アレスの天秤編
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フットボールフロンティア予選Aブロック 雷門中対美濃道山中の試合は雷門スタジアムで行われる。
私は強化委員の壁山のいるチームと新生雷門との試合というのに興味があるので、一応偵察と銘打って試合を見に行くけど、と野坂に伝えたところ、彼も西蔭と共に観覧に行くと言うことだったので、一緒になってやって来た。
そういえば2日ほど前にうちの学校も予選の1試合目があったが、まあ名も知らぬ学校で強化委員もいない学校で余裕の勝利だったので割愛させて頂く。
「梅雨さんが通っていた学校のスタジアムなんですよね」
『私らの時はこんな立派なスタジアムなかったよ。そもそも、最初はグラウンドすら貸して貰えない部だったしねぇ』
この間、杏奈ちゃんに教えてもらったスタジアムへの道を野坂と西蔭を連れて歩きながら、いやいや、と手を振ってそう伝える。
河川敷まで秋ちゃんや春奈ちゃんとボールカゴやらタオルやらドリンク持ってってよくやってたなぁ。まあそれでも本戦入ってからはグラウンド貸してもらえるようになってだいぶ楽になったけどね。
スタジアムの観客席に入ると、予選だというのにそこそこお客さんが入っている。
野坂が変な座り方をするので、迷惑にならないよう人のいない席を目指して歩いていくと、前方から青いブレザーを来た灰色のロン毛少年が歩いてきて目が合った。
『あ、この子...』
「星章の灰崎ですね」
「うん」
灰崎は我々の前でピタリ、と足を止めて、前髪で隠れていない方の目でじろりと野坂を見た。
「王帝月ノ宮の野坂悠馬。こんなローカルな試合に戦術の皇帝さんがお出ましとわな」
「ちょっと興味深いチームだと思ってね。君もここにいるということは雷門に興味を持ったんじゃないかな?」
野坂の言葉に、灰崎はふんと鼻を鳴らした。
「暇だったんだよ」
と、灰崎は通り過ぎざま言って去っていった。
どう見ても不良っぽい子が、暇だからってわざわざ足を運んでまで見に来るかな、自分達が打ち負かしたチームを。
「水津さん行きますよ」
いつの間にやら野坂と西蔭は歩き出していたようで、立ち去る灰崎の後ろ姿を見ていたら西蔭に声をかけられた。
『ああ、うん。行くよ』
くるりと向き直って、2人について歩き出す。
「灰崎くんの事が気になるんですか?」
『んー、いや。面倒くさそうな子だなと思って』
なんか遠回しに野坂に嫌味を言っていたし、なんかあるんだろうなあの子。
選手としても試合に気が向いた時にしか出ないという話もあるし、鬼道は手を焼いてそうだな。
野坂も西蔭もだが、王帝月ノ宮は他の子も真面目でいい子ばかりなので手がかからない。
「そうですか」
あまり興味ない、と言った様子の返事をして、野坂はそのまま無言で歩き出す。なんで聞いてきたんだ。
《鉄壁の守りで泥棒もヘコむ!セキュリティのHECOMです!》
スタジアムのモニターから選手を起用したスポンサーのCMが流れ出す。
《美濃道山中を応援しています》
守備の強いチームにセキュリティ会社のスポンサーとはわかりやすい。
《そうだ、今日行こう。感動の旅へ》
続けて別のCMが流れ出した。
こちらは選手起用のない、至って普通のCM。
《ISLAND観光は雷門中を応援しています》
そんなCMを聞き流しながら、人気のない一角に到着した。
「さあ、雷門中対美濃道山中。雷門にとっては背水の陣。勝ち点を上げなければ本戦進出は絶望的です!」
実況を聴きながら席に腰を降ろす。
やっぱりいつもの事ながら野坂は椅子の背の方に座って、西蔭は控えるように野坂の後ろに立っている。
「対する美濃道山には、チームの実力を上げるために派遣されているサッカー強化委員がいます!」
実況の声と共にモニターに大きく壁山のライセンスカードが表示されている。
壁山がサッカー強化委員として、どんなチームに貢献してきたのか、楽しみだよね。
「元雷門イレブン壁山塀吾郎!!本来なら強化委員は出場もできる所、壁山は昨日うっかり足首を捻挫してしまったということです!」
え、ええ...。
『壁山...』
マジかと頭を抱える。そんなことある??まあどう見てもその巨体を支えられる足首の太さしてないもんね...。捻挫するわそれは。
「さあ、キックオフです!」
ホイッスルが鳴り、雷門のボールから試合が始まる。
スタートして直ぐに駆け上がろうとした雷門を前に、美濃道山中はフィールドに選手一同が横一列に並ぶ異様な陣形を取った。
これが、美濃道山の要塞と呼ばれる首尾陣形か。
その美濃道山に雷門の小僧丸がボールを持って切り込んで行きかけて足を止めた。彼だけでなく雷門の選手達が足を止め、腕に着けているイレブンバンドを見ていた。
どうやらあのよく分からない監督からの指示が入ったようで、小僧丸は稲森にボールをパスし、その稲森に美濃道山の11番が向かい、稲森は剛陣へとパスを回す。
トラップでボールを受けた剛陣に美濃道山の5番が勢いよく突っ込んでいきボールを奪った。
美濃道山中は全体的にタッパのある選手が多い。このように力技でぶつかって来られたら雷門側は不利だ。
それからも雷門選手たちが美濃道山からボールを奪い返しても、フランケン守タインやもっこり丘のモアイという必殺技に阻まれ続け雷門FW陣は攻めあぐねていた。
しかし、雷門全員で攻めに行かないところを見ると、監督の指示で守備をしているのだろうけど、美濃道山も守り雷門も守りで試合がまったく動かない。
そのまま0対0で前半戦が終了する。
「梅雨さんの情報通り、本当に守備しかさせないね、あの監督」
練習の様子を見て帰ったがパスとトラップを永遠とさせてたんだよね。
私が密偵と思われて、警戒してその日は守備練しかしなかったのだろう、とも思ったが、どうにも違うようだ。
「しかし、雷門はここで勝ち点を上げなければ予選敗退となりますよ」
『そうなんだよね』
西蔭の言葉に頷く。
だからこそ、選手達はどうにか点を取りたいはず。
『でもここで焦って今の陣形を崩して、全員で攻め上がれば美濃道山の思うつぼでしょう』
事前情報通りであるなら、得意守備で圧倒した後、焦って全員で攻めてきた相手側の隙をついて点を取るというのが美濃道山のゲームスタイル。
だから、と言って雷門は今のままでは点が取れないが。
「雷門のあの監督が後半どういった指揮を取るのか、見物だね」
野坂の言葉に、雷門側のベンチに目線をやる。
試合前半はあの監督、カンフーのポーズを取りながらタブレット弄ってたけど、この間の練習の時の様子からして絶対ゲームしてた。
後半はちゃんとした指揮が見れるのかな...。
謎の監督
他のチームの監督たちは元プロだったり、サッカー経験者だったりするんだけど。趙金雲。調べてみたけど何者か全く分からなかったんだよね。