なんだろうけれど。もそもその身体能力はこちらの方が上なのだから、向こうの流れさえ崩せたら簡単に奪えてしまうと思うのだけれど。
今も休息を取らず皆でゲームを始めた秋葉名戸を見て、うーん、と苦笑いをこぼす。
『自由だなぁ』
「とにかくボールを奪ってチャンスを作るんだ!」
円堂の言葉に、雷門中サッカー部の、おおー!という返事が響いた。
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