アレスの天秤編
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皆の強化委員として配属先が決まり、サッカー協会へと連絡を入れた後日、私は月光エレクトロニクスへ招待されていた。
月光エレクトロニクスの社内ラボで、王帝月ノ宮中に所属する上で、##RUBY#アレスの天秤#アレスシステム##の説明を受けた。
電機メーカー「月光エレクトロニクス」が開発した新世代教育プログラムで幼少期から遺伝子レベルを分析することで、スーパーコンピュータ「AR2000」による最適なプログラムを提案してから英才教育を受ける、といったものらしい。
研究者曰く、幼少期から受けるのが最適らしいが、中途からの使用でも問題ないらしい。現在は受刑者向けのアレス更生プログラムなどの研究も政府協力の元行われているとの説明があった。
その後、DNA検査の為に血液を抜かれ社長室へと案内された。
「社長、水津梅雨氏をお連れ致しました」
「ああ、入りたまえ」
どうぞ、と言われ、室内へ足を踏み入れる。
中に入れば、社長席に座った黒のメッシュの混じった灰色の髪をオールバックにした福耳のおじさんと、その隣にThe秘書と言った感じのつり目の美女が立っていた。
それだけではなく、もう1人、マゼンタ色の髪をした白いブレザーを着た少年が立っていた。
こちらを見てきたその瞳は、随分と死んだ目をしていた。
「初めまして水津くん。私がこの月光エレクトロニクスの社長、御堂院宗忠だ」
うわ、胡散臭そうなおっさんだな。
そもそもイナイレで福耳は悪いやつだぞ。いや、偏見だけど。
『初めまして。水津梅雨です。強化委員としての要請ありがとうございます』
一応礼儀として、自己紹介と、礼を伝える。
「私は君の潜在能力を高く買っている。きっと##RUBY#アレスの天秤#アレスシステム##で適切なプログラムを受ければ、より良い選手になるだろうと踏んでいる」
『ありがとうございます』
ふむ。やはり強化委員が必要だったと言うよりも、新たな検体が欲しかった、みたいな感じがヒシヒシするな。
他の子が来ることにならなくて良かったかもしれない。
「そこに居る野坂が王帝月ノ宮サッカーのキャプテンだ」
「初めまして、王帝月ノ宮中1年、野坂悠馬です」
そう言って伸ばされた手を握り返す。
のさかゆうま、ね。やっぱり知らない子だ。しかし、1年生でもうキャプテンをしてるのか。
『水津梅雨、...あー、2年生です。雷門ではマネージャーをしていました』
「あの雷門中の方に来ていただけて光栄です。王帝月ノ宮にはマネージャーがいないので、助かります」
マネージャーいないんだ。
いや、てか、私強化委員として呼ばれたんじゃなかったっけ?
『あれ、もしかして、マネージャー業も兼任ですか?』
御堂院にそう尋ねれば、彼はいや、と首を振った。
「王帝月ノ宮にマネージャーは不要だ。##RUBY#アレスの天秤#アレスシステム##で必要なサポートは出来ているのでな。野坂、彼女にはマネージャーではなく、強化選手として来てもらっている」
「そうでしたか。失礼しました。しかし、マネージャーを選手に起用とは...彼女にも
「王帝月ノ宮の生徒になるのだ。同然受けてもらう」
「そうですか」
彼はじっと、死んだ目をこちらに向けてきた。
マネージャーにサッカーができるんか、とか思ってるのかな??
「水津の実力は私が保証する。これからお前に学園の案内を任せるから、その際にスタジアムで実力を見てみればいい」
なるほど、野坂は頷いた。
「水津。王帝月ノ宮は完全寮性だ。入学入寮は来週の月曜日に、その頃にはお前のDNA鑑定も、プログラム制作も終わっているだろう。今日は野坂に付いて学園を見て待ってくれたまえ」
『了解しました』
「で、サッカー部の選手宿舎から続くこちらが、サッカー部の練習用スタジアムになってます」
『なるほど』
野坂に連れられて、王帝月ノ宮中へとやってきたが中々に敷地が広い。
来週来た時には忘れてそう。
「野坂さん。お疲れ様です」
野坂に付いてスタジアムに入れば、サッカーユニフォームを来た少年らが居た。
「野坂さん、そいつは...?」
マロンクリーム色の長髪を逆立てた目付きの悪い少年が、睨みつけるようにしてそう言ってきた。お、染岡タイプか?
てか、その髪重力どうなってんのエリンギ?
「彼女は、雷門からの強化委員でウチに入る水津梅雨さん」
「雷門...ああ、フットボールフロンティア優勝校の」
「うちはマネージャーはいらないんじゃなかったか?」
他の子たちもぞろぞろと興味深そうに近づいてきた。
しっかし、思ったこと1つ言っていいか?みんな目が死んでるー!!
というか、最初に突っかかってきたエリンギくんはまだ、睨みつけるという反応があったが、他の子たちは表情筋動いてるかコレ...?
「マネージャーじゃなく、選手としての起用だって御堂院さんからの指示だよ」
「御堂院さんの」
ふぅん、といった様子で少年らの目線が集まる。
「サッカー経験はあるのか」
褐色肌で長身の金髪黒メッシュの長髪男子がそう尋ねた。
『フリスタを少々』
「へぇ、フリースタイラーか」
長い白髪の狐っぽい見た目の少年が、静かに呟いた。
「百聞は一見にしかず。やってみろよ」
モヒカンヘアーの大柄マッチョがサッカーを、こちらへ蹴り飛ばした。
確かに、それが分かりやすくていいね。
『よっと、』
持っていたカバン適当に放り投げて、飛んで来たボールを胴で止めて、地に落として、足で踏む。
それから、しゃがんで落としたカバンの中からスマホを出す。
『どうせなら勝負をしようよ』
彼らも私の実力を知りたいんだろうけど、私も強化委員として彼らの実力を把握しておく必要がある。
「勝負ですか」
『ええ。今から3分ぐらいの曲をかけて私はその間フリースタイルフットボールを続ける。曲が終了するまでに私からボールが取れたら君ら勝ち。守れたら私の勝ち。3分じゃ短いかもしれないから無論君らは何人で挑んでも、どんな手を使っても構わない』
挑発のつもりで言ったのだが、王帝月ノ宮の子達は、なるほど、と皆どうするか思案しているようだ。
ふむ、このゲーム、前に影山の提案で帝国でやった時は、血気盛んな子達がすぐに釣れたが、王帝月ノ宮の子達は皆冷静な判断ができるようだ。
鬼道や風丸のような子が多いチームだと思えばいいのか。
『どうする?』
そう聞けば、少年たちは一斉に野坂を見た。キャプテンに一存すると言ったところか。
「いいですね。僕らは貴女の実力が知れ、貴女は僕らの実力が知れる」
『じゃあ、始めようか』
ミュージックプレイヤーを起動したスマホをカバンの上に起き、イントロと共にボールを高く蹴りあげた。
まずは様子見といった様子で、選手たちは私のリフティングの動きを見ていた。
無論、私にもフリースタイラーとしての意地があるので、ただリフティングするだけでなくちゃんとダンスを含めたエンターテイメントを行う。
今日選んだのは、歌うアンドロイドの楽曲で8bitのピコピコ音源でとてもリズムが取りやすい。
幾人から、ほう、と感心の声が上がった。
様子を見ていた中で、白いメッシュの入った藍色の髪をポニーテールにした少年がスライディングで突っ込んできた。
ふむ、臆せず突っ込んできた所を見るとポジションは、DFかな。
そのスライディングをボールを蹴りあげ、ジャンプで躱す。
着地すれば、すぐさまモヒカンマッチョがタックルを仕掛けてきた。
それをひらりと、交わして次に突っ込んできた紺のグラデーションかがった灰色髪の女の...いや?男の子か。
彼をロンダート...側方倒立回転跳び1/4ひねり後向きで避けてそのままボールを足で挟んでバックフリップを決める。
「なるほど中々やるようだね」
そう言って、野坂も来るか?と思ったが、彼は顎に手を当てて何か考えるように動かなかった。
「ハッ、おもしれぇ!!」
そう言って、毛先がグレーがかった白髪のツンツン頭が、真っ直ぐに突っ込んで来た。
おや、この子もこのメンツの中では随分と威勢がいい。
この突っ込み方はFWかな。
これは足元にボール置いてたら取られそう。
二ーストール、膝にボールを乗せて、さらにそれをヘッドストールに切り替える。
「なっ!」
額に乗ったボールを見て、走って突っ込んでいた彼は急ブレーキをかける。
「まだまだ!!」
彼はそこから軽くジャンプして、梅雨の顔面目掛けて足を振りかぶった。
『あぶっ、な』
ギリギリでその足は届かなかったので、すぐさま、ボールを頭突いて宙に上げて、体制を整える。
顔面蹴る気まんまんだったじゃん。容赦ないな。
重力に従って落ちてきたボールをバック宙でキャッチして、彼から距離を取る。
楽曲ももう終わりの方だ、このまま逃げ切れるかな。
「西蔭」
「はい、野坂さん」
野坂に何か耳打ちされた、エリンギくん、どうやら西蔭と言う名らしい。
彼だけ白い長袖のユニフォームを着ているのでGKは確定だな。
野坂から何か聞いた彼は、真っ直ぐ突っ込んできた。
それからすぐに、左から褐色ロン毛の少年と右から灰髪に白メッシュを逆立てた少年がスライディングを仕掛けてきた。
挟み撃ち作戦か!ボールを頭上に蹴りあげて、後ろに...!!いや、
後ろから野坂も来ていた。
八方塞がり?いや、さっきの白髪つんつんヘアーの彼がやったのをこちらもやればいい。
タッチダウンライズ、アクロバットの大技だ。足を大きく振り上げ振り回す。人間、目の前に危険が迫ったら一瞬動きが止まるものだ。
「うおっ」
まずはこれで正面の、エリンギくんこと西蔭の動きを制する。
そしてその振り回した足の勢いを元に身体を下に向け、右から突っ込んで来たスライディングの脚を右手でタッチし、それを軸に身体を腕の力で押し上げと脚の振り回しの勢いで身体を捻り宙へ浮いた。宙でボールを足でたたき落とし野坂の後ろに着地する。
そのタイミングで彼はパチンと指を鳴らした。
左右から、モヒカンマッチョと狐少年ががボールを奪おうと駆けて来ていていて、正面には野坂がいる。
ドリブルで抜けるか?いや純真なサッカー技術では負ける気がする。
ボールを蹴りあげ、自分の頭の後ろを抜かしそのままターンで逃げ切ろう。
そう思いボールをつま先で掬って軽く上げる。
「西蔭!」
はい!という返事が真後ろから聞こえ、しまったと顔を後ろに向ける。いや、まだボールは高い位置にある。蹴り落とすなら私の方が近いし早い。
『はぁあああっ!!』
身体を捻って足を振り上げる。そのタイミングで西蔭は、足を蹴りあげるではなく、ボールに向かってジャンプをした。
『えっ、』
彼は両腕を伸ばし、私が脚を振り下ろすよりも先にボールをキャッチして、抱え前方へと転がっていった。
「やりました、野坂さん」
彼がそう言って野坂を見たタイミングで、スマホから流れていた音も止まった。
『ははっ、そうか』
ここでGKの能力を使って来るとは思ってなかった。
そうだ、サッカーは足だけじゃなくてキーパーだけ手が使えるんだった。
『負けたー』
ばったりと背中から、グラウンドに倒れる。
「いや、多数相手によくやったよ」
そう言って、狐くんが上から手を差し伸べてきた。
「谷崎義弥だ。よろしく」
その手を掴んで上半身を起こすと、白髪つんつんヘアーがバンッと、背中を叩いてきた。
『いっ、』
「やるな!俺は葉音一矢だ」
彼らに続いてぞろぞろと、王帝月ノ宮のメンバーが集まった。
「どうやら皆、梅雨さんの実力に納得したようだね。改めて梅雨さん王帝月ノ宮にようこそ」
そう言って野坂が手を差し伸べた。
選手生活のキックオフ
王帝月ノ宮中サッカー部。意外と仲良くやれそうだ。