フットボールフロンティア編
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「これを私に着ろと?」
『まあまあ、夏未ちゃん落ち着いて』
「無理に決まってるでしょう!」
わなわなと震えながら夏未ちゃんが片手で掴んでいるのはピンクのフリルエプロンの付いた可愛らしいメイド服だった。
その後ろで秋ちゃんと春奈ちゃんにも違ったデザインのメイド服が配られる。
「我が校における試合にはマネージャーは全てメイド服着用!という決まりになっております!」
雷門中対秋葉名戸学園の試合は秋葉名戸学園のグラウンドで行われる。
「誰が決めたのよっ!」
「店長、いや監督が」
そう言ってメイド喫茶で働いていたビッグテールのメイドさん基秋葉名戸のマネージャーさんが指したのは、ダンボールの上に座ってスイカを食べている、バンダナにメガネ、ヨレヨレのTシャツ...古のオタク感あるおじさんだった。
「アレ監督だったんだ...」
呆れ気味に円堂がそう言うのも仕方がないよね。
『夏未ちゃんしょうがないよ。郷に入っては郷に従えだよ』
そう言ってぽんぽんと夏未ちゃんの肩を叩く。
「貴女達も着ることになるのよ...」
ジト目で夏未ちゃんが見てくるが、秋ちゃんと春奈ちゃんは手にしたメイド服を広げてみてかわいいー!!ってやってるから着るの抵抗ないよ、きっと。
私?私はまあ、ヴィクトリアンメイドとかのロングドレスのメイド服なら着てもいいかなって思ってる。あれだけコアなオタクの生息する学校なら絶対フレンチメイドやミニスカメイドだけじゃなくてそういう趣のあるやつもある筈だと踏んでいる。
『ロング丈のメイド服もありますよね?』
そう聞けば、秋葉名戸のマネージャーさんは、あ!と言って手を叩いた。
「水津様ですね!水津様には特別な衣装がご用意してあります」
その言葉に思わず顔が引きつる。
『まさか...、』
嫌な予感がする。逃げるが勝ちだ。
逃走しようと駆け出そうとしたら、秋葉名戸のマネージャーさん2人に両側から押さえられる。
「更衣室はこっちですよ!」
『嫌だーー!!コスプレは嫌だーー!!私は見る専なんだー!!』
「いい素材は使わないと勿体ないですよっ。ヘアメイクも私たちが担当しますから心配しないで!」
あっ、こっちのマネージャーさんは、完全にレイヤーさんだ。コスプレ嫌だとか言ってごめんね。コスプレが嫌なんじゃなくて自分が着るのが嫌なんだ!
まあ叫びも虚しく無視されて、両脇の2人にガシッと腕を組まれ、そのまま更衣室まで連行されるのだった。
秋葉名戸DFの仮沢が手作りしたのであろう衣装を着せられて、メイクをされて、紫ロングのウイッグを被せられる。
姿見の前に立てば漫画ブレンドMの夏雨が居て、衣装の精巧さと秋葉名戸マネージャーのコスプレメイクの凄さに感銘させられた。
が、まあ自分が着るのはなんか違う気がするので複雑な気分だ。
試合をやる2時間程度の辛抱だ、と更衣室を出れば、フィールドに繋がるゲート前でメイド服に身を包んだ雷門マネージャー3名が秋葉名戸GKの相戸留に写真を撮ってもらっていた。春奈ちゃんと秋ちゃんに腕を捕まれ真ん中でぐったりとゲンナリとしている夏未ちゃんには悪いが、3人ともとても可愛らしい。
『ねぇ、その写真後で頂戴』
そう声をかければ、皆が一斉に振り向いた。
「え?」
「誰?」
「うおおお!!コレは完璧!完璧な採寸でしたよ!!」
「目線コッチにお願いしますなんだな!」
誰?となる雷門中生達を置いて、秋葉名戸学園生達が盛り上がっている。
仮沢はぐるぐると周囲を回ってウンウンと頷いていて恐らく自分の作った衣装の出来栄えに満足しているのだろうし、相戸留は地に寝そべってカメラを向けてきた。ローアングルで撮ろうとするんじゃないよ。
「中々の完成度じゃないですか、水津さん!」
目金がメガネを光らせてそう言えば、ウンウンと秋葉名戸生達が頷く。その後ろで雷門男子たちが、えっ、水津!?って言ってるのが聞こえる。
『いやこれは、秋葉名戸のマネージャーさんの腕が凄い』
「ちょっと!うちの水津さんになんて下品な衣装着せてるのよ!!」
キンキンと甲高い声で夏未ちゃんが叫ぶように怒る。
『まあまあ、夏未ちゃん』
うん、まあ、そういう漫画の衣装だから、夏未ちゃんのようなお嬢様から見たら下品な衣装だろうね。胸元ハートマークに開いてるんだもん。
キャラが着てるのは可愛いと思うんだけど、やっぱり私が着るのはなんか違うよねぇ。似合ってないからか、雷門男子達も全く目を合わせてくれないんだけど...って、これは違うか。アレか、みんな思春期か。
「水津先輩すっごい可愛いですよ!!」
『わーありがとう春奈ちゃん』
春奈ちゃんの方が可愛いんだよなぁ。
「凄い棒読みね」
ふふふ、と秋ちゃんが笑ってる。メイド服も似合ってるし可愛いなぁ。
「けど水津さんスタイルがいいから、本当に似合うわ」
『もう。褒め散らかしても何も出ないよ。けど、ありがとうね』
2人も可愛いよー!とよしよしと春奈ちゃんと秋ちゃんの頭を撫でて、チラリと夏未ちゃんを見る。
「べ、別に私だって似合ってないとは言ってないじゃない。貴女にはもっと清楚な方が似合うと思っただけで...!」
『うんうん、そっか。夏未ちゃんも似合っててとっても可愛いよ〜』
「ちょっと!撫でないで頂戴!それに似合ってるなんて嬉しくありませんからね!!」
ぷんすこと夏未ちゃんが怒ってるが、可愛いものは可愛いのである。同じ事を思ったのか、春奈ちゃんと秋ちゃんがカメラを出して夏未ちゃんを含め4人での自撮りを始めた。
『春奈ちゃん、秋ちゃん、後で写真送って』
「いいですよ!」
「もちろん!」
女の子達とわちゃわちゃしてると、秋葉名戸の漫画が近づいてきた。
『どうした?』
「あ、あの、姫。良ければ夏雨様のセリフを!!」
『いや、だから姫じゃないんだってば』
相変わらずの漫画先生にため息をつく。
「ほう、これはなかなか」
「目線こっちに...!」
「完成度たけーなオイ」
漫画先生だけでなく、わらわらと秋葉名戸イレブンが周りに集まってきてうっとおしい。
致し方あるまい。顎を上げ右手を伸ばして、親指を下に向けた。
『お帰り下さいませご主人様』
「「「ありがとうございます!」」」
漫画内でドSメイドの夏雨が言うセリフに、秋葉名戸イレブンは満足し、足早に自分達のベンチに向かって行った。
反対に雷門イレブン(目金を除く)は、えっ?え?と混乱した様子で去ってく秋葉名戸イレブンを見送っていた。
「アレが準決勝の相手、か...」
怪我の為メイド喫茶に行かず、彼らを知らなかった豪炎寺が呆れたように呟けば、困ったように円堂が、ああ、と頷いていた。
メイド in ベンチ
メイド服着ててもマネージャーとしてやるとこは変わらんよ。ドリンク作ろ。