フットボールフロンティア編
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野生中ボールでスタートした後半戦は、蛇丸のスネークショットを円堂が何とか熱血パンチで弾き前線へボールを送った。
それに合わせて豪炎寺が跳び上がり、壁山の名を呼んだ。
「...っ、」
1歩遅れて反応した壁山が、足を縺らせて転んだ。
『壁山!?』
そんなシーンあったか?いや、私が下手に関与したせいか...。
転んだままの壁山は起き上がろうとせず地に伏せたままだ。結局跳び上がった豪炎寺の上を跳んだ鶏井にボールを奪われてしまい、野生中選手達が上がってくる。
「何度上げてもらっても......こんなところ転ぶし...やっぱり俺には無理っス...」
いや、私ひとり関与した所で大きくは変わらないか。結局メンタルも折れたままじゃないか。
野生中からの激しいシュートラッシュを、円堂が腫れた手の痛みに耐えながら防いでいく。
それを見てか、風丸を筆頭にフィールド内の雷門選手達が野生中選手達相手に必死にディフェンスにつく。
『みんなの動き良くなったね。複数でプレスか』
「所謂ゾーンプレスですね」
目金って運動得意ではない割に、サッカーの事ちゃんとしってるんだよね。やっぱ兄弟の影響かな。
「確かに有効な戦術だが、相手以上に動き回るからドンドンスタミナ使っちまう...。前半でかなり体力を消耗してんのに、やっぱアイツの頑張りがみんなを...」
染岡の視線の先にいる円堂は、疲れも手の痛みも感じさせないよう、ニッと笑っていた。
それどころか、すげーぞ皆!と他人を鼓舞している。
そんな円堂に感化され、DFもMFも全力でプレイしている。
「目を開けろ壁山」
前線にいる豪炎寺が地に伏せたまま目をつぶっていたの壁山に近づいた。
豪炎寺の強い言葉に恐る恐ると言った様子で顔をあげ、目を開けた壁山は、フィールドを走り回る雷門選手を目に止めて、ハッとしたような表情を浮かべた。
「みんな疲れてるのに...キャプテンはあの手でシュートの痛みに耐えてる。誰も諦めようとしない。何故っス?何故そこまで!!」
「信じているからだ。俺たちが点を取るって、本気でな!目を閉じるって事はあいつらの信頼を裏切るって事だ」
豪炎寺の言葉にハッとした壁山がもう一度円堂を見た。水前寺からのパスで五利がターザンキックを放った。円堂はそれをゴッドハンドでがっちりとキャッチした。
『壁山ー!!!胸を張って深呼吸ー!!!』
大きな声で叫べば、聞こえたのか壁山は顔だけこちらに向けて、頷いた。自身の胸に手を多いて大きく息を吸い、吐いた。そして、堂々と立ち上がって野生中ゴールへと走り出した。
「壁山ッ!!」
円堂から前線へとロングパスが蹴られる。
今度はタイミングを合わせて、壁山も豪炎寺も飛び上がった。
しかし、また恐怖からか壁山が目を瞑り身体を縮こませてしまう。
「ぐっ......オレに出来ること...」
『壁山!!堂々胸を張りなさいッ!!』
「!!、それっス!!」
ぐん、と壁山は大きく身体を逸らして上を向き胸を張った。
そしてその胸と共に突き出すようになった壁山のお腹を台に豪炎寺が2段ジャンプをし、オーバーヘッドキックを決めた。
炸裂したイナズマ落としは野生中ゴールへ突き刺さった。
そして、1点先制と共に試合終了を告げるホイッスルが鳴り響いた。
「やった!」
「1回戦突破ですよ!!」
キャッキャと手を取り合って秋ちゃんと春奈ちゃんが喜んでいるベンチにもっと喜びに溢れた選手達が戻ってくる。
『お疲れ様。はい、タオルとドリンクね』
皆に配っていく端で円堂と壁山がハイタッチを交わした。
「いってぇ...」
「だ、大丈夫ッスか?」
グローブを脱いで円堂は真っ赤に腫れ上がった手をふーふーと吹いた。
その手にぴとり、と氷の入った袋が当てられた。
「えっ、氷...?」
円堂の手に氷を当てていたのは夏未ちゃんでみんな驚愕していた。
「サッカーなんかにそこまで情熱をかけるなんて、バカね」
そう言って夏未ちゃんは氷を円堂に持たせる。
「バカってなんだよ!」
憤慨した円堂をふっ、と鼻で笑った夏未ちゃんは彼をそのまま無視し、私の側に来た。
「水津さんと染岡くんはうちの車に乗りなさい」
「はあ?どういう風の吹き回しだよ」
「別に貴方のためじゃないわ。水津さんの事だから彼を病院に送る気でしょう」
さすが夏未ちゃん、察しがいい。多分捻挫だろうけど、万が一骨折してたらいけないので、本人が嫌がっても無理やり病院連れていこうと思ってたところだ。
「だったら、1回バスで帰って学校を経由するよりうちの車で送った方が早いわ」
『はー、夏未ちゃん好きだわ』
「なっ、なに言ってるのっ!!」
顔真っ赤にして怒ってる夏未ちゃんも可愛いな。
「もう!とにかく車を回してきますから2人はこちらで待っていなさい」
ふん、と踵を返して夏未ちゃんは行ってしまう。
「生徒の皆さん、片付けてバスに乗ってください」
試合中どこに行っていたの分からない冬海先生がどこからが現れてそう言って帰り支度を促す。生徒達が1勝上げたというのにその顔は青く汗が吹き出し、喜びとは真逆の表情である。
喜びに浮かれているみんなはそんな事に気づきもせずに帰り支度を始める。
真っ黒な高級車が狭い山道を登ってきて、グラウンド前についた。助手席の窓が開き夏未ちゃんが顔を出す。
「さ、後ろに乗ってちょうだい」
『はーい。じゃあ、染岡腕私の肩に回して』
「は!?」
『足痛めてるんだから遠慮しないでいいよ』
「いや、そうじゃなくてだな...!」
そう言って染岡は、なぜだか頬を染めた。
『...?』
ああ、そうか。女の肩なんぞ借りれるか!ってタイプだもんね。
「しょうがねぇなぁ」
見かねた半田がそう言ってやって来た。
「染岡を車まで連れてけばいいんだろ」
ほら、手回せよそう言って半田が右側に立つと染岡はあっさりその方に掴まって2人は進み出した。
『男の子ってずるいなぁ...』
すぐ女子を除け者にする。私も男だったら肩貸しても嫌がられなかったのかなぁ。なんて、感傷に浸りながら2人よりも先に車のドアを開けるため走るのだった。
勝ち星をあげて
まあ結局のところ、車から降り病院に入るのに肩を貸すことになったのだけれど。染岡の仕方なく借りてやってる感はなかなか面白かったな。