世界への挑戦編
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ある日、円堂の元に一通の手紙が寄越された。
「差出人は……なしか」
便箋の裏表を円堂が確認するが、便箋は真っ白。
「誰からでやんすかね!」
興味津々と栗松が聞く横で、綱海が自身の後ろ頭に手を置きながら口を開いた。
「まっ、円堂じゃファンレターって事はねーだろうけどな!」
いや、分からんよと、秋ちゃんや立向居を見る。
「アンタの場合はもっとないけどね!」
ウシシシ、と木暮が茶々を入れる。
いや、綱海はモテるでしょ、と思っていれば、秋ちゃんがどうしたの?と円堂に訪ねていた。
「この、手紙……!」
開いた手紙を見て円堂は凄く驚いている様子で、気になった立向居と栗松が横から手紙を覗き込むと、2人はあっ!と驚きの声を上げた。
「この字は!」
「キャプテンの特訓ノートと同じ字でやんす!」
立向居と栗松のその言葉に誰もが驚いた。
その中でも1番驚いている様子なのが、FFIが始まってからマネージャーになった冬花ちゃんだった。
他の皆は、円堂の手紙の方に視線が向いていて気づいていないようだが、口を半開きにし、放心状態だが、瞳が酷く揺れていた。
そっと、彼女の手を取れば意識を取り戻したのか、彼女は、え、と呟いてこちらをみた。
「という事は……、この手紙は大介さんから……」
鬼道が話すのを聴きながら、冬花ちゃんから手を離す。
大丈夫?と目で合図を送れば彼女はぺこと小さく頭を揺らした。
「でも、円堂のおじいさんはもうずっと昔に亡くなって……!」
そう言ったのは、円堂の幼なじみである風丸だ。
風丸だけでなく、雷門イレブンの皆は影山に殺されたと知っているはずだ。
「なんて書いてあるの?」
特訓ノートと同じグルグルのぐちゃぐちゃの文字。1枚の紙にデカデカと書かれたそれが短い文章である事しか分からないので、秋ちゃんが聞いてくれて助かる。
「頂上で待ってる、って」
「頂上……」
じゃあ、と春奈ちゃんが口を開く。
「それってフットボールフロンティアインターナショナルのってことですか?」
「世界大会に参加するどこかのチームに大介さんが関わっているということか…?」
鬼道の考察に、風丸がでも!と異議を唱える。
「罠かもしれませんね」
もうひとり、自分の考察を告る人物に、皆は罠?と聞き返す。
「円堂くんを動揺させるためにわざとおじいさんの字を真似て」
揚々と語る目金に、それはないです!と立向居が食ってかかった。
「オレ!ノートは何度も見せてもらってますから!これは絶対!円堂さんのおじいさんです!」
「た、立向居くん!!じゃあ聞きますけどね!死んだ人がどーやって手紙を出すって言うんですか!」
わーわー!と目金と立向居の2人が口論を始める。
『あー、コラコラ喧嘩しない!』
掴み合いになりかける2人に割って入れば、2人の周りにいた他の子達も急いで彼らを取り押さえてくれた。
「ま、考えても仕方ないか!」
手紙を貰った本人がそう言うのだから、立向居も目金も、えっ、と動きを止めた。
「もし、この手紙がなにかの間違いならそれはそれだけの事だし。本物ならFFI、世界大会へ行けば会えるって事さ!それより特訓だ!今は決勝戦の事だけ考えようぜ!」
そう言って円堂は練習再開しようとフィールドへ駆け出していってしまった。
当の本人がそういうんなら、とみんなも納得して練習へ戻っていく。
そんな円堂の事を何ともいえぬ表情で冬花ちゃんが見つめている。
『円堂に特訓ノート見せてもらったんでしょ?』
多分私が瞳子さんと出かけた日に、冬花ちゃんと円堂のデートがあったはずだ。
「え、あ……はい」
冬花ちゃんはなんで知ってるの、と言うような顔をした後すぐに、そうだったと思い返したように頷いた。
『無理に思い出そうとする必要は無いと思うよ』
今はまだ、ね、と冬花ちゃんを見れば、彼女はポヤーっと私を見つめた。
うーん、感情の起伏が薄いから何考えてるのか分からん。
「梅雨ちゃん、冬花ちゃん?」
「2人とも見つめあってなにしてるんですか?」
秋ちゃんと春奈ちゃんが私たちを見て不思議そうに首を傾げている。
『ああ、うん。なんでもないよ』
そう答えれば、そうですか?と2人は首を傾げたまま、記録用のバインダーやカメラを取りにベンチの方へ歩き出した。
それを見て、私達も仕事しようか、ともう一度冬花ちゃんの手を取り、行こうと手を引くが、彼女は動かなかった。
『冬花ちゃん?』
「…私が、何を忘れているのか、水津さんは知っているんですよね」
秋ちゃんや春奈ちゃんに聞こえないように冬花ちゃんは小さく呟く。
『うん。でも、分かってると思うけど、教えられないよ』
「そう、ですよね……」
『大丈夫』
ぽん、と彼女のサラサラの紫の髪の上に手を置いた。
時間が解決してくれる
まだ、今がその時じゃないだけ。