脅威の侵略者編
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風丸が蹴ったボールを円堂がキャッチしようとしたが勢いで後ろに押され倒れた。
手から離れ、ゴールへ入ろとしたそのボールを円堂は倒れながらもめいっぱい頭上に腕を伸ばして、何とか白線を超えるギリギリ手前で掴み取った。
「なっ」
腰から落ちた円堂は、痛みから歯を食いしばっている。
「ぐっ、」
ゆっくりと起き上がった円堂は、はあ、と息を整えながら、真っ直ぐに風丸を見た。
「………!…風丸?」
何かにハッとしたように、円堂が彼の名を呼ぶ。
「お前、どうしてエイリア石なんかに」
純粋な疑問、と言うように円堂がぶつける。
「俺は強くなりたかった。お前のように!」
………北海道の頃からずっと風丸は悩んでいた。
それを、誰よりも早く風丸は円堂に伝えていた。
やっと気がついたのか、円堂は顔を曇らせボールを見つめた。
円堂自身も一度、福岡で折れたのだから風丸の気持ちが分からないわけではないだろう。
何を思ったのか、円堂はボールを風丸を足元に転がるように投げた。
「なっ、」
「来い!お前の全てを受け止める!」
舐められたと思ったのか、風丸は悔しそうに歯を食いしばりながら、大きく足をボールへ振り下ろした。
「うおおおおおおお!!」
雄叫びを上げながら蹴られ、飛んできたボールを前に、円堂は拳を握った。
「ゴッドハンド!」
「なに!?」
パッ、と開かれた手から放たれた金色の手。
彼の原点とも呼べるその技に、皆驚いた。
円堂のゴッドハンドは、がっちりと飛んできたシュートを受け止めた。
はあ、はあ、と肩で荒い息を吐きながら、円堂はまたボールを風丸へと投げた。
「風丸……!思い出してくれ!」
「黙れぇぇええええ!!」
来い、と風丸が栗松と宍戸を呼ぶ。
「「「トリプルブースト!!!」」」
怒りに塗れた風丸は、今度は3人での必殺技シュートを打つ。
だが、円堂はそれにも、原点のゴッドハンドを使った。
眩い金色のゴッドハンド。
『………綺麗だな………』
「く………くッ……!!」
歯を食いしばり、必死の表情で円堂はボールを受ける。
「思い出してくれ、みんな。俺たちのサッカーを……!!思いだせぇええええ!!」
押されて円堂の足が、白線の外へでる。
だが、ボールを掴む両手は白線の内側だった。
何とかゴールを死守した円堂はそのまま前へと倒れた。
「円堂くん!?」
「勝負はついたな」
満足そうに、だけど、どこか寂しそうな表情で風丸がそう呟く。
「円堂……!」
「ついに、ついに、円堂も限界……!?このまま終わってしまうのか……!!」
絶望したような実況の声に、夏未がベンチから立ち上がった。
「立ちなさい!!立ち上がって!!」
必死に叫ぶが円堂は倒れたまま。
他の選手達も疲労と、絶望感からか動けないでいた。
『風丸。まだ、試合は終わってないよ』
「何を言ってるんだ。どう見たって俺たちの勝ちじゃないか」
バカを言うなというように風丸はこちらを向いた。
『終わってないよ。だって、円堂はまだボールを持ってる』
円堂は倒れたままだが、彼の手の中にはボールが収まったままだ。
「……そうよ。まだ終わりじゃない……!」
そう言って1人の少女が立ち上がった。
「雷門!雷門!雷門!雷門!」
両手を口の前で拡声器のように開いて、大きな声で秋ちゃんが叫ぶ。
それに続いてベンチにいた、春奈ちゃんも、リカちゃんも、目金も同じように雷門コールを始めた。
それだけじゃない。
恐らく中継を見て、雷門中へと駆けつけてきた人々が、校門の方から、雷門コールを叫んでいる。
いや、きっと、この場にいる人だけじゃなくて、中継をテレビで見ている人たちも。
昔、私が画面越しに彼らを応援していたように。
「なんだこれは、うるさい!黙れ黙れ!!」
研崎が子供のように叫ぶ。
そんなことでこのコールが止むことはなかった。
「円堂……!」
「円堂!!」
「円堂ー!!!」
「キャプテン!」
「円堂さん……!」
気を取り戻したチームメイト達も、起きろというように円堂の名を叫び出した。
「……くっ、……まだまだ、終わってねーぞ!」
何とか起き上がった円堂がボールを風丸に投げつける。
「ぐっ……。うおおおおおおおおおおお!!」
風丸の雄叫びに呼ばれたように駆け寄った染岡と松野と共に彼はボールを上空へと蹴り上げた。
3人が飛び紫色の羽を広げる不死鳥となったそのボールを蹴り落とした。
「「「ダークフェニックス!!!」」」
「だあああああああ!!!ゴッドハンドおおお!!!」
今一度、円堂はゴッドハンドで立ち向かった。
今度は倒れることなく、完全に、完璧に、必殺シュートを受け止めた。
そして、そのボールを円堂は高く掲げた。
「思いだせ!みんな!!!」
ボールから温かく眩い光が放たれた。
サッカーやろうぜ!
始まりの言葉。