フットボールフロンティア編
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『こら目金ー!!休むなー!!』
手を顔の前で筒状にし、メガホンのように叫ぶ。体力作りの為の河川敷のグラウンド周りをランニングしているのだが、他の皆は走り終わりパス練を始める中、目金だけが周回遅れの為まだ走っていた。
他の皆とは言ったが、円堂、風丸、豪炎寺、染岡は春奈ちゃんと共に部室で対御影専農ミーティング中であるのでそれ以外のメンバーである。
「ひぃ...ちょっ、ちょっとだけ...休憩を...!」
『そう...。今週のナナのネタバレなんだけどー』
「うわぁあああ待ってください!!!」
ナナとはマジカルプリンセス シルキー・ナナという漫画の事で、それが載ってる本誌の発売が今日で毎週目金は部活帰りに買っているのだけれど、私は深夜にコンビニ行って買って学校行く前にはもう読んでしまってるんだよね。
休憩しようとしていた目金はネタバレ回避の為に全速力で走り出した。
『おー、全然元気じゃん!もう一周追加ねー!!』
「ひぃいいいっ!!」
「うーわ。梅雨ちゃん意外と容赦ないよなぁ」
隣にやってきた土門の言葉にそうか?と首を傾げる。
ほぼベンチ確定ではあるが、先を見据えて彼には強くなってて貰わないといけない。強く...は無理でもせめて試合中フィールドに立ってて貰えるくらいの体力は付けさせておかないと。
『いや、目金はやればできる子だからね』
「走ってるだけですげえ死にそうだけど?」
目金を見れば泣きそうな顔でゼェゼェと息を吐きながらヘロヘロになりながら走ってる。
『コズミックプリティレイナも応援してるから頑張れー!』
携帯で画像を出して頑張れー!と振る。
「コズ...なんだそれ?」
『えっ、土6にやってる大人気アニメだけど知らないの!?』
「いや知らねぇけど」
『レイナちゃんマジで可愛いから見ろ!』
超次元世界のアニメも漫画も向こうの世界と一緒で面白いのである。
「最近、水津と土門仲良いよなー」
「昨日も俺達が帰る頃、2人で部室に残ってましたよ」
パスを出しながら言った半田の言葉に乗っかるように少林寺がそう言ってボールを蹴り返すと、見た見たと壁山が頷いた。
「怪しいでやんす」
栗松の言葉に、松野がそうだね、とニヤついた。
「付き合ってんじゃない?」
「えっ、」
驚いたようにそう言って、耳を赤く染め2人を見た影野は、回ってきたボールのトラップに失敗した。
「あっ、」
コロコロとボールが転がって梅雨の足元に寄り、彼女はそれを拾った。
『君らねぇ、聞こえる声で変な噂をするんじゃないよッ!』
大きく蹴ってボールを送り返す。
飛ん出来たボールを上手く受け止めた半田は悪ぃ悪ぃと手を振った。
「ほら、土門もイチャついてないで早く練習に参加しなよね!」
くくくっ、と悪い顔で笑いながら松野が言う。あー、これはしばらく弄ってくるぞこいつ。
「いや、イチャついてねぇけど!?」
「ネタにされたくなかったら早く来てくださいよー!」
宍戸の言葉に土門はへいへい行きますよ、と返事をしながらみんなの所に向かっていく。
「水津さーん!」
後ろから可愛い声で名前を呼ばれて振り返る。秋ちゃんが走ってやってきた。
『どうしたの?』
「夏未さんがみんなを校舎裏に集めてって!私、円堂くん達の方に伝えてくるね!」
それだけ言って秋ちゃんは走って学校の方に戻って行った。
『...なんだろ?...あっ、』
そうか、ついに見つかったのか!!
『みんなーーー!!集合ーー!!!』
河川敷組を連れ学校まで戻り、ミーティング組と合流して夏未ちゃんが指定した校舎裏に来たのだけれど...。
「なんだよ、呼び出しといて居ないじゃないか」
「しっかし、不気味なところだな」
広い学園の敷地内でもほぼ人が来ない校舎裏で、建物の影と校舎を囲うように生えた木々のせいでずいぶんと薄暗い場所となっている。
「ここは雷門中学七不思議の1つ開かずの扉...!」
震えながら目金が言ったのは、校舎裏にある小さな倉庫ぐらいのサイズのドーム型の建物の扉の事で、我々転校生...私、豪炎寺、土門以外のメンバーは七不思議の内容を知っているのか恐る恐るといった様子で周りをキョロキョロ見回したりしている。
転校生故、知らない土門が、は?と聞けば目金が代表して説明を始めた。
「昔、ここで生徒が忽然と姿を消してしまった。それ以来ここに入ったものは、二度と戻って来ないという...!」
青い顔をして話す目金につられたように他の子達も顔色が悪くなっていく。そんなタイミングで、誰も触れていないのにキィと古い鉄扉が軋む音を立ててゆっくりと開き、暗闇の中から長い髪が...。
ひぇええ!ぎゃあああ!きゃあ!など各々が悲鳴を上げる中、梅雨だけは皆の阿鼻叫喚な姿を見てケラケラと笑った。
「みんな揃ったわね」
長い髪をかきあげて、暗闇の中に居た夏未ちゃんがそう言った。
ホラー演出さながらの登場に悲鳴を上げていた一同は、は、と口を開けている。
『ふふ、みんな可愛いなぁ』
「何かあったの?」
きょとん、とする夏未ちゃんに部の男の子達はなんでもないと首を振る。
情けないもんね。七不思議でビビり散らしてた、だなんて。
「とにかく、皆ついていらっしゃい」
そう言って、出てきた扉に踵を返して戻っていく夏未ちゃんに皆、不安そうについて行く。
長い階段を降りると、稲妻のマークが描かれた大きな両開きの扉の前についた。扉が自動で左右にスライドし、さあ、入ってと夏未ちゃんは足を進める。
『おー...』
かなり広いなぁ。いやまぁゲームでのこの場所を考えると相当広い施設なのは確かなんだけど、実際見てみると地下にこんなの保有してるのやばいよなぁ。
「ここは...?」
「伝説のイナズマイレブンの秘密特訓場。イナビカリ修練場よ」
ええっー!?と部員一同から驚きの声が上がった。
「ホントか!?ホントにイナズマイレブンの?」
円堂の疑問に夏未ちゃんは誇らしそうに、ええと頷いた。
『イナズマイレブンっていうと、40年も前の施設でしょう?』
「そう。だいぶん古くなっていたから少しリフォームしたの。必殺技の練習場としてね」
「使っていいのか!!」
「あるものは使わなくては損ですからね」
「ホントか!すっげぇー!!ありがとう!!」
大喜びの円堂が純粋な感謝を述べると夏未ちゃんはツンとそっぽを向いた。
「私はただ無様な負け方をして我が校の恥になって欲しくないだけよ」
「分かってるって!うおおおお!!燃えてきたぜ!!」
俄然やる気を出した円堂に引っ張られるように、他の選手達もやろうぜ!と意気込んだ。
「それじゃあ、水津さん、木野さん、音無さん。扉の外へ」
えっ?と首を傾げた2人の背中を軽く押して、言われた通り外に出る。
3人が出たのを確認して同じように夏未ちゃんも扉の外へ出ると扉が自動で閉まった。その扉には操作パネルが付いていて夏未ちゃんがポチポチとボタンを押すと、液晶にOPENと出ていた文字がROCKに変わり、その文字の下のタイマーも動きだした。
そして夏未ちゃんはマイクのマークの描かれたボタンを押す。
「この扉はタイマーロックになっていて1連の特訓が終わらないと開かないわ。頑張って」
その言葉から数秒後、扉の向こう側から、わー!とかギャー!とか悲鳴に近い声が上がり出す。
「大丈夫かしら...?」
「中で一体何が...」
不安げに秋ちゃんと春奈ちゃんは扉を見つめている。
「心配ないわ。彼らならきっと一回り大きくなって帰ってきます。そのためのイナビカリ修練場だから」
そう言って夏未ちゃんは振り向きもしないで、外に出ていってしまう。
ええっ...と困惑した表情の2人の肩をポン叩く。
『私らも、やる事やろうか』
え?と2人が首を傾げる。
『ここのタイマーが終わるまでに、洗濯したタオルの回収と、昨日までの選手データの整理。それからみんなが出てくる頃に合わせてドリンクの準備もね』
「そうね。私たちもやれることをしましよう!まずはタオルの回収から!」
「はい!」
部室まで戻ろー!と3人は階段を駆け上がった。
『タオルもよし、ドリンクも完璧』
13人分のタオルとドリンクを3人で分担して部室からイナビカリ修練場まで運んで来た。
ソワソワとした様子で秋ちゃんも春奈ちゃんも階段に座ったり立ったりしていて、それを可愛いなぁと見つめてしばらくそうしていれば、ピピピピ、と鳴ってロック解除され扉が開く音がした。
開いた扉に3人で近寄れば、入口付近にボロボロの状態の選手達が固まって転がっていた。
「死ぬかと思ったでやんす...」
「イナズマイレブンってこんな特訓してたんだぁ...」
あちこちからイテテと痛がる声が上がっている。
「大変!救急箱取ってこなきゃ!」
駆け出そうとした春奈ちゃんに大丈夫!とグッドサインを出す。
『こんなこともあろうかと持ってきてるよ!』
「流石、水津先輩!」
いやまあ、ここ入ったらどうなるか知ってたから準備してただけだけどね。
『順に手当てするから、2人はドリンクとタオル配って!』
はい!と秋ちゃん、春奈ちゃんは返事をしてテキパキと動き出した。
『みんな水分しっかり取って、汗もちゃんと拭いて!風邪ひくからね!!それからまだ動ける子はストレッチしてねー!!』
そう叫びながら、救急箱を開くのだった。
イナビカリ修練場
マネージャー業もめっちゃ鍛えられそうだわ。