アレスの天秤編
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「選手達の強化委員としての配属先はこれで全員決まったな」
資料のバラつきを机の上でとんとんと揃え直しながら、響木監督が言った。
『鬼道は本当に帝国学園じゃなくて良かったの?』
「ああ。全国のサッカーのレベルを上げると言うのであれば、俺は別の学校へ行くのが適任だろう。それに帝国の事は風丸に任せると、本人からも了承を得ているしな」
この場には、雷門の監督響木正剛と雷門のプレーンである鬼道有人と私、水津梅雨の3人が居て、強化委員としての配属先を決める会議をしていた。
あのスペインとの試合の後に雷門イレブンをサッカー強化委員として全国へ送るという話を、サッカー協会から持ちかけられた。
最初は渋っていた者もいたが、圧倒的な世界との差。それを実感した皆は、結局納得し強化委員となることを決めた。
それで、現在に至る。なんで私もここに呼ばれてるのかよくわからないが、響木さんに参加しろと言われたのでしている。
「後はマネージャーですね」
「ああ。マネージャー達の希望は...」
響木さんがペラペラと資料を捲って見てみる。
先程までの選手の配属先もだが、一応配属先の希望を取ってある。逆に他校からの選手要請も来ていたりする。
「木野は、要望は特になしだな。音無が...、鬼道と一緒の所という希望だな」
「春奈...」
ジーンと鬼道は感動しているようだった。
『春奈ちゃんは希望通り鬼道と同じ、星章学園でいいんじゃないですか?』
コクコクと無言で鬼道が頷いているのを見て、響木さんは小さく笑った。
「ああ。構わんだろう。木野は...、そうだな円堂と同じ所がいいだろうな」
彼女の恋心を知って、だろうか。
『正直、雷門イレブンで1番心配なのが円堂だし、秋ちゃんが付いてくれるなら安心ですよね』
たぶん、サッカー馬鹿を発揮するだろうし、そうなれば配属先の学校の生徒が着いて行けるか心配だし、秋ちゃんがいればその辺しっかり管理してくれるだろう。
「ああ、そういう事だ」
「そういう点でいえば、心配な奴がもう1人いるな」
鬼道の言葉に、雷門イレブン達の顔を思い浮かべる。
『壁山?』
「臆病というか、自信がないところはあるがまあ、壁山なら大丈夫だろう。それよりも、問題を起こしそうなのは染岡だな」
鬼道の言葉に思わず、あーと零す。
彼に関しては心当たりがありすぎる。
『すーぐキレるからねぇ』
「ああ。だから、染岡のストッパーに水津を付けるのがいいと思うが、確か希望はなかったよな?」
最近は染岡が暴走した時は、私、半田、豪炎寺が止めるのが定石となっている。でもその半田と豪炎寺が強化委員として別の学校に行くわけで、残った私がお世話係と言うわけか。
『んー、そうね。まあ、それでもいいけど?』
染岡の配属先は...北海道...白恋中学か。白恋か...、吹雪くんがいるんだよね?居るのかな...?私の知るイナズマイレブンとは異なってしまったし、行ってみないとわからないなぁ。
「なら水津は染岡と同じ白恋中学で...」
「いや、待て」
響木さんの制止に2人は首を傾げた。
「水津の件だが、実は、強化委員...しかも選手としての要請が来ている」
『は?』
思わず、ポカンと口を開く。
「何処ですか?」
「王帝月ノ宮中だ」
『聞いたことがない』
何処だそれ。
ふと、鬼道を見れば顎に手を当てて考え込んでいた。
「学校側というより、この学校のスポンサー側からの要請らしい」
『そのスポンサーというのは?』
「月光エレクトロニクスだ」
「月光エレクトロニクス...大手電機メーカーですね」
『鬼道クン家とも取引あるの?』
「ああ、確か、鬼道重工と関連があったはず。だが、王帝月ノ宮か...」
そう言って渋い顔をしている。
『なんかあるの?』
「...、##RUBY#アレスの天秤#アレスシステム##という月光エレクトロニクスが開発した教育プログラムを宣伝するために作られた学校だ」
『##RUBY#アレスの天秤#アレスシステム##??』
なんか、これまた胡散臭いなぁ。
かつての御影専農中みたいな胡散臭さある。
「確か、遺伝子レベルを分析し、スーパーコンピュータで出した最適なプログラムで幼少期から英才教育を受けさせるとかなんとか」
やっぱり。データサッカーとかしそうだな。
「強化委員として王帝月ノ宮に入る場合も、そのアレスシステムを受けなければならんらしい」
『ふむ。それはまあその学校の設立理念的に受けなきゃいけないのはわかるけど、でもなんで私?しかも選手として』
「それなんだが、どうやら月光エレクトロニクスの社長が、お前がフリースタイルフットボールをやっているあの動画を見たらしく、それまでは強化委員は必要ないと言って、サッカー協会の申し出を断っていたらしいのだが、突然申請してきたらしい」
『なんだろ……バズってる私を、しかもマネージャーから選手とし起用する事によって話題性を呼び、それに託けて会社の宣伝しようって感じがめちゃくちゃにする』
「同意見だな」
そう言って鬼道が頷いた。
魂胆が見え見えなので、本来なら御遠慮したいところなのだが、如何せんここは私が先を知るイナズマイレブンの世界では無い。
こんな怪しいプログラムを推奨する企業の絡んだ中学サッカー部があるなんて、今までのイナズマイレブンのシリーズ内容を鑑みれば確実にココに何かある。
何があるかわからない、が...。
「この話蹴っても問題ないが、どうする水津?」
響木さんの問いかけを聞き、スッーと息を吸う。
私が蹴ったところで他の子が送り込まれるなんて事態は、なさそうだが...。
私がこの世界に来たせいで、歪んでしまったものの1つであるなら、それを正すのが私の仕事なのかもしれない。
怪しい学園と企業の調査。ハハッ、推理ゲームみたいで面白いじゃないか。
調査の結果何も無いクリーンな企業だったらそれはそれで悪い話ではないし、やばいとこなら速攻で鬼瓦刑事に連絡すればいい。
それにだ。何よりマネージャーでなくて選手としてとの起用なのが、私のフリスタを見て選手として使いたいと思ってくれた事が胸を撃った。
自己が認められるというのはとても嬉しいものなのだ。
『この話受けます』
「そうか」
やはり、と言ったように響木が頷く横で鬼道が、なっ!?とこちらを見た。
鬼道は、この胡散臭い話を私が断ると思ったのだろう。
「いいのか水津。アレスシステムの宣伝に使われるのがオチだぞ」
『わかってるよ。でも、私も興味があるんだ』
興味?と鬼道が怪訝そうな顔をした。
『スペイン代表のクラリオが言っていたでしょう?なんで私が選手として参加していないのか?って』
「ああ」
『それもあってか、今サッカー協会側が女子選手がフットボールフロンティアに参加できるよう規定を変えてくれているわけ』
強化委員の話の時に、一緒に伝えられた朗報である。
男女関係なく、サッカーのできる時代を目指すらしい。
「ああ。だからこそ、珍しい女子選手という意味でも目を引く広告塔にされるぞ」
『だろうね。でも、それがどうでもいいと思えるくらい、フリスタという世界でしか活動の範囲がなかった自分が選手となったらどうなるかの興味がある』
「水津...。そうか、ならばもうこれ以上は何も言わん」
「では、水津は王帝月ノ宮中で決まりだな」
いいんだな?という響木さんの最終の問に、はい、と大きく頷いた。
新たなる門出
この選択が吉と出るか凶とでるか...。