世界への挑戦編
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もう一度、プロを目指せる。
円堂のその言葉に、そうだねと返しながら、もう時期に自分は消えるから無理な話だなと考える。
染岡が何か言いたそうにこちらを見た。最近妙に目ざといから、また隠したことに気づかれたかもしれないな。
それでも、何か言いたげではあったが、染岡は何も聞かないでいてくれた。
それからは普通に勉強会が終わり、日もすっかり落ちた頃、みんな部屋を出ていきぞろぞろと木枯らし荘の階段を降りていく。
勉強から解放されて大喜びで駆け下りる円堂の後を笑いながら一之瀬がついて行き、その後ろを影野がついて降りる。
そして最後の染岡は、階段を降りる前に足を止めた。
『忘れ物?』
そう聞けば染岡は、いや、と首を振った。
「……もう一度プロ目指せよ。応援してっからよ」
それだけ言って、照れ隠しのように染岡は素早く階段を掛け降りていった。
『……もう目指してないってやっぱりバレてたか』
そういうのに気づくのって、夏未ちゃんや鬼道ぐらいだと思っていたけど、最近の染岡は本当に侮れない。
それにしても応援してる、か。
フリスタなんてチャラチャラしたお遊び、なんて言ってたあの染岡が。
好きな事をやる自分を応援してもらえるなんて、こんなに嬉しいことはない。
ない、のに………。
私にはもう、その挑戦を行うことすらできない。
『応援、か……』
嬉しい気持ちは底にしまって、私は4人を玄関で見送るため、急いで階段を降りたのだった。
「えっと、それで……話ってなにか、な?」
未だ友達になった私が歳上だったせいでどう接するか戸惑っていそうな秋ちゃんをテストで早く終わった放課後呼び出した。
最初にそう声を掛けたら、話?と困ったような顔をしていたが、今も同じ顔をしている。
『秋ちゃんはさ、アメリカにいた時はプレイヤーだったんでしょ?』
「えっ、確かにそうですけど……」
私が歳上なことに戸惑っている彼女はこうやって時々敬語になる。礼儀がきちんとしているからこそだろうなぁ。
『もう選手としてボールを蹴る気はないの?』
「え……?」
秋ちゃんは一瞬驚いたような表情になった後、真剣な表情へと変わった。
「私は、一之瀬くんのことがあって1度やめちゃったから……」
『でも、一之瀬は今、元気になってサッカーしてるじゃない?』
「うん。でも、やっぱり一度離れてしまったってのは大きくて……」
ああ、わかる。私だって怪我をしたのが18の頃で、10年近くボールから離れていたわけだし……。
「でもね、どんな土砂降りの中でもサッカーをしてる円堂くんを見た時、応援したいって思ったの」
『そっか。それでマネージャーか』
うん、と秋ちゃんは力強く頷いた。
「私はもう選手にはなれないけれど、何か力になれたらなって」
『力に、か……』
「あの……もしかして、なにか悩んでるの?」
突如考え込んだ私に、秋ちゃんは少し不安そうな顔で聞いてくる。
『うん。少し悩んでたんだけど、秋ちゃんの話のおかげで決めたよ』
私もみんなを応援したい。
私の夢は叶わないけれど、みんなの夢は叶うから。
答えはYES
その日、トレーナーを引き受けると久遠さんに連絡をし、瞳子さんにもらった教本を再び読み漁りだしたのだった。