アレスの天秤編
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1日経て無事退院して、王帝月ノ宮の寮へと帰ってきた。
病院であれだけベットでゴロゴロしていたのだけれど、なんとなく自分のベットに横たわる。うん、やはり自分のベットが落ち着くな。
『あ、そういえば』
病院にいる間、スマホを触ってなかったなぁ、と思い立ち上がる。この監視されている学園の寮では、まあ流石に部屋の中まで監視カメラがある訳では無いけれど、電子機器が使用されたら電波探知されバレるらしい。月光エレクトロニクスの技術恐ろしいな。
私はサッカー強化委員特権で教員に許可を取れば、使用が許されているので、許可を取りに行こうと、部屋を出た。
寮の廊下を歩いていると反対側から丘野と花咲が並んで歩いていて、こちらに気がついた花咲がよう、と手を上げた。
『おー、丘野に花咲』
「なんだ、水津元気そうだな」
「病院から戻ってきたって聞いたから今、部屋に様子見に行こうとしてた所だったんだが」
『あ、そうだったの。全然元気だよ。1日入院してたのも様子見でだったし』
そう言えば丘野が、そうか、と頷いた。
「西蔭から聞いたがストーカーだったんだろう。犯人捕まっていないし心配だな」
『そうね。またいつ現れるかわからないしねぇ』
ヒトならざる者故に、警備も余裕で抜けてくるし、監視カメラもあの襲われてた時間帯だけ砂嵐の様になっていて映像が見れなかったらしいし、神出鬼没で捕縛不可と考えた方がいい。
「同じクラスだしな、学園では俺たちが極力共に行動を取るようにしよう」
『それは...、助かるよ。ありがとう』
丘野も花咲もガタイがいいし、まあ普通のストーカーならこの2人が傍にいれば近寄り難いだろうね。まああの神代には関係なさそうだけど。
『けれど、アイツ野坂と西蔭と居た時でも平気で現れたし、2人といる時にもし遭遇したら全力で逃げることを優先して欲しいな。今回のことで相当やべぇ奴ってのは分かったからね』
「そうだな。あの西蔭も一撃で沈められたと聞いた」
あのって何だろう。まあとりあえずアイツは超次元の世界でも更に次元が違う存在だしなぁ。ただの中学生がどうにか出来る相手ではない。
「で、そんなストーカー被害にあったばかりなのに水津は1人で何処に行くつもりだったんだ?」
『あー、スマホの使用許可貰いに行くとこだったの』
「強化委員の仕事か」
『そうそう』
丘野と花咲は互いに目配せをして頷いた。
「なら、寮長の元だな」
「行くか」
そう言って、2人は私を挟む様に並んだ。
『ははっ、いいね。##RUBY#騎士#ナイト##従えてるみたいだわ』
まあそれを思う前に、一瞬頭に35億というネタが過ぎたのは内緒だ。
「わけのわからないことを言ってないで行くぞ」
『はいはーい』
2人に付き添ってもらい無事に寮長をしているエレクトロニクス社の者に許可を得た後部屋まで送ってもらって帰ってきた。
ばふ、と再びベットに横たわってからスマホの切っていた電源をいれた。
メールやメッセージアプリの未読数が幾つか表示されてて、電話も1件入ってる。
電話は誰からだろうかと、着信履歴を見てみれば夏未ちゃんからで、考える間もなく受話器のマークを押した。
1、2、3、4回目のコールで電話が繋がった。
『もしもし?』
「はい、雷門です」
『夏未ちゃん、』
久しぶりに聞いた、凛としたその声になんとなく心落ち着いた。
「水津さん、よかったわ連絡ついて。王帝月ノ宮の寮生活は本当に監視が厳しいのね。今までの貴方なら数分もせずに返事が来てたのが全く来なくなるんですもの」
そう言って夏未ちゃんが電話越しにすくすくと品良く笑っているのが聞こえる。
『うん。強化委員の仕事もあるし3日に1回くらいは触らせてもらえるんだけどね。ちょっと今朝まで入院したりしててね』
「入院って、貴女怪我でもしたの?」
『んー、いや王帝月ノ宮は定期検診があってそれの入院だよ。ピンピンしてる』
そう嘘の情報を言えば、電話越しに夏未ちゃんはホッと息をついた。
「そうよかったわ。入院と言えば隣町の傘美野中に強化委員で行ってる半田くんも、入院してるらしいのよ」
木野さんから連絡があって、と続ける夏未ちゃんの声に、数日前のあの光景が蘇って見えて、嗚呼と胸を押えた。
「幸い大した怪我ではなかったそうだけど、練習試合でサッカー部全員病院送りになったらしいのよ。水津さんも気をつけるのよ」
それ、私らのせいだよ。思っても口には出せなかった。
『ああ、』
きっと夏未ちゃんも、彼女に連絡した秋ちゃんも、試合相手が私のいる王帝月ノ宮だと知らないのだろう。秋ちゃんと連絡した半田があえて言わなかったのかな。半田はいいやつだから、私に気を使ったのかもしれない。
「ねぇ、水津さん。貴女、大丈夫?」
『え?』
「私の気のせいだったらいいのだけれど、何だか元気がないような気がするから...」
『そんな事ないよ。フットボールフロンティア優勝目指して頑張るぞい!って感じだから!』
「もう、なによそれ」
くすくす、と笑う夏未ちゃんの声を聞いて、本当にね、と小さく零す。
「何か言って?」
『ん、ああなんでもないよ。それより結局夏未ちゃんメールとかじゃなくてわざわざ電話してきたのって何だったの?』
電話の奥の声が、しんと鎮まった。
「貴女、メッセージ類は見ずに電話してきたのね」
『うん?使用許可もらって、いの一に電話したからね。わざわざ電話してくるくらいだから急ぎ要件かな、と思って』
そう、と言って夏未ちゃんが、ため息をつくのが聞こえた。
「じゃあ、なんにも聞いてないのね」
『何を?』
「来週海外に発つわ」
一之瀬と土門の事...は違うよね。2人は強化委員の話が決まったあと割と直ぐにアメリカのユース参加が決まって、もうとっくにアメリカに発ったし。って事は夏未ちゃん自身の事かな??
『...ご旅行?』
「違うわ。私も雷門中サッカー部の一員として、強化委員として何か出来ないかと思って。そこで海外のサッカー情勢を調べて来ることにしたのよ」
『へぇー。...??は??』
つまり、海外のデータ集めに夏未ちゃんが自ら調べに行くって事で、まあ、それはイナズマイレブン3をやったから分かる。夏未ちゃんはそういう子だしきっと1人で海外に出掛けても上手くやるだろう。でもそれは雷門中サッカー部のメンバーが日本代表に選ばれていたからだし、学校にサッカー部が残っている状態でもあったからだ。
『雷門中はどうするの、夏未ちゃん理事長の娘でしょ』
夏未ちゃんまで離れてしまったら、いよいよ雷門中サッカー部は誰もいなくなってしまうじゃないか。
「学園の事は生徒会の後輩、貴女も手伝いにくるから知っているでしょう。神門杏奈さんに生徒会長の引き継ぎを終えました」
神門杏奈ちゃん。1年生で生徒会役員になってる子だ。モブにしては偉く可愛い子だなと思って記憶にある。確か礼儀正しいいい子だった。
『それはまあ彼女なら任せても大丈夫だろうけど、サッカー部は...』
「サッカー部は、円堂くんや木野さんのクラスメイトの大谷つくしさんが部室の管理を申し出てくれたから彼女に任す事にしたわ」
大谷つくし...ああ。ゲームで出てくる可愛い子だ。確かチームにスカウト出来る子だよね。
『そっか...』
いくら優勝校と言えどメンバーが全員居なくなったサッカー部に人が集まるとも思えないし、また円堂と秋ちゃんがサッカー部を設立する前のようになりそうだなぁ。
『夏未ちゃん、いつ発つの?』
「今週の水曜日よ」
『すぐじゃん』
もっと早くに連絡して...って私の方が簡単に連絡見れないんだったわ。
『飛行機何時の便?』
「あら、見送りは結構よ。平日の昼だしみな学校の授業があるでしょうから全員にそう伝えてあるわ」
『そうなの...』
そもそも王帝月ノ宮じゃ休んで見送りに行くのは許可が降りないだろうなぁ。
「別に今生の別れという訳でもないのだからそんな残念そうな声を出さないでちょうだい。それに、またこうやって連絡を取り合えばいいのだし」
『確かに。まあ、そもそも王帝月ノ宮にいる間じゃ夏未ちゃんが日本にいても簡単に会いに行ったりできないし、あまり変わらないか』
「そうよ。とにかく、私がしっかり世界の情報集めて来ますから、貴女は強化委員として日本のサッカープレイヤーのレベルを高めることに務めなさい。私の集めてきた情報が無駄になるような事は許しませんからね」
『ふふ、頑張るよ』
「ええ、それじゃあ、また連絡するわ」
『またね』
ばいばい、と通話を切って、ため息を吐く。
世界に通用する選手を育てるか...。それどころか他のチームの選手を傷つける様なことをしてるなんてね。
ああ、いや、野坂との約束でグリッドオメガはやると決めた。極力は使いたくないが、どうしても上からの指示で使わないといけない場合に、最小限の怪我で相手を戦闘不能にする、選手生命に関わる致命的な怪我をさせない為にもグリッドオメガの精度をあげようという話しで落ち着いた。
逆にこのグリッドオメガを攻略してくるチームが出てくれば、日本の選手達のレベル上げになる、かもしれないな。
『とりあえず半田には謝罪文を送っとこう』
そう思って、メッセージアプリを開いたら、半田からのメッセージが1日前に届いていた。
そこには、「水津のあの顔、ああなると思ってなかったんだろ?みんな大した怪我もなかったしあんまり気にすんなよ!」と送られていた。
気遣いのできる男じゃん。本当に半田はいい奴だな。
ごめんねとお大事にを送って、何だか疲れたので、他のメッセージも幾つか来てたがまたにすることにして、スマホを置いて眠った。
バラバラに崩して
6限全ての授業が終え、花咲と丘野と並んで部活に向かう。1度自室でジャージに着替えた後、2人のボディーガードと共に練習場に踏み込めば、ストーカー被害大丈夫でしたか?と葉音や谷崎が声を掛けてくれた。
大丈夫だよと返せば、それぞれ練習の準備に向かった。
『ドリンク準備するか』
「そうだな」
各自のデータによって決められた分量のドリンクをそれぞれが作るのだが、人によってはスポーツドリンクだったりプロテインドリンクだったりする。
ちょうど、野坂と西蔭も作ってるようだ。
『野坂、粉それ貰っていい?』
恐らくもう粉を入れ終わって水の入ったボトルを揺らしている野坂に、スポーツドリンクの粉末の大袋を指して言えば、野坂は我々3人を見て、先輩方お疲れ様です、と言った。
「梅雨さんは今日からしばらくプロテインの方ですよ」
そう言って野坂が練習プログラム用の紙を渡してきたのを受け取ると、そこにきっちりプロテインの量が記載されていた。
『うげ、プロテインあんまり美味しくないんだよね』
「我慢して飲んでください」
『ココア味のやつとか買ってくれない?』
「それは監督にでも直談判しに言ってください、梅雨さん」
ボト、と芝に硬いものが落ちる音がして振り返ると、すごく驚いた様な顔をした竹見がこちらを見ていて、その足元には作っていたであろうドリンクのボトルが転がっている。
それだけじゃなく、竹見以外の普段感情の起伏が薄い他の子たちも、は?と口を開けて、野坂を見ていた。
「の、野坂くんが水津先輩の事名前で呼んでる!?」
『...ん?』
あれ、そう言われれば今、梅雨さんって言ってたな。あまりにもすんなり言うものだから全く気づいてなかったが。
野坂を見れば、みんなどうしたの?といった顔をしていて...というか君の横の西蔭凄い顔してる。西蔭は野坂厨みたいなところあるから多分付き合いが長い君より先に名前呼びしてることにショックを受けたのだろうな...。
「あれ、名前呼びダメでしたか?前に本で親しくなるには名前呼びがいいとあったんですが」
『いや、別にいいけど』
それ一体なんの本読んだんだ?
「じゃあ俺も梅雨さんって呼んでいいですか!」
キラキラとした目で竹見がこちらを見つめてくるものだから、思わずいいよと返す。
「やった」
本当に竹見は感情豊かだな。喜んでいる彼を見てそう思うが、本来中学生の反応としては竹見が正しくて、良く考えれば他の子たちが、おかしいのだが、それに気づけないくらいに梅雨はだんだんと侵食されていた。
再編する
大丈夫。王帝月ノ宮でも上手くやるよ。