アレスの天秤編
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雷門対白恋の前半戦は0-1で終了した。
「白恋中はいいチーム連携だね」
野坂の言うように、白恋中は吹雪士郎を中心に上手く連携を取っている。
アツヤが若干個人プレー気味だが、それも兄である士郎が上手くコントロールしているように見えた。
逆に、雷門はDF陣の連携が上手くいかず、お見合いしてゴール前を空けてしまう。打ち込まれた染岡のシュートはなんとかのりかちゃんが弾いたが……、それでもお前の位置だろとか、言って口論になり、ピリついていた。
『雷門は指揮系統が弱いね』
「作戦はほぼあの監督が考えてるチームだろうし、今までもそれに乗せられてる感じはあったからね。自分達で、指示しても動く事に慣れていない」
『キャプテンの道成がまったくチームを指揮できてないのもあるけど……』
ハーフタイムのベンチを見れば、道成は万作と言い争いをしているようだ。
『彼はMFだから、それとは別にGKの、のりかちゃんか、DFのうちの誰かがちゃんと戦況見て指示出来ればなぁ…』
雷門側は以前からDFの連携が弱いのが目立つ。DFがピンチの時は、FWの稲森と小僧丸がゴール前まで戻るなんて事が結構あったはずだ。DFがDFとしての仕事が出来ていない。
今まではそれでもなんとか勝ててきたが、動きの素早く攻守共に得意な吹雪兄弟相手に、そんなことをしていては勝てないだろう。
『今の雷門のDF全員2年生なんだっけ…』
去年の雷門は、土門が入るまでDFは1年生の壁山と栗松、サッカー初心者の影野と風丸だったから、最初の頃はフィールド全体を見てる円堂が指示してたし、フットボールフロンティア後半の頃にはがっちり指揮できる鬼道が入り、風丸も役割を理解してDF仕切ってたしなぁ。
『DFに年長者がいればまた違ったんだろうけど…』
確か、キャプテンの道成とFWの剛陣だけ3年生であと全員2年生なんだっけ…。
「学年と言うよりは、お友達チーム、だからこその弊害かな」
『ああ…』
確かに。
私とか花咲、丘野が3年生だろうが関係なしに、野坂の指示が絶対のチームだし。野坂と同じ2年生でも西蔭を筆頭に彼に従ってるし。
「さて、雷門はここからどう巻き返すのかな」
そう言ってどこか楽しそうに野坂は、雷門のベンチに座っている監督を見た。
後半戦も再開されるが、ハーフタイムで言い争いをしていたから問題解決はしてないようで、やっぱり懸念していた通りの事になった。
連携の取れないDFに変わりFWの稲森が下がってゴールを守る始末。
そこからシュートをうちにも上がるから、ゴールからゴールまでの役120mの距離を1人で何往復もしている。
『ガッツあるね…』
でも、スタミナ切れはどうしても起きる。
士郎からボールをカットした稲森は疲れてその場にダウンしてしまう。
それを心配して道成と万作、それに奥入が彼に駆け寄った。
「何をやってるんだ」
万作が聞けば、稲森は身体を起こして笑った。
「決まってるでしょ、サッカーだよ」
そう言って稲森はゆっくりと立ち上がった。
「サッカーは楽しいもんでしょ!ミスしたって、思い通りにならなくたって、それがみんなで向かっていくって事だろ!」
稲森にそう言われ、3人はハッとしていた。
『なんていうか、稲森は、』
お日様みたいな子
円堂がキラキラ輝く太陽みたいな子だと思ってたけど、稲森はぽかぽか温かいお日様って感じ。