世界への挑戦編
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「ゴッドブレイク」
同点に追いつかれたファイアードラゴンは、もう一度引き離す為に攻め上がったアフロディがシュートを打った。
それに対しゴール前の円堂が天に向かって左足を真っ直ぐ上げた。
「正義の鉄拳!」
左足を踏みおろすと同時に右の拳を前に突き出し、ゴッドブレイクを弾き返した。
やったぁ!とベンチにいるマネージャー達が歓声を上げる。
「円堂くんが復帰したら流石のファイアードラゴンもそう簡単に攻略できないですね!」
と、目金がフラグを建ててしまうものだから、飛鷹と並走し、ドリブルでボールを運ぶ木暮から素早くカットしたアフロディがもう一度空へと羽を広げた。
だけど、今度はその背後から涼野と南雲も飛び出した。
「なんなの!?」
アフロディが上げたボールに、3人が飛び込むようにボールを蹴り飛ばした。
「「「カオスブレイク」」」
「なに!?」
「これは⋯!」
眉をひそめ構える円堂と驚く虎丸。そして、アフロディの近くにいた飛鷹は、クソッと悪態をついた。
「正義の鉄拳!!くっ、ぐぅ、ううう!!」
歯を食いしばり、カオスブレイクを拳で受け止めるが勢いに腕を弾かれ、ボールはゴールへと直進し、ピィーーっとホイッスルが鳴り響いた。
《3対2とまたも韓国リード!ゴッドブレイクの進化版、カオスブレイクが炸裂!円堂の正義の鉄拳が破られた!》
前髪を手で払って踵を返したアフロディは両手を上に掲げ、そばに居た涼野と南雲とハイタッチを交わす。
風丸に助け起こされながら、すまないと謝る円堂を見つめ、飛鷹が思い詰めたような顔をした。
「この時間帯で勝ち越されるのは痛いですね……」
目金の言葉にそうね、と頷く。
後半戦ももう時期終盤に入る。
「大丈夫!」
そう強く言ったのはやっぱり秋ちゃんで、彼女は真っ直ぐフィールドを見つめた。
「みんなまだ諦めてないわ!」
「そうですよね。みんなあんなに頑張ってるもの」
冬花ちゃんの言葉を聞いて、もう一度フィールドを見れば、虎丸が豪炎寺に駆け寄っていた。
「豪炎寺さん!タイガーストームが成功しないまま試合が終わるなんて、オレ、嫌ですからね!」
言いたいだけ言って虎丸はポジションへと戻っていく。
虎丸に返事を返さなかった豪炎寺は何を思うのか、タダ静かに目を伏せていた。
「とにかく上がれ!全員で押し上がるんだ!」
イナズマジャパンボールで再開し、円堂がゴールから大声で叫ぶ。
「飛鷹!」
無論、大人しく上がらせてくれないファイアードラゴンにバックパスを強いられて、鬼道から飛鷹へとボールが渡る。
わたわた、ともたついたが何とか飛鷹は自分の足元にボールを止めた。
そして、飛鷹はこの後どうすれば……というようにキョロキョロとフィールドを見渡す。
「飛鷹!鬼道に回せ!」
円堂が叫び、飛鷹は押忍!と返事をするが時すでに遅し。
「フッ!」
チェ・チャンスウがスライディングで突っ込んで来てボールを奪われる。
南雲へとボールが渡り、急いで皆戻ろうとするが、流石元宇宙人。足が早い。
「そこをどけぇ!」
南雲はぴょん、とディフェンスの木暮を飛び越えていく。
「どかないっス!!!」
大きな声でそう叫び、壁山が円堂の前に立った。
「おらぁ!」
だったらぶっ飛ばすと言わんばかりに南雲はボールを蹴り飛ばした。
「ザ──」
壁山は上に飛んで、どしん、と落ちてきた。
その振動で、地面が隆起した。
「─マウンテン!」
山がそびえ立ち、ボールをライン外に弾き出した。
「やったっス!」
「ナイス壁山くん!」
竜巻落としの時もそうだが、あの怖がりで逃げ腰だった壁山の成長がすさまじい。
彼のおかげで、南雲のシュートは防げたが、まだまだピンチは続いている。
ラインの外に立ったチェ・チャンスウがスローインし、ボールはアフロディに渡り、カオスブレイクの為に涼野と南雲がそばに寄った。
「円堂!」
来るぞ!と言うように鬼道が名を叫べば、やはりアフロディは美しい羽で宙へ舞った。
そこに涼野と南雲も飛び込んでいく。
「打たせない!」
その声と共にシュートのための蹴りを入れた彼らの足元からボールが消え去った。
疾風の如くボールを奪ったのは風丸で、彼はそのボールを飛鷹に向けてヘディングパスした。
やってくるボールに向けて、飛鷹は足を伸ばし振り上げた。
しかし、するり、と足はからぶって、ボールは彼の横を通り過ぎていく。
その瞬間から彼の焦ったような顔がどんどんと青ざめて行く。
「クソぉ!!」
飛鷹はいつも手入れしている自慢のリーゼントを両手で掴んで頭を激しく振った。
《飛鷹のミスによって、ファイアードラゴンのコーナーキックになってしまった!》
危険を顧みず送り出してくれた鈴目たちのためにもと意気込んでいた彼に突き刺さる酷い現実。
「敵の勢いに飲まれてますね…このままじゃ……」
今までも初心者故にミスは多かった。それでも素知らぬ顔でリーゼントを整えたりする余裕が彼にはあった。
今はそれすらもなく、ただ青い顔をして、下を向き、身体を震わせている。
「くそっ……」
「何を怖がってるんだ、飛鷹!」
彼の後ろから円堂が叫ぶ。
そんなことは、と飛鷹が振り返れば円堂は真っ直ぐ真剣に彼を見つめていた。
「いいか、飛鷹。失敗したってカッコ悪くなんかない。もっとかっこ悪いのは、失敗を恐れて全力のプレーをしていない今のお前だ!」
「キャプテン……」
「思いっきりプレーしてみろ!失敗したっていいじゃないか」
「失敗したって、いい?」
ああ!と円堂は力強く頷いた。
「今のお前を全部プレーにぶつけてみろよ!」
「分かったよキャプテン……。やってやる!」
グッと飛鷹は握りこぶしを掲げてみせた。
「飛鷹さん、緊張したら深呼吸ッス。そんで堂々と胸を張ればいいんッスよ!」
そう声を掛けている壁山を見て、嗚呼、と思い返す。
野生中との試合で、イナズマ落としをやるのにビビる壁山に私が言った言葉。
失敗したっていい
思えば、あれは円堂の影響をもろに受けた言葉だったな。