世界への挑戦編
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立向居と円堂がキーパーを交代するのと共に鬼道もフィールドに戻った。
フィールドに立つなり円堂はみんなを叱咤した。
勝ちたくないのか、不動の言葉ではなくプレーをみろ、と。
その言葉も虚しく、試合再開後不動の出したパスは風丸の足に届かずラインの外にボールが転がっていく。
『トップスピードの風丸なら全然余裕で届くだろうに』
どうせ、嫌がらせで取れないパスを出してくると思い込んでいるからか、不動のパスに対して全力を出せていない。
それでも、不動はまたファイアードラゴンからボールをカットして、敵に囲われてパスをすることを余儀なくされた。
そんな彼がパスを出したのは、自分を嫌っているだろうと分かっているはずの鬼道。
足元ジャストではない、だいぶ先へのパス。
やっぱり届かないパスを出してるじゃないか、と皆が思う中、鬼道は先の怪我が治りきったわけではないというのに、全速力で不動のパスに追いついた。
「気づいたようだな。不動明王というサッカー選手との向き合い方を」
割り切った様子の鬼道に響木さんは嬉しそうだ。
「さすが鬼道さん!よくあんなパスに追いついたッス!」
壁山が関心する中、鬼道はドリブルで駆け上がっていく。
「もっと強く速いパスで構わない!」
正面からコ・ソンファンが向かってきて、鬼道はそう叫びながら不動にパスを出した。
「なら、コイツでどうだ!」
そう言って不動はコ・ソンファンの奥へボールを蹴った。鬼道はディフェンスを抜き去り、パスを受け取る。完璧なワンツーパスだ。
「またッス!?鬼道さんだからッスよね……!?」
壁山の言葉に、いや、と返したのは風丸だった。
「アイツは分かってたんだ。鬼道ならあのパスに届くはずだと……」
「じゃあ、全部分かっててあそこに走って行ったって事ッスか?」
壁山が驚いてゴールへ走りシュートを打つ鬼道と、その後ろを走る不動を見つめる。
惜しくも鬼道のシュートはキーパーのチョ・ジョンスに弾かれてラインの外に出てしまった。
「不動……。俺たちの知らないところで努力してたのかな」
やっと、みんなの不動への見る目が変わったようだ。
不動は不真面目に見えるけど、全体練習にはちゃんと全部参加してて、食事だって、みんなと離れた席に居るものの同じ時間に取りにくるので、チームであることの自覚があり、まったく協調性がないわけではない。
それに、最初は話し相手が他に居ないから私に話しかけてくるのかと思っていたのだけれど、どうやら他の選手達の情報を私から探って得ようとしていたみたいだし。
分かりずらいが、行動に出ていた。勝つための、彼なりの努力が。
不動からのパスがみんなへと繋がり始め、彼がチームの歯車として機能し始める事にやばいと、焦りを感じたチェ・チャンスウが、ボールを持った不動に徹底マークについた。
不動が振り切ろうとフェイントをかけようとしてもチェ・チャンスウは完璧なディフェンスで先へは行かせない。
そんな不動の元に、後ろから駆け上がってくる音がして、彼らは目配せをした。
瞬時に、鬼道が不動を抜いて、上に飛び上がった。
そこに不動もボールを蹴り上げ飛び上がる。
そして宙に浮いた2人は、交差するように互いの足でボールを蹴った。
2人の蹴りに挟まれたボールは力を増し、黒い渦を巻いて傍にいたチェ・チャンスウを吹き飛ばした。
「なにっ!?」
《おっと!鬼道と不動、2人がかりでチャンスウを華麗に抜き去ったぁ!》
「フィールド上の、相手の動きを殺してしまう技!」
キラキラと目を輝かせて興奮したように目金がベンチから立ち上がった。
「名ずけて、キラーフィールズ!」
「あの2人が連携するなんて!」
最近のみんなの様子をずっと心配していた秋ちゃんが嬉しそうに喜んでいる。
ドリブルでゴール前までボールを運んだ不動は、シュートと見せかけてボールをヒールで蹴って後ろへ高く返した。
「「なに!?」」
驚くファン・ウミャンとホン・ドゥユンが見上げたボールに追いついたのは、風丸と壁山の2人。
「行くぞ、壁山!」
「はいっス!」
そう言って2人はボールに向かって飛び上がる。
そこに負けじと、ファン・ウミャンとホン・ドゥユンが飛び上がり、高さで勝ったと笑う2人に、風丸はもっと口角を上げた。
風丸は空中でくるりと半回転し、壁山はイナズマ落としの時のように地面側に背を向ける。
イナズマ落としと違うのは、あの高いところ怖がっていた壁山が、胸を張り腹で受け止めるのではなく、頭を更に下に向け曲げた足で風丸を受け止め、その屈伸力で風丸を更に上へと押し返す所。
遙か高くへ飛び上がった風丸はそこからオーバーヘッドキックでボールをゴールへ叩きつけた。
「大爆発張り手!」
ハッハッハッ、と張り手をチョ・ジョンスは繰り返すが、だんだんと威力に押し負け、ボールごと後ろへと吹き飛ばされた。
《ゴール!壁山と風丸の連携シュート炸裂!イナズマジャパン、ついに同点!》
やったー!とみんなが喜びの声を上げる。
「名ずけて!竜巻落とし!」
「今の、綱海さんと壁山くんが練習してた技じゃ?」
あれ?と言うように春奈ちゃんが言えば、綱海は関係ねぇって!と嬉しそうに笑った。
「最高のタイミングだったよ」
そう言って風丸と壁山が不動に歩み寄る。
「俺が欲しいのは勝利だけだ」
そう言って不動は風丸に背を向けて離れていく。
「えっ、」
「なんだ、あの態度は……?」
嫌味のひとつでも言われると思っていたのか2人がキョトンとしていれば、傍で見ていた鬼道が小さく笑った。
「あれが、不動明王なのさ」
「だな」
「はいッス!」
背を向けられた皆は知らない。
不動が小さく口角を上げていることに。
残す問題は後2つ
2人の方を見つめたあと、円堂はぎゅっとキャプテンマークを掴み、勝つぞみんな!と鼓舞したのだった。