世界への挑戦編
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監督に不要と言われベンチスタートとなった円堂の代わりにキャプテンマークを付けたのは鬼道で、キーパーとして出るのはもちろん立向居だった。
フィールドに並ぶ選手もベンチにいる選手もマネージャーも皆、不安げな表情を浮かべているが、相変わらず久遠さんからの説明はない。
豪炎寺と吹雪のキックオフで試合がスタートし、選手達は上がっていく。
チェ・チャンスウの采配で豪炎寺と吹雪に直ぐにマークに付かれたが、ボールを持っていた風丸が鬼道の指示で上手くセンタリングを合わせ、後方から上がって来ていたヒロトが流星ブレードを放った。
それをファイアードラゴンのGK、チョ・ジョンスが大爆発張り手で止めてしまう。
「ああ、おしい〜!」
早々のチャンスに立ち上がって見守っていた春奈ちゃんが落胆する。
「サイドを使って揺さぶりをかける鬼道くんの戦術に、ディフェンス、そしてキーパーがぴったり合わせてきました。それも全てあの7番の指示」
目金が出来ますね、チェ・チャンスウ…とメガネをキランと光らせる。
チョ・ジョンスがゴールから投げたボールを鬼道に競り勝って取ったチェ・チャンスウはすぐさま上がるように、南雲、涼野、アフロディに指示してドリブルで駆け上がっていく。
おう!と返事をした3人を前に、立向居は誰がシュートを打つのかと視線と思考を巡らせる。
そんな彼の選択肢をひとつでも絞ろうと、DFの土方と壁山がゴール前へ立ち塞がった。
「どりゃあああ!!」
勢いよくスライディングを仕掛けた土方の上を軽々と飛び越えたチェ・チャンスウはそのままボールを蹴り上げてアフロディへとセンタリングをあげた。
「まずい!」
彼のシュートの味をよく知る円堂が慌てて叫ぶ。
白い翼の生えたアフロディは宙に浮き、美しいブロンドを振ってシュート体制に入った。
「真・ゴッドノウズ!」
はあ!とアフロディが叫びシュートがゴールへと向かい飛んでいく。
そのシュートをまっずくに捉えた立向居が両手を大きく広げた。
「ムゲン・ザ・ハンド!!」
背から沢山の腕が伸び、それらがボールを捕まえて立向居はがっしりと両手でボールをキャッチして、ふぅ、と息を吐いた。
「やったぜ立向居!」
自分の事のように円堂は立ち上がって喜ぶ。
「少しは上達しているようだね。……そうでなくては!」
シュートを止められたというのに、1度同じチームに居たからか立向居の成長にアフロディは嬉しそうだ。
「みんな、頑張ってくれよ…!」
祈るようにそう言って円堂はベンチに再び腰を下ろす。
そして、その表情は険しいものに変わり、立ってフィールドを見つめる久遠監督の背を見つめ出した。
キャプテン失格の意味かぁ。
『……監督を見つめてても答えはでないよ』
え?と円堂が振り向く。
『私を見ててもでないよ』
このくらいのヒントはいいだろう。
回りくどいけど、見るべきものは私や監督じゃないってこと、分かってくれるといいんだけれど。
「うーん……」
分からない、と言うように円堂は考え込み出した。
これは、もう少し時間がかかりそうだ。
さて、とフィールドを見れば、凄い気迫でスライディングタックルをかました豪炎寺がファウルを取られていた。
豪炎寺だけではなく、その後も気合迫った飛鷹が鬼道の指示が聞こえない程で、ひとりで突っ走った挙句、南雲と涼野の2人にボールを奪われてしまう。
「みんな、なんとか凌いで……」
攻め上がるファイアードラゴンを見て秋ちゃんが両手を組んだ。
「飛鷹さん…どうしてパスを出さなかったのかしら……」
ぽつり、と呟いた冬花ちゃんの義もに、秋ちゃんが、え?と聞き返す。
「緑川さんも、ヒロトさんもマークが付いてなかったのに」
そこの疑問に気づけるのは流石監督の娘さんだ。
『そうだねぇ。鬼道も指示出してたのに』
チラ、と後ろ目で久遠さんが円堂を見ている。
まあ、これで気づいて欲しくはあるよねぇ。失格の理由。
土方と壁山をワンツーパスで抜けた南雲と涼野の前に、FWの吹雪が最後尾まで戻って来て、ここは行かせないと立ち塞がった。
「スノーエンジェル」
囁くように言ったその響きとは裏腹に、強烈なその必殺技は、南雲と涼野の2人をまとめて氷漬けにした。
FW位置から戻って追いつける程のトップスピードと、相手の動きを封じてしまう強力なディフェンス。
そして、
「土方くん!」
「おう!」
止めたボールを持って駆け上がっていた吹雪は土方にパスをだした。
トラップしたボールを土方がドリブルし、2人はゴール前へと駆け上がった。
「行くぞ吹雪!」
「ああ!」
「これが俺たちの連携技ァ!」
土方が足を止めシュート体制に入ると、彼の前に回った吹雪がグンッと猛スピードで駆け出した。
それに合わせて力を溜めた土方がシュートを打てば黄色い稲妻のようなボールが吹雪の横を一瞬通り過ぎていく。
「うおおお!」
雄叫びをあげてボールに追いついた吹雪は、そのボールをゴールへと叩きつけるように蹴り飛ばした。
黒い狼が現れ、雄叫び上げ青い稲妻へと変貌したそのシュートは……
「まるで雷を纏って荒野を駆け抜ける獣…!名付けるならそう!」
「「サンダービースト!!」」
目金が命名するより先に、連携シュートを打った2人が叫んだ。
真っ直ぐ駆けていくボールに、ファイアードラゴンのチョ・ジョンスは、大爆発張り手を繰り出した。
どんどんと繰り返される張り手の最後が大爆発し、押されたチョ・ジョンスは後ろに倒れボールはゴールに突き刺さった。
《ゴール!!土方と吹雪の連携シュートがここで炸裂!先取点はイナズマジャパンだ!》
ピピーッというホイッスルと共に、わあっと歓声が上がる。
「流石、あの二人ならやってくれると思ってました!」
「すげーぜ!吹雪、土方!」
喜んだ円堂は、アレ?と監督を見つめている。
まあ、素直に喜べばいいと思うけど、そうはいかない理由もあるよねぇ。
フィールドを見れば、点を決めた2人の周りにみんなが集まっていた。
あれだけ目立っていればねぇ
私ならまず、吹雪から潰しに行くと思う。
攻守共に優れた吹雪は敵にするなら厄介だ。