フットボールフロンティア編
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フットボールフロンティア地区予選第2戦目、雷門中対御影専農中は御影専農中の保有するグラウンドで行われる。
あちらこちらに建てたられたパラポラアンテナからリアルタイムの映像データを受信して恐らく奴が見ている事だろう。
「結局、新必殺は出来なかったようですね。どうやって戦うつもりです?」
どこかほっとしたような表情の冬海先生の言葉に円堂がぐっと拳を握って見せた。
「確かにこの前の勝負は俺の負けだった。でも試合はチーム同士の戦いだ。力を合わせれば絶対にチャンスはある。ガンガン攻めて行こうぜ!」
グッと高く円堂が拳を突き上げれば、皆、おお!と声を上げ同じように拳を掲げた。
両校の選手に集合の声がかけられて、雷門イレブン達はフィールドへと駆け出した。
我々マネージャー陣も、タオルとドリンクの準備を終え、ベンチに座る。
ベンチから見える対面の観客席だが、9割型学生服を着ている。正式には御影専修農業高校附属中学校なので恐らく中学生だけじゃなく高校生も応援に来てるんじゃないだろうか。
両校の選手がポジションにつき、ピピッーとホイッスルの音が鳴り響く。
《雷門ボールでキックオフ!!早くも豪炎寺より受け取ったボールを持って染岡切り込んで行く!》
雷門側の観客には角馬圭太が居ていつものように実況が始まる。
上がる染岡の前に御影専農の下鶴改が立ち塞がる。かと思いきや彼は動く事無く、染岡をスルーした。
「ディフェンスフォーメーションγ3発動」
杉森の合図で御影専農の他の選手達が一斉に同じ動きでポジションに着いた。
恐らく頭に付けているあのコードで監督からの指示が送られてきたのだろう。
「豪炎寺!」
染岡から豪炎寺にパスが渡るが...。
ハッとして豪炎寺は足を止めた。
先程までまったくマークされていなかった筈なのに、いつの間にか彼の周りには6人もの選手がマークに着いている。
「豪炎寺!!こっちだ!」
マークにつかれていない染岡が駆け上がり、豪炎寺は御影専農の選手達の頭の上にボールを蹴りあげノーマークの染岡はボールを受け取りシュートに入った。
「ドラゴンクラッシュ!!」
御影専農のDF4人がボールの通り道だけを開けるように2列に並び、その間を染岡の放ったドラゴンが飛んでいき、意図も簡単に杉森の手のひらにボールが収まり観客達が沸き上がる。
「なんだ今の守備は!」
「驚くことはない。君たちの攻撃パターンは完全にデータ通り。従って簡単に予測出来る」
「なんだとッ!!」
軽い挑発にすぐさま乗っかった染岡に、後ろから円堂がドンマイだ!と叫ぶ。
「まだ始まったばかり!早く攻撃に備えろ!」
怒りを抑えて、守備に戻ればすぐさま杉森がセンターラインの先にいる下鶴へとボールを蹴り上げた。
御影専農の子供たちの頭に付いているあのコード。彼らはあれでサッカーサイボーグとして洗脳されているわけだが...。指示を理解する速さとそれを起こす行動の的確さ。それを実際に見てしまえば、勝つために洗脳に縋りたくなる気持ちも分からなくはない。
だが、データに従ってポジショニングをして、プログラムの道筋通りにボールを運ぶ。
自分で考えない、楽なサッカーだ。
それ故に、そのデータが正しくなかった場合、適切に動く事が出来ない。
《おおっとー!風丸負けていない!!》
現に、ドリブルでボールを運んでいた下鶴が8番にパスを出した瞬間、スライディングで滑り込んだ風丸がパスカットを成功させた。
「風丸先輩ったらあんなに足が早かったかしら」
『元々陸上部だし選手の中じゃ1番早かったけど...』
カメラで撮影をする春奈ちゃんの隣で、フィールド内の風丸を見るが、中々難しいと言っていたドリブルをしながら駆け上がるスピードが以前よりも早くなっている。
「宍戸!」
風丸から宍戸にボールが渡るが、すぐさま御影専農の選手のスライディングで奪われ即座にパスが周り、止めに入った松野、栗松を容易に躱して攻め上がってくる。
「くるぞ!こいつは俺に任せろ!みんなは11番をマークしてくれ!」
おう!と風丸と壁山が、下鶴のマークに付いた瞬間、迫と名を呼ばれたノーマークだった9番の山岸にボールが渡った。
「逆か!」
蹴られたシュートに円堂が即座に飛びつき何とかキャッチする。
ボールを止めた円堂にベンチ一同よし!と盛り上がるが等の本人は味方にボールを投げようとして、慌ててそれを止めた。
既に選手達の前に御影専農の選手達がそれぞれマーク付いていた。ディフェンスに付くのが早いな。
「やっぱり動きが違うと思いませんか」
「うん...精密な機械が相手って感じね」
「いえ!そうじゃなくて」
春奈ちゃんの言葉に、えっ?と秋ちゃんは首を傾げる。
『秋ちゃん、フィールド』
見てみ、と促す。
マークに付かれていた少林寺と風丸がそれを振り切り走り出した。
残ったDFの2人、壁山と土門が追いかけようとする御影の選手たちをディフェンスする。
「ほら!」
円堂から風丸にボールが投げられ受け取った彼は直ぐに豪炎寺へとパスをした。
豪炎寺はボールを蹴りあげ、炎と共に身体を捻らせ宙へ舞う。
「ファイアトルネード!」
放たれたファイアトルネードを正面に杉森は腕をクロスさせ大きく胸を開いた。
「シュートポケット」
正面でキャッチされゴールしなかったものの、杉森の手から大きく弾かれ彼自身の体制も大きく崩した。
「まだだ!行くぞ豪炎寺!!」
弾かれたボールを追って染岡が上がり、ボールを蹴りあげる。
「ドラゴン」「トルネード」
蒼き龍が紅き龍に姿を変えて、ゴールへと向かっていく。
「シュートポケット」
それでも杉森は必殺技を発動し、キャッチは出来なかったもののボールを弾いた。また体制が崩され、今度は膝を付く。杉森は苛立たしそうに、ドンとフィールドの芝を叩いて立ち上がる。
「またか...!」
「豪炎寺さーん!!」
防がれた事を悔しがる豪炎寺の元にDF位置から駆け上がってきた壁山がボールを取って蹴りあげる。
よし、と頷いて、豪炎寺と壁山は高く飛び上がった。
壁山の腹の上に乗った豪炎寺は更に高く飛びそこからオーバーヘッドキックを放つ。
「「イナズマ落とし!!」」
頭上から飛んでくるボールを前に杉森はギュッ、と右手の拳を握った。
「ロケットこぶし」
放たれた拳が、またもやシュートを弾き防いだ。
『流石、正GKになってから無失点の男』
オフェンスフォーメーション、そう言って御影専農一同攻め上がってくる。
DF達が守備に付くが合間を狙って飛び出した山岸にパスが通り、彼はゴール正面に向きボールを蹴った。
思わず円堂が飛びつくが、これはシュートではない。
反対から上がってきた下鶴がそのパスを受け取ってシュートを蹴った。
土壇場で、芝を踏み込み円堂はぐっと身体を捻り向きを変えた。
「熱血パンチ!」
辛うじて防いだそのボールが宙へ飛ぶ。そこを狙って、山岸がヘディングでゴールを決めホイッスルが鳴り響く。くそっ、と円堂が芝に膝をつき、地を殴っている。
御影専農の先制点。しかも必殺技を使っていないノーマルシュートでだ。きっついよね。
いつもみんなをドンマイドンマイと励ましている円堂のこの落ち込みように、ベンチにいる一同はどんな言葉をかければいいか、と戸惑っているようだった。
『こういう時こそだよ』
ポンと、秋ちゃんの背中を叩く。
「水津さん・・・うん。そうね」
力強く頷いた秋ちゃんは手を口の前でメガホンのように筒状にした。
「円堂くーん!!まだ1点!取り返せるよー!!」
『円堂ー!!ちゃんと反応出来てる!次は取れるよ!!』
2人で叫べば、円堂は立ち上がってこちらを見て、 次は止める!と握った拳を見せつけてきた。
立ち上がれマイヒーロー!
何度でも立ち上がる。それが私らのキャプテンだ。