フットボールフロンティア編
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骨折の為試合どころか練習にも参加出来ない豪炎寺は、親御さんの意向もあって怪我が治るまでの間、部活を休止する事になった。
「水津先輩!」
一足先に家に帰る彼を校門前で見送って、ミーティングしようと皆がぞろぞろと部室に戻る際に、春奈ちゃんに呼び止められた。
『どうしたの?』
振り返って彼女を見れば、何か言いたげに口を開けたり、閉じたりした。
それから意を決した様に、ぎゅっと拳をにぎる。
「あの!先輩に聞きたいことがあって!」
なんだろう?と首を傾げる。
「水津さん、音無さん、行くわよ?」
声をかけてきた秋ちゃんに、春奈ちゃんが、あっ...という表情になった。
『春奈ちゃん、新聞部ってWiFi飛んでる?』
「え?あ、はい。WiFiありますよ!」
『よし。秋ちゃん!私と春奈ちゃんは新聞部の部室で次の対戦校どっちになるか見てくるよ!確か今日だったよね?尾刈斗中対秋葉名戸の試合』
ね?と確認するように春奈ちゃんを見ればコクコクと頷かれた。
「そう?じゃあ先にミーティング始めちゃうね」
『うん。よろしくね』
バイバイと先に部室に行ったみんなを追って行った秋ちゃんに手を振って、文化棟の方へと歩きだせば、春奈ちゃんも隣に並んで付いてくる。
『それで、春奈ちゃん。聞きたいことっていうのは?』
「これです」
そう言って春奈ちゃんは胸ポケットから1枚の写真を出して手渡してきた。
受け取った写真を見てみる。
『これは...』
「水津先輩と」
写真から春奈ちゃんへと視線を移せば、困っているような、悲しそうな、怪訝な顔色でこちらを見ていた。
「......帝国学園のキャプテン、ですよね...?」
春奈ちゃんの言うように写ってるのは、だいぶ画素が荒いが、オレンジの雷門中のジャージを来た私と、私服姿の鬼道有人だ。
恐らく、
『御影専農戦の時の...』
「そうです。撮ったビデオの確認をしてたら、引きで撮った観客席に映ってました。これはその1部を拡大して現像してきました」
わー...浮気がバレて奥さんから証拠写真を突きつけられた旦那さんってこんな気分なんかな。
それにしても、よく気がついたな春奈ちゃん。
「あの時、先輩戻ってくるの遅かったですよね。迷子になってたなんて言ってたけど本当は彼に会ってたからなんじゃないですか」
『あー...バレちゃったか』
「やっぱり!」
『間違って観客席の方に出たら出入口に居るんだもんびっくりしたよねー。思わず帝国の鬼道だ!って叫んじゃった』
「...、本当ですか?」
うーん、完全に疑いの眼差し。
「最初から来てるの知ってたんじゃないですか?」
はい、知ってました。そりゃあ知ってて探しに行ったんだもん。
『ホントホント!私を見てゲッて顔した鬼道、春奈ちゃんにも見せてあげたいくらいだったわ。まあビンタされた相手に遭遇したらそういう反応になるんだろうけどさあ』
「...ああ、そういえば、水津先輩思いっきりビンタしてましたね」
ビンタするような間なんだから疑う必要ないか、と春奈ちゃんはぼそっと呟いた。
「あの、おに...帝国のキャプテンと何話したんですか?」
あ、今お兄ちゃんって言いかけた。
一生懸命取り繕って敵の情報を探ろうとしているふりをしているのか見え見えで、くす、と笑ってしまう。
「な、なんですか?」
『鬼道、雷門に気になる子がいるみたいよ』
「えっ、なんですかそれ!?恋バナ!?」
頬を押さる春奈ちゃんの反応にケラケラと笑ってしまう。
「木野先輩の事でしょうか、それとも夏未さん...?」
『さあ、どうだろうねぇ。詳しく教えてくれなかったから』
そもそもそんな話はしてないし。
「も、もしかしたら水津先輩の可能性も...!」
チラリと見てきた春奈ちゃんにナイナイと手を振る。
『私はないでしょ。それこそ春奈ちゃんかもよ』
「あ、それは無いです」
あまりにも真顔で、すん、とそう言うものだから、ブッと吹き出してしまう。
『否定早くて草』
「私のことなんか、気にかけるような人じゃないですよ」
ずいぶんと棘のある言い方をした春奈ちゃんの頭をぽんと撫でる。
「水津先輩?」
『...変なゴーグルしてるから見る目ないんじゃない?』
「ホントですよ!なんなんですかねあのゴーグル!」
『ねー』
どうやら、私と鬼道の事が何やら怪し臭いと思っていた様子の春奈ちゃんの気を逸らすことに成功したようで、そうこうしてるうちに新聞部の部室にたどり着く。
「お疲れ様でーす!」
『お邪魔しますー!』
春奈ちゃんに付いて新聞部の部室に入れば誰もいなかった。
「どうやらみんな出払っちゃってますね!」
『新聞部意外とアクティブだよね』
「取材は足で稼ぐものですからね!」
そう言いながら春奈ちゃんは新聞部での自分の席であろうか所に自身のノートパソコンを置いた。
「今開くんでちょっと待ってくださいね」
うん、と頷いて、適当に椅子を借りて引っ張ってきて、隣に座る。
『春奈ちゃんさぁ、新聞部とサッカー部掛け持ちしてるじゃん?大変じゃない?』
「大変と言えば大変ですけど、サッカー部の事記事に出来ますし楽しいですよ!」
『そっか。楽しいならいいけど』
「はい!あっ、ネット繋ぎましたよ!えーと、フットボールフロンティア...フットボールフロンティア、と」
カタカタとキーボードを叩いて、文字入力をし、検索結果からフットボールフロンティアの公式ページに飛ぶ。
「尾刈斗中の対戦相手、木野先輩に渡したメモにも書きましたけど、出場校の中で最弱って噂があるんですよね」
そう言いながら春奈ちゃんはマウスホイールを動かした。
『最弱かー。でも準々決勝まですすんでるんでしょ?あ、ネット中継、それだね』
はい、と頷いた春奈ちゃんが画面をクリックして生放送画面に飛んだ。
「あっ、もう試合終わってる見たいです!結果は...、えっ!」
画面映っていたのは得点ボードの映像で。
1-0か。
『みんなに伝えに行こうか』
よいしょと席を立てば、はいと頷いて春奈ちゃんもノートパソコンを折りたたんだ。
「大変です!大変です!」
そう言って先を走る春奈ちゃんが、部室のドアをガラガラと音を立てて開けた。
「どうした!」
中でミーティングをしていたサッカー部全員が一斉に入口を見た。
「今、準々決勝の結果がネットにアップされたんですけど...!」
『秋葉名戸学園が1点。尾刈斗中が0点で試合終了』
そう言えば、えっ!?と一同が驚愕したように目を開いた。
「尾刈斗中が負けた!?」
「あの尾刈斗中を倒すなんて...」
「どんなチームなんだよ、秋葉名戸って」
最弱だと聞いていた皆が口々に不安を口にする。
そんな中で目金はメガネのブリッジを押し上げた。
「これは行ってみるしかないようですねぇ!メイド喫茶に!」
今度は皆一斉に、はあ?と声を上げて1番後ろにいた目金を見た。
「秋葉名戸学園とやらがあの強豪、尾刈斗中を破ったのにはきっとわけがあるはず。僕にはそのわけがメイド喫茶にあるとみました!」
そう言いながら目金は円堂の前に立った。
「行きましょう!円堂くん!」
グッと拳をにぎる目金に困惑したようすで、円堂はでも...と言葉を濁す。
「僕達は秋葉名戸学園の事を何も知りません!これは試合を有利に進める為の情報収集なのですよ!ねっ、水津さん!」
いつの間にやら隣に来てガシッと肩を掴まれる。
『そうね。彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず』
「あら、孫子の言葉ね」
流石、夏未ちゃんよくご存知で。
「どういう意味だ?」
「戦において、敵と味方のことを熟知していれば負ける心配はないって意味よ」
「なるほど...よし!行ってみようぜ!」
円堂がそう声を上げると、半数が顔を赤く染めた。
「ええっ、マジかよ」
「単純...」
やれやれと呆れた様子で、夏未ちゃんがため息を吐く。
『春奈ちゃん、出入りしてるメイド喫茶の名前分かる?』
「あ、はい。ちょっと待ってくださいね」
そう言って春奈ちゃんは胸ポケットからメモ帳を出してペラペラと捲った。
「えーっと、あ、コレです。RAI@CAFEって言うお店です」
「ああ、プラモデル屋さんの隣の店ですね」
なるほど。ゲームと場所は一緒か。
携帯電話でRAI@CAFEで調べて、出てきた番号に電話をかける。
『あ、もしもし。お忙しいところすみません。今から13名で向かいたいのですが、はい、はいそうです。あっ、大丈夫ですか?ありがとうございます。はい、名前は雷門中です。それでは後ほどお伺いします。はい、失礼します』
ピッ、と電話を切れば、何故だか男子生徒が一同にこっちを見ていた。
「ぜ、全員で行くのか」
『えっ?行きたくなかった?』
そう言ってきた半田にそう返せば、赤くなっている顔を背けて、いや、そのとかブツブツ呟いている。
「というか、13名って豪炎寺居ないし1人足りないし」
『えっ?私が行くけど』
「はっ?」
えっ、来るの?みたいな顔されてもなぁ。
『引率よ、引率。私一応君らの監視役だから』
「げっ、その設定まだ続いてたんでやんすか!?」
げっ、てなんだね栗松くん。
「そうね、じゃあ水津さん。彼らがちゃんと偵察するよう見張っていてちょうだいね」
『あいあいさー!』
なんて、本当は私がメイド喫茶行ってみたいだけなんだけどね!!
下心無きにしも非ず
いやだって、私が住んでた田舎にはメイド喫茶なんてなかったんだもん。行ってみたいじゃん?