世界への挑戦編
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気になっていた水津とヒロトの関係が違うと分かってホッとして、俺にもチャンスがあると喜んだのもつかの間で、間髪入れずに言われた言葉に俺は自分の考えを悔いた。
『みんな真剣に世界のてっぺん目指してるのに、そんな浮ついた事はしないよ』
その言葉に、俺は代表入りをして浮かれていた事に気づいたし、水津はそういうやつだよなと納得もした。
ヒロトとの関係を聞く前に、焦って告白なんかしていなくて良かったと安堵もした。
もし、言っていたらフラれる上に、真剣に世界一を目指していない浮かれぽんちだと思われ幻滅されていた事だろう。
俺からすればどっちも真剣で本気なんだが、傍からは分からないものだし。
とりあえず焦らずに行こう。
ああ言ってたのもあるし、なにより水津は元より俺たちと壁を作る癖がある。それを考えたら水津が誰かと付き合うような事はないだろうし………。
ただ、問題は水津自身がそうでなくとも、周りの奴らが……ってのがある。
影野の例もあるし、結局ヒロトの奴は要注意なんだよなぁ。
そして、もう1人要注意なのが……円堂に皮肉をいい、PK対決をする事になったイギリス代表のエドガー・バルチナス。
子供らしいと可愛いと笑う水津に対し、最初こそ苛立ちを隠し紳士的に振舞っていた。
だが、PK対決に勝利した後も、負けて悔しがるどころか世界レベルに感激するいつもの調子の円堂に乗っかって、そうだねと、間近で見れてよかったねと笑う水津にエドガーは、今度は苛立ちを隠さず近づいた。
『なに?』
水津が見上げれば、エドガーは水津の右手を取った。
「試合ではもっと凄いシュートをお見せしますよ」
そう言ってエドガーは水津の手を上に引き、その手首に口を付けた。
唐突な行動に、ぽかんとする水津を置いてエドガーは去って行った。
自分になびかない女への興味か、はたまた俺たちへの挑発かわからないが、腹が立つ事には変わりない。そこに好意がないとしてもだ。
絶対に負けられねぇ!とパーティの翌日からも気合いを入れて練習に臨んで、試合当時になった。
試合はライオコット島本島の北東にあるウミガメ島で行われるのでフェリーに乗って移動している。
皆が窓から見えるオーシャンブルーに感激する中で、久遠監督が席から立ち上がった。
「今日のスターティングメンバーを発表する!」
窓の外を見ていた一同は席に真っ直ぐ座り直した。
「フォワード、豪炎寺、宇都宮。ミッドフィールダー、鬼道、風丸、基山、土方。ディフェンダー、壁山、綱海、飛鷹、栗松。ゴールキーパー、円堂」
はい、とそれぞれが返事をする。
「以上だ」
「チッ、また、ベンチかよ」
不動が不貞腐れたように腕を頭の後ろに回して窓にもたれかかった。
不動の気持ちも分からなくはない。俺だって名を呼ばれていないから。
「リザーブは休みという意味ではない」
鋭い瞳で監督が言えば不動は、ニヤリと笑っていた。
スターティングに選ばれずとも交代で試合へ出る事はある。
「俺の分までしっかり頼むぜ!」
後ろ席の壁山にそう言えば、壁山は目に涙を浮かべていた。
「染岡さん……!」
「待つのには慣れてる。焦らねえさ」
親指を突き立てて、壁山を安心させるように言う。
そうだ。今回、代表入り出来たように、チャンスはいずれ巡ってくる。
「いい面構えになったな」
船内でのミーティングが終わり、船が着くまで自由行動になったので、デッキに出て潮風を浴びていれば、響木監督が俺の隣に立った。
「逆境を知るものは強い。必ず来るぞ、その強さを生かす時が」
負けられないと意気込んだ手前、今じゃないのは悔しくはあるが……。
「なあ、水津」
響木監督の言葉に、はいと返事をしようと思った矢先、監督は俺の後ろへと声をかけた。
『なーんで、私に振るんですか』
監督が来い来いと手招きすると水津も俺の傍に来た。
『せっかくいい事言ってたのに』
「俺に言われるよりお前から言われる方が喜ぶだろう」
『な、んですか、それ……。響木さんからでも嬉しいよね?』
ね?と水津が見上げてきた。
そりゃあ、水津から言われりゃあ問答無用で嬉しいに決まってるが、監督から言われても嬉しいだろ。
「そうっすよ。監督の今の言葉有難いと思ったんですから」
「そうか。ならほら、水津からもトレーナーとして何か一言言ってやれ」
『えぇー、無茶ぶり』
ううーんと水津は考え込む。
無茶ぶりをした響木監督はそれを見て笑っている。
「別にかっこいい事を言わんでもいい」
『えー、言うならかっこいいこと言いたいじゃないですか』
意外とカッコつけなんだよな水津は。大人ぶろうとしてるつーか……いや、実際大人なんだろうけど。
『うん。そうだなぁ……』
何を言われるのか、と少し楽しみに水津を見る。
『チームに必要じゃないなら、例え怪我をした選手と入れ替えでも選ばれなかったと思うんだ。必ず、キミが必要な時が来る。だから、その……もー!!響木さん!ニヤニヤ笑わないで下さいよ!!』
むっ、と頬を膨らませて水津が怒り続きの言葉は聞けなかった。
「いや、青春だと思ってな」
『なんですかそれ!響木さんが言えっていったんでしょ!?』
「フフッ」
『ほらー、響木さんのせいで染岡に笑われたんだけど!?』
「いや、ありがとうな」
2人が俺を励まそうとしてくれてるのが嬉しかった。
待てば海路の日和あり
焦らず行くさ。サッカーも、恋愛も。