アレスの天秤編
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練習中に竹見が起こした揉め事と言うのは、どうやら私達3人は敵情視察と行って試合を見に行ったり自由にできる事が、どうやら不満だったらしい。
部活や寮の規則に縛られず自分も自由に外出したいということらしいが、恐らく前に話してくれた女の子に会いに行きたいという気持ちもあるのだろう。
竹見には、私達とて自由に外出出来るわけではなくきちんと外出許可申請をしたうえで出かけていると説明すれば渋々といったようすではあったが納得してくれてその日は事なきを得た。
そして、いよいよフットボールフロンティア決勝大会が始まる。
晴れた空にパンパパンと狼煙が上がり、大きく開いたスタジアムの天井へとたくさんの色とりどりなジェット風船が飛んでいく。
《いよいよフットボールフロンティア決勝大会が始まります。今日は決勝進出全チームによる入場行進と宣誓式が行われます》
入場行進の為に整列させられた廊下の壁に映し出されているモニターを見てあれ?と首を傾げた。知らない実況担当だ。今期予選大会の実況をしていた雷門中の角間くんのお父さんである角間王将さんではない。だが、どう見ても角間の血筋だろうな。
《さあ、決勝進出チームのイレブンが入場します!先ずは大会初出場で決勝大会進出を決めた永世学園》
ぞろぞろ、と前の列が進んで行くのに合わせ少しずつ前に詰める。
モニターでは一方的に見た事のある子達がぞろぞろと行進していく。
やっぱりここは勝ち上がってくるよね。なんたってエイリア学園の各チームのいいとこ取り、というか脅威の侵略者編のポジションでいえばFW多すぎて馬鹿の取ってきたバイキングの皿みたいなチームだよね。しかもそれに...、
《地区予選得点王の吉良ヒロトを要する新たなる強豪校です!そしてスタジアムの大型ビジョンでは入場前に撮影したインタビュー映像が流れます》
コイツだ。吉良ヒロト。
実況では観客向けに話されているので触れられないが無論、控えのこちらのモニターにも映像が流れていて、私の知るヒロトと初めて見るグレーの髪のヒロトの姿が一緒に写っている。
ヒロトはヒロトじゃなくてタツヤと言う名前であると言うとは以前調べた時に知っていたが長年の染み付いた記憶のせいでどうにもこちらの赤毛の方をヒロトだと言ってしまう。こればっかりはしょうがない。
それに本来なら吉良瞳子の兄であったはずの吉良ヒロトは弟になっているというこれも中々理解するのに時間がかかった。あまり瞳子監督には似てないように見えるが、まつ毛の感じが少し似ている。
《ああ?何故俺が得点を決められるかって?》
思ってたより随分とチャラいというか不良っぽい感じのキャラなんだなぁ。瞳子監督の弟だからもっとクール系かと思ってたが...
《それは俺がゴットスト》
『え?』
インタビュー動画はそこでぶつ切りにされて、グラウンドの画面へと切り替わった。なるほど、不憫キャラか?
《そして昨年決勝進出となった世宇子中。今年も活躍が期待されますね》
去年のドーピング騒動の事があったにも関わらず、大人に利用された子供たちに罪はないと、サッカー協会会長である雷門理事長が説いてくれたおかげで彼らもまたこうして大会に参加することが許されている。
『それにしても相変わらずアフロディはため息が出るほど美しいな』
スポンサード制でスポンサーネームを入れるのにユニホームのデザインが変わった所も多いが、世宇子中ももれなく変わっているな。前は白と青ベースのユニホームだったが今回は茶色と白のシックな感じのユニホームでより神聖さが増した感じがする。
「水津」
小声で名を呼ばれ、何?と後ろを振り返れば、花咲が前と言うように先を指さした。だいぶ前が進んでた。
『ごめんごめん』
軽く謝って、空いた前方の谷崎の後ろに着く。
またモニターを見れば世宇子中の後は白恋中が行進して行く。
『あ、』
「どうしました?」
後ろを振り返った谷崎に、なんでもないよと返してモニターを見れば、彼が写ったのは一瞬ですぐに吹雪士郎のインタビュー映像に切り替わった。
ここも、本来とは違うチームだよね。吹雪アツヤが生きている。それでアツヤがFWで士郎がDFなのかと思いきや両方ともFWだし、もう訳わかんないよねこの世界。
《会場には昨年の優勝校雷門イレブンが入ってまいりました。前年度王者といえ今年は全く新しいメンバーでの出場と聞いております》
強化委員制度で前年度メンバーは1人残らずちりじりになったからね。
去年の雷門で決勝進出できたのは私を除けば3人だけ、かな。さっきの白恋中に行った染岡と、私達の前に並ぶチーム、星章学園の鬼道、そして私の後ろに並ぶチームの...っと、前がまた進んだな。モニター見るのもこれで終わりだ。
前方の星章学園が行進してグラウンドに入って行った。次は我々の番だ。
王帝月ノ宮の他の子達は緊張とかなさそうだけど、私は自分がさっきの雷門の子達みたいにつまづかないか心配だわ。
フットボールフロンティア大会運営側の係員の指示で、先頭の野坂と西蔭からゲートの先へと進んで行く。
《お!王帝月ノ宮中が姿を表しました》
2列で進んで行く王帝月ノ宮の皆の最後尾は私と花咲が務める。
《これまで予選を完璧なまでの試合運びで制しています。その結果はなんと失点ゼロ!未だ誰にもそのゴールを許していません。星章学園と並ぶ優勝候補となっています!》
モニターには野坂がインタビューを受けた映像が流れ出した。
《王帝月ノ宮は大会初出場ながら鮮やかな大躍進ですが如何ですか?》
《僕達は自分たちの持つ普段通りの力を出しているだけです。別に変わった事は何もしていません》
映像の我らがチームのキャプテンは淡々としてインタビューに答えている。
《王帝月ノ宮はアレスの天秤という教育により育成されたチーム、との事ですが...?》
《僕達のプレイでアレスの天秤が以下に素晴らしいかが分かって頂けるでしょう。人のより高いパフォーマンスを出すことによって、良き方向へ社会を変える。人の歴史を変えることになるでしょう。僕達はそれを証明するため力をつくしているのです》
言葉通り、野坂は本当に世界を変えようとしている。アレスの天秤について副作用等の難点があるから正直、御堂院のやり方だと私は不満があるのだが...。野坂の言う、優勝して注目度を集めた所で御堂院の悪事を発表出来れば、国民たちから疑問視されて研究は中止し子供たちの心を壊す事は無くなるだろう。
腐った大人が作り上げたこの状況をぶち壊す為に、私も野坂も今ここにいる。
そのためには先ず、何がなんでも優勝しなければ。
トラックを1周し中央のグラウンドの中、星章学園の隣に整列する。
《続いて、こちらも本大会初出場、利根川東泉!このチームにはなんと、皆さんご存知のあのキーパーが加入しています。大会にどのような影響を与えてくるのか楽しみです!》
一際デカい歓声と拍手と共にトラックを回った利根川東泉はグラウンドに入って王帝月ノ宮中の隣に整列した。
流石、円堂守。凄い人気だな。
そう思い隣を見れば、同じくチームの最後尾に立っていたこちらを向いてニシシと笑った。
半年ぶりに会ったが相変わらず元気そうだ。
いやここで名前を大きな声で呼んだり、手をブンブンと振ったりする事がなくて良かったよ。それにしてもちょっと背伸びたよね?男子三日会わざれば刮目して見よって事かな。
「宣誓」
サッカー協会会長直々の大会の挨拶が終わり、野坂が壇上に上がる。
選手宣誓って何基準で選ばれたんだろうね。サッカー協会側からの指定だろうけど、前年度優勝校の雷門を率いていて尚且つ3年生で現在も主将やってる円堂じゃないんだよね。アレスの天秤を広めるために御堂院がサッカー協会にウチの野坂を!ってゴリ推してそうだなぁ。
「僕達はスポーツマンシップに乗っ取り正々堂々と戦うことを誓います」
堂々とそれでいて淡々とした野坂の選手宣誓が終わった。
正々堂々、ねぇ。確かにドーピングとかはしてないけどさ。
小さくため息を吐く。
矛盾
その後、試合組み合わせの抽選会も行なわれて初戦の相手が決まり、またため息を吐くのだった。