アレスの天秤編
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話を終え西蔭の顔を見れば、彼は短いその眉を顰めていた。
「……2人して俺をからかっている、というわけじゃないんですよね?」
西蔭はそっと、確認するように伺ってきた。
まあ、無理もない。いきなり異世界から来ただの中身は成人済みだの言われも理解できないだろう。
「僕らがそんな冗談言うように見える?」
野坂がそう言えば西蔭が、えっ、言葉に詰まった。
「……その、わりと」
小さく呟かれた西蔭の言葉に、まあ、仕方ないよね、と野坂を見る。今までの行い鑑みなよ。
『残念ながら今回は西蔭をからかってるわけじゃないんだよね』
「残念ながら、とは?」
西蔭が引っかかって聞き返してきた事はとりあえず置いておく。
『やっぱり、突拍子もない話だから、そう簡単には信じられないか……』
野坂が異常なんだよな。あっさり受け入れちゃって。
「………いえ、信じます」
『あー、いいよいいよ?無理に信じなくたって。普通の人からすれば頭おかしい話だもん』
「確かに話は信じられませんが……、野坂さんが信じたアンタを俺は信じます」
西蔭は真っ直ぐとこちらを見て、ハッキリとそう言った。
相変わらずの野坂厨だなぁ。でも。
『ありがとう。今はそれで十分よ』
「とりあえずこれで、梅雨さんのことについての共通認識はできたわけですね」
野坂の言葉にそうだね、と頷く。
「それで、神代とはなんの話を?」
『あー、なんかとりあえず王帝月ノ宮を優勝させろって』
色々メタい話だったし、本来の世界線の話など今を生きている彼には必要ないだろう。
「ふむ。僕たちが優勝することによって、神代に何か利があるという事、なのか……」
端折ったことには気づいているだろうが、深く聞かず、野坂は自分の考察を口に出した。
『じゃないかなぁ……。まあ、優勝目指すことによって私達に不利益はないからいいんじゃない?』
目指さないのは、また足折りに来そうだけど。
「そうですね。元々、僕らは優勝する気ですし」
『そうそう。とりあえず、私らは後2戦勝てばいいわけだし』
「そうは言いますが、水津さんは次の1戦は出られませんよ」
思わず、えっ、と大きな声が出た。
「水津さん、今の自分の状況忘れてませんよね?」
西蔭の言葉に、あー、と自分の腕にくっついた点滴の針を見る。
「梅雨さんはまず退院してください」
『はい……すみません』
素直に謝れば、よろしい、と野坂から返ってきた。
「次の1戦も僕たちが勝ちます。だから必ず、決勝戦までには回復してください」
『うん』
勝ちます、か。相変わらずかっこいいこと言うね。
「では、僕たちはこの辺で。行くよ西蔭」
「あ、はい」
野坂が退出の意を伝えれば、西蔭は慌てて返事をした。
失礼します、と言って2人は病室を出ていくのであった。
(野坂視点)
「………野坂さん、大丈夫でしたか?」
梅雨さんの病室を出て、院内の廊下を歩いていれば、後ろから西蔭がそう声をかけてきた。
大丈夫ですか?なら身体を乗っ取られた事に対する話だろうが、大丈夫でしたか?とあれば、オーナーである御堂院の所に行ってきた話だろう。
「ああ、なんとかね」
「今回、水津さんが倒れたことにより、多くが
「ああ、そうだね」
先の試合後、倒れる梅雨さんを見た時は、僕も自分を襲っていた頭の痛みが、驚きで引いたほとだった。
倒れた彼女を見て、王帝月ノ宮のメンバーは動揺していた。
あの瞬間、彼女に駆け寄って行けたのは西蔭だけだった。
幾人かは、水津さんが試合後、吐いている事に気づいていたし、今回倒れたことによって疑問が生まれてしまったのだろう。
「……本当に大丈夫だったんですか?」
「ああ」
今回の診断結果が栄養失調だった事と、以前、食べ物の味がしないと診察を受けた時の診断結果が、ストレスだったおかげで、アレスの天秤による影響でのものでないと皆や御堂院に証明できたのは良かった。
御堂院にとって実験の失敗作だからとこれまでの人達のように捨てられる可能性もあった。
だからアレスの天秤でもっときちんと管理すればこのような事にはならないと上手く丸め込む事ができたのは、本当にラッキーだった。
ただ、サッカー部のみんなの疑問は、消えない。
梅雨さんが吐いてしまうのは、##RUBY#アレスの天秤#アレスシステム##に逆らっているからではなく、従っているからだと知っているからだ。
傍から見ているだけの御堂院は知らない。梅雨がどんな人物か。
僕ら王帝月ノ宮中サッカー部は、知ってしまっている。彼女が、真面目で優しく弱い人物なのだと。
キーパーソン
貴女が居ないこの3日間、練習の空気が全然違うんですよ。なんて言ったら無理して退院して来るんでしょうね。