アレスの天秤編
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雷門スタジアムに来るのも2回目だ。
今日は、フットボールフロンティア予選大会Aブロックの最終戦。雷門中対星章学園の試合が行われる。
1番最初に戦ったはずのこの2校が再戦になってしまったのは、本来の星章の対戦校がインフルエンザで試合を棄権、雷門の対戦校がカンニング発見で部の活動停止になったからだ。
不戦勝でも良かったのではないか、と個人的には思うのだが、観戦チケットの販売など大会運営側にも色々と事情があるのだろう、試合数を合わせる為などという理由が付けられてこの2校が戦う事になった。
「スタジアムグルメ、トゲもじゃやきそば雷おこしサンド」
そう言って、売店から帰ってきた野坂から私と西蔭にとひとつずつパックが渡させる。
「なんですか、そのトゲって」
「さあ?とりあえず君の分はトゲ大盛りにしてもらったから」
「な、なるほど...」
...またフーハラやってるわ。
というかトゲもだけど、雷おこしサンドってなんだよ。
雷おこしってあれでしょ、ポン菓子を蜜で固めたみたいなやつ...。ってことは原料は、米でしょ?米をパンで挟んだ物と焼きそばがセットって、関西かよ。
私は炭水化物に炭水化物平気だからいいけどさ。
まあそんな謎のトゲもじゃやきそば&雷おこしサンドと書かれたパックを膝に置いてグラウンドを見つめる。
スターティングメンバーの発表がモニターに表示された後、試合開始のホイッスルが鳴り響いた。
星章学園ボールでスタートで、鬼道のキックオフからそのまま直ぐに灰崎が、雷門ゴールにシュートを決めた。
『わぉ...』
必殺技なしでか。
超次元世界でなきゃこんな簡単にキックオフシュートなんか入んないぞ。
モニターでアップに映される灰崎はしてやったって顔をしている。恐らく前回の試合で小僧丸にファイアトルネード先制点取られたの根に持ってたんだろうなぁ。
ボールを戻して雷門側のキックで始まるが、すぐさま雷門FW陣を出し抜いて灰崎がボールを奪う。
それからドリブルでMFを躱して行くが、その後ろから先程ボールを奪われた稲森が追いかけて圧をかける。
これまでの灰崎だったらこのままワンマンプレーで押し抜けたであろうが、今は違う。
灰崎は稲森の後ろからボールを通し折尾にパスを渡す。
その行為に驚いた稲森が一瞬走りを緩めた先で折尾は素早く灰崎にボールを戻した。
『へぇ、あの子がワンツーパスか。だいぶ成長したね』
「そうですね。灰崎はチームメイトと連携出来るエースストライカーになりましたね」
確かにそうだね、と野坂も西蔭の言葉を肯定した。
「でも、今日の彼は...」
そこで言葉を止めた野坂を西蔭は、ん?と不思議そうに見つめるが、彼からその続きは発せられなかった。
今日の灰崎か。再び彼に視線を戻せばゴール目前で岩戸と万作に行く手を塞がれているところで、折尾がこっちだと合図を送るも無視してターンでディフェンスを避ける。
そして大きく飛び上がった灰崎はシュートを撃った。
「パーフェクトペンギン!」
その技は、鬼道及び帝国学園が使う皇帝ペンギン2号や灰崎自信が使うオーバーヘッドペンギンと同じようにどこからともなくペンギンが現れ、ボールに食らいついたそのペンギン達はひとつの大きな金に輝くペンギンへと姿を変え、雷門ゴールへと飛んで行った。
キャッチしようと正面から挑んだのりかちゃん共々ボールはゴールへと突き刺さった。
その後もセンターからのキックボールを直ぐに奪って、ひとりで駆け上がった彼はオーバーヘッドペンギンでのりかちゃんのウズマキ・ザ・ハンドを打ち破ってまたも点を決めた。
「雷門はここまでのようですね」
「ふふっ、そうかな?星章の計算が間違ってなければいいのだけれど」
野坂が愉快そうにフィールドを見つめる中、ホイッスルが鳴り試合がセンターから再開される。
またもボールを奪いワンマンプレーで駆け上がる灰崎を見つめる。
『あの子は、なんであんな怖い顔してサッカーしてるんだろうか』
「怖いですか?」
聞いてきた野坂にうんと頷く。
『あれは勝気や闘争心からくる顔ではないでしょう。もはや殺気』
雷門陣を睨みつける彼の目は、狂気そのもの。
そんな灰崎がゴールへと放ったシュートに、稲森が体当たりでボールを止めた。
この子、前に見た試合でもFWなのにDF位置まで戻ってカットしてたよね。ガッツあるなぁ。
そのままハーフタイムに入るまで稲森がボールを守り何とかこれ以上の点は入れさせずに前半戦を終える。
そう言えば、試合見るのに夢中になって、トゲもじゃやきそば忘れてたな、とパックの蓋を開けてみる。
わぁお、焼きそばになんか赤い撒菱みたいなの入ってる。焼きそばの右にある雷おこしサンドも見た目の異質感がやばいな。
いただきますと手を合わせ割箸を割る。
とりあえず箸でトゲを掴んでみる。あっ、これ紅しょうがだわ。でもわざわざなんで撒菱型に...。
ふと、ハーフタイム中のフィールドを見れば、星章学園の佐曽塚が天野を小突きながらベンチに戻っていくところだった。...彼か!トゲが佐曽塚の赤いトゲトゲ頭で、もじゃが天野のモジャキャッチ。
『コラボフード的な』
「どうかしました?」
『いやオタクの心情をよく分かった上での、売店の経営してんなと思って』
今回の試合は、ただのサッカーファンもだろうが各チームを推している、雷門のファンと星章のファンも見に来ている。そういった点で、雷門をイメージした雷おこしと星章学園をイメージしたトゲもじゃやきそばを合体して売ればどちらのファンも買ってくれる、と。
『凄い経営戦略だな』
「もしやその戦略にサッカーの戦術に通ずるものがあるのでは。それで野坂さんはこれを...」
「ふふっ、それはどうかな?」
『あー、うん。そこまで考えないでしょ』
期待の眼差しで野坂を見つめる西蔭の手には大量のトゲが乗せられた焼きそばがまだ半分残っていた。
皇帝のブランチ〜トゲもじゃやきそば&雷おこしサンド〜
正直、雷おこしサンドはパンと雷おこしをバラバラにして食べた方が美味しいとおもった。