世界への挑戦編
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響木さんとの約束の日。学校が終わってすぐに雷雷軒に向かい、のれんのかかっていない扉を横に引いた。
『こんにち、……は?』
響木さんが待っているだろうと思って開けた視界の中に飛び込んできたのは、左目を前髪で隠し、伸びたもみあげと顎髭が繋がった特徴的な男性と、長髪をハーフアップにした青いベストの制服を着た少女だった。
……みんなよりも先に会うとは思わなかったな。
「来たか、水津」
男性たちの奥から響木さんが顔を覗かせた。
「響木さん。この少女が例の……」
「そうだ」
どうやら響木さんからなにかしらの説明をされてるらしい。
『どうも、水津梅雨です、久遠さん』
そう言えば、彼は見えている右目を見開いて、驚いた顔を見せた後、響木さんに視線を移した。
「俺は一切伝えていない」
『ええ。だからびっくりしましたよ。なんで久遠さんと冬花ちゃんが居るんですか?』
私の事も?と言うように、久遠さんの横で静かに少女も驚いていた。
『まあ、9割FFIの事だとは思いますけど……』
そうだ、と響木さんは頷いた。
「FFI開催まで3ヶ月を切った」
『……メンバー選出に口出しはしませんし、試合結果も教えませんよ』
じろり、と響木さんを見ながらそういえば、彼は愉快そうに笑った。
「分かっている。お前はそういう奴だ」
「変わっているな。その力があれば好き勝手にする事もできるだろうに」
『はは………』
まあ、そりゃあやろうと思えば出来るでしょうね。今までだってそうだし。でも、
『私は慎重派なんですよ。1回人生で失敗してるんで。リスクマネジメントです』
「なるほど。本当に子供ではないのだな」
そうだね。子供だったら、この状況、自分の好き勝手にしていたかもしれない。それこそ好きなキャラに囲まれてチヤホヤされるようにするとかね。
「どうだ?適任だろう」
響木さんはそう久遠さんに聞いた。……私が適任とは、なんの話だろうか。
「そうですね」
『なんの話です?』
「先程言った通り、行われるFFI。お前に日本代表のトレーナーを頼みたい」
『はい?』
え?日本代表のトレーナー???
「先のエイリア学園との戦いで、選手とトレーナーを兼任ていたと聞く。その実力は申し分ないと、響木さんからも、吉良瞳子監督からも太鼓判を押されている」
響木さんは、まあこの場にいるから分かるけど、瞳子さんも!?過大評価し過ぎじゃない?私、素人だぞ。
『アレは公式戦じゃないから問題なかったでしょうけど、資格がない私がトレーナーを名乗るのは問題あるんじゃないですか?』
「いや。FFIはサッカー少年たちの為の大会だ。サッカーをプレイするもの、それをサポートするものの成長の場としてと考えられているため、ルール上、事前の申請があれば学生が監督やコーチ、トレーナーを務める事も可能だ」
まじ?……相変わらずの超次元だなぁ。いや、それで片付けてしまっていいのか?
『トレーナー、かぁ……』
「自信が無いか?」
『そりゃあ責任重大ですし………』
健康管理、メンタル調整、怪我のケア。
全てプレイに影響を及ぼす重要な仕事だ。
はい、やります!とは簡単に返事はできない。
「そうか。そのくらい慎重な者の方が我々も信頼がおける。FFI開始まで3ヶ月を切っている。出来れば1ヶ月以内に返事をもらいたい」
『……わかりました。持ち帰って検討させていただきます』
どうするかな、これ。
エイリア学園の時とはわけが違う。何せ日本代表だ。失敗は許されないし、なにより、自分がいつ消えるかも分からないのに引き受けてしまっていいものか……。
悩みの種がまたひとつ
みんなのためになるのなら、そう思う自分がいるのも確かだ。