アレスの天秤編
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フットボールフロンティア、Aブロック予選、第1試合。
星章学園対雷門中。
試合は星章学園スタジアムで行われる。
《雷門中と星章学園の面々がフィールドに散っていきます》
実況の声を聴きながら、私は野坂、西蔭と共に他の観客の居ないスタジアムの一角でその様子を見ていた。
最初、この対戦カードを見た時に驚いた。何故なら私を含む雷門サッカー部は皆各地に飛び現在サッカー部はメンバーが居ないはずだった。それなのに、フットボールフロンティアへ参加していることへの驚きだった。
《雷門は昨年とはメンバーが一新しています》
実況の言うようにメンバーが違うのでフィールドに散る彼等を見ても、誰?の一言である。
対戦カードを見たその日に海外に出ている夏未ちゃんに連絡を取って訊ねたのだが、どうやらスポサード性により存続できなくなった伊那国島のサッカー部を雷門中の校長が転校生として受け入れたらしい。無論理事長も許可済みであると。
しかし、そもそも雷門中も活動停止していた筈だからスポンサーがついていないのだが...その辺はどうなっているのだろうか?前年の優勝校として特別免除でもあるのだろうか。
そう言えばユニホームも変わっているようで、どちらかと言えばイナズマイレブンGOのユニホームに色味は近いんじゃないだろうか。
「前年優勝校の雷門中ですか」
ふむ、とベンチの背もたれに腰掛けて野坂がフィールドを見下ろしている。
最初こそ、その座り方なんなん?と思っていたがこの数ヶ月、王帝月ノ宮で過ごしたせいか慣れてしまった。
『優勝時の雷門選手は1人も居ないけれどね』
「サッカー強化委員...水津さんのように各地に散っているんでしたね」
西蔭の言葉にそうそうと頷く。
西蔭も西蔭で座ればいいのにわざわざ野坂の後ろに控えるように立っているが、まあこれも見慣れてしまった。
『だから正直なところ未知数だよね』
本来なら元々スポンサーがつかないようなチームが雷門の名を背負うに値するとは思わないが、だが、ここがイナズマイレブンの世界である限り初代にしろGOにしろ雷門中は物語の始まりの学校である。何も無い事はないと思うんだよね。何より相手が星章学園。
雷門から目線をずらし、星章側のフィールドに目を落とす。
《星章学園は練習試合のランキングレースでは帝国学園を破り1位の座を獲得しています》
どうやら今日は試合に出ては居ないようだが、この星章学園には強化委員として鬼道有人が行っている。
あの帝国学園の司令塔だった鬼道有人だ。彼が強化委員としている星章学園対雷門中は正に第1話の帝国学園対雷門中を思い出す。ようするに、この新しい雷門中も試合の途中で何かが起こり得るのではないか、と思っているのだ。それと、少し引っかかるのはアイツ...神代が言っていた野坂は主人公と言う言葉だ。イナズマイレブンの主人公というとことを神代が指しているのであれば尚更雷門中では無い野坂のことを何故そう言ったのか疑問である。
「星章学園にはフィールドの悪魔も居ますし、正直前年度のメンバーが残っていない雷門中では相手にならないのでは」
「そうだろうね」
『どうだろうね』
西蔭の言葉に野坂は頷き、私は疑問を投げ返す。
「アレスの予想では、星章学園が勝ちとでてますよ」
野坂の言葉にうん、と頷く。
『それこそ10対1ぐらいで星章学園が勝つんじゃない?』
「水津さんも星章学園が勝つと思っているじゃないですか」
『そりゃあ得点はね』
そう言えば、野坂も西蔭もわけが分からないと首を傾げた。
『とにもかくにも先ずは試合を見てみようよ』
ホイッスルが鳴りキックオフ、雷門中ボールで始まり速攻で攻め上がっていく。
雷門の9番、褐色肌に紫の髪の少年が星章の8番、赤いトゲトゲ頭を避け、9番、湊鼠色の髪の美少女のような少年のスライディングを躱す。確かこの美少年は早乙女くんといったか。うちの野坂と西蔭もそうだが、顔のいい選手のプレカが高額取引されているとオタ界隈で聞いた中に人気のある子として画像を見せて貰ったことがある。
さて、駆け上がる雷門の9番はすぐさまマークに着いた星章MFの6番と7番の間にボールを通して雷門の11番にパスを回した。
《稲森切り込んでいく!!》
ふむ、実況によるとこの鉄腕アトムみたいな髪型の少年は稲森くんと言うらしい。
彼は星章DFの3番と4番をフェイントで避け、更にボールを奪いにきた紫髪の10番と青髪の5番をギリギリまで引き付けてからバックパスを出した。
それを受け取った、11番の小柄でふくよかな少年はどんどんと敵陣に切り込んいく。
『へぇ』
この新生雷門は初代雷門の初期と比べれば、圧倒的にサッカーの技術はあるように思える。まあアレは練習してないサッカー部7人に助っ人を色々寄せ集めたチームだったからというのもあるが。なるほど、雷門サッカー部として校長が受け入れを許可したのはきちんとサッカーチームとして機能している子達だったからか。
しかし、更に面白いことが起こりえた。
このぽっちゃり少年はふん、と力強く踵でボールを空中に蹴りあげた。それから身体を大きく捻りながら中へと上がっていく。その周りには何処か見覚えのある炎の渦が出来ている。
「ファイアトルネード!!」
蹴り落とされた炎のボールは、ゴール前の選手の顔面スレスレを走りそのままゴールネットへ突き刺さった。
《なんとー!予想外の展開だぁ!!ランキング1位の星章学園になんと新生雷門中が先制!!雷門イレブンも嬉しそうだ!!》
『ファイアトルネード...』
「豪炎寺さんの必殺技ですよね」
野坂の言葉に、ああと頷く。
『今までも御影専農の改くんとかも使ってたけど...』
雷門中のFWとしてわざわざファイアトルネード特訓したんだろうか。
じっとフィールド内の新生雷門の子達を見ていれば、点を決めた小僧丸?に駆け寄って声をかけあっていた。
「彼らの目...」
ふとフィールドから目線を外し隣に座る野坂を見やる。彼は手の甲に顎を乗せてじっとフィールドを見下ろしている。
「それがどうかしましたか?」
「サッカーをやって彼らは楽しんでいるの?」
「それはないでしょう」
「だよね」
野坂の純粋な疑問に即答する西蔭とそれにやはりと言った様子で返すやり取りに、嗚呼...と零す。
「梅雨さん?」
『いや、なんでもないよ』
悲しいかな、彼らに取ってサッカーはただの手段である。
いや、現状私も人の事を言えないし、それに今の王帝月ノ宮でやるサッカーが楽しいか、と言われれば正直言葉に困る。
でもきっと少なくとも今フィールドで喜んでいる新生雷門の子達は楽しんでいるはずだ。
ホイッスルが鳴り星章学園ボールで試合再開する。
先程顔面スレスレにボールが通った灰色の長髪の少年、フィールドの悪魔という2つ名で有名な星章の11番、灰崎凌兵がボールを持って駆け出す。その周りを囲うように星章選手達が走り陣形を作っていく。
そして灰崎はニヤリと笑った。
「デスゾーン開始」
その言葉と共に。
フットボールフロンティア開幕
始まりの必殺技。
さすが鬼道の後輩。悪どい顔が良く似合う。