世界への挑戦編
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瞳子さんはDNA鑑定を元に私の症状の改善策を探ってくれるらしい。
そういうわけで、DNAの結果が出るまで時間が掛かるし、正直な所、彼女には悪いが、そこまで期待をしていない。
たぶん、よくわかない結果が出てより詳しく調べる為にモルモットにされるのが落ちだ。
瞳子さんがそんな事させないだろうけど、それじゃあ結局進展はないだろうし。
どちらかといえばまだ、同じく協力してくれているヒロトの、過去に同じような人物が居ないかの調査の方が希望はあるかなぁ。
超次元な世界だし、異世界転生者の1人や2人は居そうだけど………。
『はあ……』
「水津さん?最近ため息多いですけど、大丈夫ですか?」
みんなの晩御飯の準備に、大根の皮を剥く私の横でこんにゃくを三角に切っていた冬花ちゃんが心配そうな顔をした。
『あー、うん。ちょっとね……』
「豪炎寺くんの事?」
そう聞いてきたのは、向かいではんぺんを切ってる秋ちゃん。
一時期は、私との接し方に悩んでいたみたいだが、この間来たリカちゃんや塔子ちゃんが変わらず私と接するのを見て、彼女の中で答えが出たらしく、すっかりぎこちなさは消え元に戻った。
『豪炎寺?』
私がため息吐いてたのは私自身の事だけど……、豪炎寺は、そうか。
「違った?豪炎寺くんの様子がおかしいからそのことだと思ったんだけど……」
『流石、秋ちゃん。よく見てるね。……そうね、それもあったか……』
「って、ことは他にもまだ何かあるんですね?」
そう訊ねてきたのは、ゆで卵の殻剥きをしている春奈ちゃん。
『そうだねぇ。まあ、言えないけどね』
「何でも知ってるって最初は羨ましいと思ったんですけど、梅雨先輩をみてると大変そうですよね……」
「歴史改変をしないように動くというのは、中々難しいものでしょうねぇ」
春奈ちゃんの言葉に同意するようにそう言ったのは牛すじ肉を竹串に刺す作業をしている目金。
『そうそう。私のせいでみんなの人生変わっちゃったら嫌だもん』
「いい方に転ぶんならまだしも、悪い方に転がったら……とは思いますよねぇ」
そう。それが本当に怖い。
私自身が、失敗した人生だったからこそ、ここの子供たちにそんな思いはして欲しくない。
『だから、こうやってひっそりとみんなのサポートにまわる。それが最良だと思うんだよね』
そう言えば何故だか秋ちゃんが嬉しそうに笑った。
『なに?』
「いや、だってちょっと前の梅雨ちゃんなら、私が関わらない事が1番とか言ってただろうから、みんなのサポートをって言ってくれるのが嬉しくって」
本当に嬉しそうに秋ちゃんが言うものだから、うっと言葉に詰まる。
「トレーナーの仕事を受けてくれたのもそういうことだったんですね」
ニッコリと冬花ちゃんまでこちらを見て笑っている。
『だ、だって関わらないはもう無理じゃない』
「まあ、無理ですね!」
ニコニコと春奈ちゃんも笑っている。
『なら出来ることやる方がいいじゃん。みんなの為になるなら』
「ふふ。そうね」
『ほらもう。そういうわけだから、みんなのためにご飯作るよ!!』
女の子たちに微笑ましい目を向けられるのに耐え兼ねてそう叫ぶ。
「そういえば今日なんでおでんなんですか?季節的にまだ早くありません?」
私を哀れに思ったのか目金が気を利かせて話を変えてくれた。
『レトロモダンな食べ物だからだよ』
なんて、答えになっていない答えを返して調理を進めていくのであった。
美味しく出来た夕飯を終えたあと、いつもの様に夜練に出る者達、合宿所の外へと出掛ける者達を見送って食器類の片付けをして、それから残りの仕事に取りかかろうしたところで、珍しい子がやって来た。
『あれ、豪炎寺。今日は夕香ちゃんの様子見に帰らなかったの?』
夕香ちゃんが退院してから豪炎寺は、着替えを取り帰ると言う名目で自宅に帰っているのだが……。
「流石に毎日は帰らないさ」
そう言って豪炎寺は食堂の中に入ってきて、席に座った。
『そう。でも、どうしたん、こんな時間に。晩御飯足りなかった?』
豪炎寺が夜食を貰いに来ることなんか滅多にない。
壁山なんかはしょっちゅうだが。
「いや、十分だった。ここに来たのはお前と話がしたくてな」
話、と言うのは秋ちゃんが言っていたように豪炎寺の様子がおかしい原因の事だろう。
『いいよ。答えはあげられないけれど』
そう言って私は豪炎寺の正面に座った。
「あぁ、俺の事じゃなくて水津の話を聞きにきたんだ」
『私の?』
てっきり、彼が父親に言われている医者になるためのドイツ留学に関する相談だと思っていた。
「水津はフリースタイルフットボールのプロを目指していたんだろ?親に反対されたりしなかったのか?」
ああ、でも、やっぱり関わりのある話だ。
『されたよ、当然。フリスタなんてメジャーなスポーツじゃないし余計にね』
「それでもプロを目指したのか?」
『まあね。でも、私はご存知の通り失敗しちゃたわけだけど』
半笑いでそう答えれば、豪炎寺は眉をひそめた。
『親の言う通りプロなんて目指さなきゃ、あんな大怪我して足に麻痺が残るような事もなかっただろうし、働きながらも趣味でボールを蹴るくらいは続けれただろうね。あの一瞬で全てが無駄になった。そう思っていたけれど……』
ど?と豪炎寺が私を見つめる。
『響木さんに言われたんだ。私が練習した過程で覚えたこと、知ったこと。ボールの蹴り方1つにしろ筋トレ方にしろ、それを今、円堂たち教える事で使っている。例え自分の為にはならなくなったとしても、完全に無駄にはなってないだろうって。そこで初めて気づいたよ』
私はあの世界で、もうフリースタイルフットボールに、サッカーに関われないとずっと思っていたけれど、トレーナーって道もあったんだなあって。
『だから今こうやってみんなのトレーナーをやらせてもらってる』
「今までやってきたことは完全に無駄にはならないか……」
『うん。だから豪炎寺がどっちを選んだって無駄にはならないと思うよ。サッカーを選べば今まで得たものをそのままに。医者を選んでもスポーツドクターという点でサッカーに関わることだってできる』
「……そうか」
ありがとう、そう言って豪炎寺は立ち上がる。
「明日の昼、少し出掛けてくるよ」
それだけ言って豪炎寺は、食堂を出ていったのだった。
心を決めた顔
どちらを選ぶかは彼次第だ。