世界への挑戦編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
日本代表選抜試合当日。
『うんうん、みんなよく似合ってんね』
白いユニフォームに身を包んだBチームの選手たちを雷門サッカー部の部室から試合会場であるグラウンドへと送った後、私はひとりその中から抜けようとした。
「水津!どこ行くんだ?試合もうすぐ始まるぞ」
体育館で着替えてきた青いユニフォームのAチーム達がぞろぞろとやって来て、それを率いる円堂が声をかけてきた。
『ああ、私は今日はベンチに入らないよ』
「なんでだよ」
そう言ったのは円堂の隣に立つ染岡だった。
『来賓案内〜。夏未ちゃん居ないからね』
「あー」
「急だったよな。雷門のやつ留学だなんて」
まあ、私は元々知ってたのもあるし、事前に相談されてたから全然急じゃなかったんだけど、みんなは昨日夏未ちゃんが旅立った事を知ったわけだから急だよねぇ。
『それでお嬢様の代わりの仕事が私に回って来た分けさ』
「雷門の秘書だもんな、お前」
そう言った染岡の言葉に笑う。
『まだ言ってんのそれ。まあ、近くじゃ見れないけど応援してるから頑張ってね』
そう言って手のひらをヒラヒラと振って、じゃあね、とその場を離れる。
選抜選手たちの在校している学校から沢山の生徒達が応援に来ている。
それらの案内は一通り終わっていて、皆グラウンドを囲うように設置された観覧用ベンチには既に満席状態だ。
『冬花ちゃんごめんね、座席用意できなくて』
そう紫の長髪の少女に声を掛ければ、彼女は横に首を振った。
「大丈夫です。ここからなら良く見えますし。ね、お父さん」
彼女がそう言ってその隣に立つ髭面の男を見上げるが彼は、ああ、と小さく返した後、開始のホイッスルがなったフィールドを真っ直ぐ見つめた。
私もそれに倣ってフィールドを見つめる。
雷門のグラウンドは掘り下げられて作られているから、周りからの観戦がしやすくなっている。
試合は知っている通りに進んでいった。
それぞれがレベルアップした自分の技で戦い、因縁のある面々も同じチームとしてそれなりに連携を取っている。
だが、フィールドを見つめる久遠さんの表情は険しい。
「事前情報通りだな」
選考用にと各選手の性格、プレイスタイル、必殺技などひとまとめにして、久遠さんには渡してある。
できるだけ私情を挟まないように書いたつもりではある。
試合はヒロトの流星ブレードを栗松が頭を抱えてしゃがんで避けてゴールを決められたり、不動が武方に対してオフサイドトラップを仕掛けたり、飛鷹のぎこちない動きを綱海がカバーしたり、豪炎寺や染岡が点を決めたり、シュートチャンスに虎丸がバックパスをしたりしてハーフタイムへと入った。
「これが日本代表候補とはな」
若干呆れを含んだように久遠さんが呟いた。
「お前が子供たちと呼ぶ理由がよく分かった」
『まあ、実際に子供ですからね』
ここまで見て思うのは自分を選んでくれ!と自己主張の激しい子が多い。その為、活躍を見せたあとのドヤリで、気を抜いてボールを奪われる子のなんと多いことか。
そういう所を見て、久遠さんも子供だと思ったのだろうなぁ。
後半戦に入っても、久遠さんの厳しい目は変わらなかった。
風丸のシュートを止めた円堂が、笑いながらいいシュートだと褒め讃えているのを見て、冬花ちゃんは楽しそうという感想をくれたのだが、久遠さんは無反応でフィールドを見下ろしている。
「水津、お前ならこのどちらかに属していたとしてどう動く」
『え、私?』
私はならどう動いただろうか。代表選抜という舞台で。
円堂のように皆を鼓舞する?
鬼道のように皆に指示を出す?
染岡や松野、目金、武方のように自分を大きくアピールする?
不動のように知的な戦略を練る?
佐久間のように目の前の仇に執着してしまう?
栗松や壁山のように緊張する?
綱海や木暮のように楽観的にこの試合を楽しむ?
豪炎寺やシャドウのようにストイックにシュートをうちに行く?
土方のようにどっしり構える?
いや、恐らく虎丸と同じかもしれない。周りを立てるように動くかも……。
『あくまでも本来、私が居ないということを知っている今の状態でなら、ですけど……。他の選手たちのサポートに回ると思います』
エイリア学園戦でも、そうやって戦ってきたし。
「なるほどな」
そう言って久遠さんはフィールドを見つめ直した。
『えっ、参考にしないでくださいね?』
私のせいで本来の選考と変わるなんてあってはならない事だ。
『ねえ、ちょっと聞いてます?』
久遠さんは顎に手を置いて、じっとフィールドを見つめて返事をしない。
ダメだこりゃあと諦めて、フィールドに視線を戻す。
試合は終わりに向けて白熱していた。
綱海のツナミブーストを風丸、木暮、栗松の3人がかりでブロックし跳ね返ったボールを鬼道が取ろうとした所を佐久間がカットしヒロトへボールが渡る。
立ちはだかった目金の目前でヒロトはシュートを行わず、吹雪へとパスを出した。
受け取った吹雪は間髪入れずにウルフレジェンドを打った。立向居がムゲン・ザ・ハンドで立ち向かうがゴールを割られて、3-2でAチームの勝利で試合が終わったのだった。
試合の終わったグラウンドで力を出し切った選手たちはぐったりと座り込んでいる。
『決まりましたか?』
「……ああ」
頷いた久遠さんの顔は変わらずフィールドを見つめていたのだった。
選考
振るいにかけられたのは………。