現在、3対3の同点。
このアディショナルタイム中に天を取らなければ、PK戦にもつれ込む。
シュート技の多い雷門相手にPK戦なると正直キツイ。
なんとしても点を取らなくては。

先程ゴールを割られたので、王帝月ノ宮のボールで再開するのはある種、好機である。
センターに立った一矢が軽くボールを蹴りそれを野坂が受け取ってドリブルで駆ける。
その後ろに一矢と草加が張り付くように続いた。
そう、それが合図で、王帝月ノ宮の選手は一矢と草加の後ろに2列で続いた。
私もいつものように1番後ろで走り出した。

「いくよ！」

必殺タクティクス。

「ローグプレス！」

野坂が踵でボールを後ろの一矢に渡りそこから後ろにジグザグにダイレクトパスでボールが繋がる。
一矢スタートの時の終わりは奥野。

「野坂さん！」

勢いの増したロングパスで一直線にボールが帰って行き、一気に中盤を突破した。
しかしながら、1度見せたタクティクス。
ボールを得た野坂の前に日和が立ち塞がった。

「シューティング、「水津さん！」……えっ！」

シューティングカットでボールを取ろうと回転し風を起こそうとしていた日和は野坂の横パスに驚いていた。
このタクティクスの時は立て2列になっている、と先程ので刷り込まれてしまったのだろうけど、一矢スタートの時は奥野で終わるので、私がわざわざ最後尾にいる必要はないのだ。だから、前へと走り出していた私は野坂にボールが届く頃には彼の近くまで来ていた。

「気づいてましたよ、オレは！」

『なっ、！？』

野坂からのパスを受け取った瞬間、その声と共にスライディングでボールが弾かれた。

「同じリベロですからね」

地面に尻を付けた状態でこちらを見上げた万作がへへっと笑った。

弾かれたボール奥入と草加が競り合って奥入が、必殺技、ザ・ラビリンスを使い勝ち取った。

「よこせ！」

「はい！」

後輩なのにあの物言いで元は敵チームだったはずの灰崎にすんなりとボールが回るのは、彼ならゴールまで運んでくれるという信頼関係からか…。

それに応えるかのように、灰崎はいつもの荒っぽいプレーで強引にゴール前まで突破した。

「はああああ！」

雄叫びを上げて飛び上がった灰崎は、眼前でクロスさせた両腕を大きく後ろに振った。
サッカーボールにペンギン達が集まって力を溜める。

「パーフェクトペンギン！」

オーバーヘッドで灰崎がボールを蹴ると、飛び散るペンギン達と共にボールが飛んで行く。

「キャスティング…」

「違う！」
『待って！』

野坂と私が叫んだが遅かった。

西蔭はもうパーフェクトペンギンに向かって腕を伸ばしてしまった。

「なっ、」

西蔭も気づいた事だろう。頭上に落ちた影で。

シュートチェインだ。


「シャイニングバード！」


見上げると太陽に重なって輝く稲森明日人の姿があった。

『ああ……、眩しいなあ』

パーフェクトペンギンの軌道を変えるように叩きつけらたシャイニングバードは、西蔭の伸ばした腕も虚しく、ゴールへと突き刺ささり、試合終了のホイッスルが鳴り響くのであった。


シャイニングパワー
観客席に、喜んでいる茜ちゃんの姿が見えた。