アレスの天秤編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『ここに来るもの久しぶりだなぁ』
雷門中対帝国学園の試合は帝国スタジアムで行われる。
今日も今日とていつものメンバーで偵察に来ているわけだ。
『2人共、先に席に行ってて』
「水津さんは?」
うーん、察して欲しかったな。
『御手洗』
そう言えば、お供しますと西蔭が言ってきた。うん、やっぱりか。
「西蔭、女子トイレの中までついて行ったらダメだよ」
「行きませんよ!?」
野坂の言葉に何言ってるんですかと突っ込んでいるけど、君ならストーカーが待ち構えているかも知れませんとか言って入りそうだよ。
西蔭を連れてトイレに向かって、表で待っているように言って中に入って、用を足して出てきたわけだが...。
なんか知らないが、トイレの前で西蔭と星章学園の灰崎凌兵が睨み合ってる。
『西蔭、何してんの?』
「灰崎!人様に迷惑をかけるんじゃない」
私が西蔭に声を揃えて掛けたと同時に聞き覚えのある声が灰崎の後ろから聞こえた。
それから声の主が灰崎の元につかつかと歩いてやってくる。
『やっほー、鬼道』
「ああ、水津か、久しいな。すまんなうちの灰崎が」
そう言って灰崎の隣に立った鬼道有人にいやいやと手を振る。
『まだ何もしてないでしょ、ねっ、西蔭?』
キミからも手を出したりしてないよね?の意味を込めて目を細めて西蔭を見る。
「え、あ、はい」
「なんだ鬼道、王帝月ノ宮のデカチチと知り合いなのか」
灰崎の言葉に、3人とも一瞬固まった。
『.........、デカチチ』
なんだそれ私のあだ名か...?
「灰崎...」
「おい」
鬼道が呆れたように呟き、元ヤンが隠しきれてないドスの聞いた低い声で西蔭が灰崎を睨むので、ステイステイと止める。
「しかし、」
『いいよいいよ、昔散々からかわれてもう慣れたから』
遠い目をして、遥昔の中高生だった頃を思い出す。うん、男子だけならず女子にも散々からわかれたからな。今ならもうドヤってやるところだけど、あの頃は思春期だったからすっごい嫌だったけどな!!!
「すまん水津。こいつは見たままをあだ名にする癖があってな」
『うん、フォローになってないよ鬼道』
「そ、そうか、すまん。その、後でよく躾ておく」
『そうしてちょうだい』
この先、他の女の子に失礼のないようにね。
『で、鬼道はやっぱ出身校が気になって見に来たの?』
トイレの前だと邪魔なので、観客席に向かって歩き出せば隣に鬼道が並び、我々の後ろに西蔭と灰崎が付いてくる。
「ああ。水津も知っていると思うが、影山の奴が監督として戻っているからな...更生したとは聞くが、あの男の事だ何が起こるか分からん」
『そうね。またボルト落ちてないか探す?』
「縁起でもないことを言うな。と言いたいが、一応帝国学園のスポンサーでうちの会社が入っているからな、そこの辺りの点検は徹底的気に行わせている」
鬼道重工だっけ帝国学園のスポンサー。スポンサードのおかげでおかしなことはしにくくなってると思いたいけどなぁ。影山さんだからまた突拍子のない事してきそう。
『悪どい事さえしなけりゃあの人優秀なトレーナーなんだけどなぁ』
「まあ、否定はしない。ところでお前の方はどうだ?」
『順調に勝ち進んでるよ』
そう言えば、それは知っていると返される。まあ、鬼道が言いたいことはアレスの天秤の事なんでしょうけど。西蔭がいる手前下手なことは言えないし、ここはあえてスルーで。
『月光エレクトロニクスでフリスタの大会も開いてくれたし、結構高待遇よ?』
勘のいい鬼道は、一瞬西蔭を見て何か察したように、ああ、と頷いた。
「そう言えばサッカー雑誌に載っていたな。優勝したんだろう。おめでとう」
『ん、ありがと。まあでも、あの規模の大会で優勝してもねぇ』
で、灰崎はなんで背中に穴が開くぐらいガン飛ばしてきてくれてんのかなぁ。前に会った時もめっちゃ野坂の事、睨みつけてたよね。なんかしたかな。
『と、私ら席あっち側なんだ』
「そうか、俺たちは向こう側だからここまでだな」
互いに自分達の指定席のある方の通路に立ち止まる。
「次会う時は本戦でだな」
現状の成績で言えばうちも星章も本戦出場ほぼ確定だろう。
『そうね』
「いいか!お前らをぶっ倒すのはこの俺だ!!」
灰崎が鬼道の後ろから急に割り込んできた。自己主張の激しいこと。
『そう』
灰崎に構うと面倒くさそうなのでスルーすれば、彼は眉をひそめた。
「そうってお前...普通もっと言い返したりとか煽り返したりすんだろ!!」
めんどくさい子だな。悪いけどこっちは、灰崎に噛みつかれる謂れがないんだけど。
無視をして鬼道を見れば彼もまた怪訝そうな顔をしてこちらを見ていた。なんでだ?
「水津さんそろそろ」
西蔭に声をかけられ、スマホの画面を見てみれば、もうそろそろ試合開始時刻になりそうだった。
『そうだね。じゃあね鬼道』
「ああ...」
バイバイと手を振って歩き出せば、西蔭が隣に並んだ。珍しい。いつもは後ろ歩くのに。
「ピッチの絶対主導者、鬼道有人ですか」
『うん』
「随分と親しいんですね」
『うん?』
えっ、何それ何か深い意味あるのか??野坂以外の王帝月ノ宮中のメンバーは御堂院の部下というか監視官の可能性があるからな...なんか疑われてんのかな。西蔭に関しては野坂厨だし、監督に対しても無能だとかゴミとか言ってるのをよく聞くからエレクトロニクス社の手先だとは思えないんだけど、それがフェイクの可能性もあるしなぁ。
『鬼道とは...、そうね、野坂との関係みたいなもんよ?』
「野坂さんとの関係...と、言うと」
『それこそ全体ミーティングとは別に対戦相手のデータ見て作戦会議したりとか、練習スケジュール組んだりとか』
「...なるほど」
鬼道はフットボールフロンティアの後半から雷門に転入してきて、スペイン戦後直ぐに強化委員として散ったわけだから実質数ヶ月しか居なかったし、そう考えると他の雷門のメンバーとも半年くらいしか一緒に居なかったよなぁ。アニメとかゲームを見てたせいで私は一方的に、勝手に、10年来の思い出があるわけだけど。
『そう思うと君らとも半年一緒にいるんだよね』
「そうですね。来られたのが2学期の終わり頃でしたので大方そうだと」
そりゃあ、円堂達と同じだけの時を過ごしてたら王帝月ノ宮の子達にも愛着湧くはずだわ。
『うん。王帝月ノ宮の皆で優勝しようね』
「なんですか突然。当たり前ですよ」
『そっか。ならさっきの灰崎の売り言葉買ってあげればよったかな』
何てですか?と西蔭が首を傾げた。
アウトオブ眼中
って。
態度で言ったようなもんでしたよ、と西蔭に言われてそれはそうかもと納得した。