フットボールフロンティア編
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怪我をした染岡に代わり土門がフィールドに入る。しかしながら染岡はFWで土門はDF。代わりに壁山がFWの位置に配置されたのだが...、ベンチの位置からでも分かるほどに壁山は緊張からか震えている。
『大丈夫かな...』
「結局イナズマ落としも完成してないですしね」
春奈ちゃんも不安そうにそう言って、秋ちゃんが両手を結ぶ。
「壁山くん頑張って」
「うし、気合い入れて応援すんぞ、目金!」
『いや君は寝てろ!!』
応援しようとする染岡をベンチへと押さえつける。
患部を包帯で巻いて圧迫しているので鬱血しないように心臓より高い位置にしないといけないのだ。何のためにベンチを片付けてねっ転がらせてるのか分かってないな。本当は近くの病院に一応診てもらうために送った方がいいと思ったのだが、使えないことに顧問であるはずの冬海先生の姿が見つからず、バスの運転を買ってでてくれた古株さんに連絡が出来ないので仕方がない。
「いや、けどよ」
『けどじゃない。硬いベンチの上が嫌ならお姉さんが膝枕してやろうか?あ?』
「膝まっ...!!要らねぇよ!そんなもん!!」
そう言って染岡はふて寝をするかのようにベンチに横になった。
いやはや、扱いやすいな染岡は。
静かになった所で、試合再開のホイッスルが鳴り響く。大鷲のスローインから受け取った6番の香芽がドリブルで攻め込んできた。その前に立ちはだかるは、代わりに入った土門だ。
「キラースライド!!」
土門は足を何度も突き出すような動きでスライディングを放ち、香芽からボールを奪い取る。
『本当に隠す気がないな。いやただのガバなのか?』
「水津さん?」
呟きを聞いてか不思議そうにこちらを見てきた秋ちゃんに何でもないよと首を振る。
『土門いい技もってんね』
「そうね。私もビックリ」
『前の学校の技かな』
「そうかも」
ここで帝国の技だと気づくのが前年度のフットボールフロンティアに参加したことのある豪炎寺だけだし、誰一人として転校してきた土門に前の学校の事聞かないんだもんなぁ。まあ、皆、野生中戦に集中してて他のことに興味なかったのかもしれないが。
土門からゴール前にボールが上がり、豪炎寺がいくぞ!と壁山に声を掛ける。
は、はいと返事をした壁山がジャンプし、それに合わせて豪炎寺も跳んだ。その後ろから鶏井が跳び豪炎寺の高さを軽々と超えた。この高さならイナズマ落としの2段ジャンプで越えられるが...
「壁山!」
「ヒィッ...」
やはり、壁山は高さにビビって身体を縮こまらせてしまい、豪炎寺は彼の頭を踏むことになり、失敗する。
「「サクの兄ちゃんかっこ悪ぃ」」
雷門側を応援してくれていた、子供たちからそう声が上がり、サクくんはすっかり涙目だし、壁山はやっぱり無理だと弱音を吐いている。
その後も円堂がゴールを守りボールを奪い返し、イナズマ落としにチャレンジするものの失敗しボールを奪われ...円堂がゴールを守りを幾度も繰り返す。
『豪炎寺の方はジャンプも着地も安定してるけど...』
「壁山くんが...」
元より高いところが怖くて縮こまっていたのに、失敗が続く事で更に彼を縮こまらせてしまっている気がする。
恐怖心ばかりは本当にどうしようもないが...。
『どうにかメンタルだけでも回復出来たらな...』
「そうですね」
じっと、試合を観る。またイナズマ落としに失敗して、ボール奪われた。鶏井が拾ったボールが水前寺に渡り、足の早い彼が雷門選手達を抜き去り、大鷲にセンタリングをあげる。大鷲が放ったシュートを円堂が弾く、弾かれたそのボールを野生中10番蛇丸が取り、シュートの体制に入った。
「スネークショット!」
蛇のように畝りながら飛んできたボールを円堂が何とかセーブし、ここで前半戦終了のホイッスルが鳴り響いた。
得点は0対0だが...、野生動物のような彼らの動きに翻弄されている雷門選手達は圧倒的に疲弊している。対する野生中選手達はまだまだ全然元気そうだ。
「あ、染岡さん、寝てないとまた水津先輩に怒られますよ!」
選手達がフィールドから戻ってくる中、ベンチに寝かせていた染岡が起き上がって春奈ちゃんが注意する。
「いや、今試合に出てるこいつらを少しでも休ませた方がいいだろ」
『...そうね。あ、みんなタオルとドリンクね。しっかり水分補給して』
マネージャー3人で皆にタオルとドリンクを配っていく。
『円堂はベンチ座って』
「ああ。ありがとな」
『秋ちゃん。円堂の手、診て』
「えっ、あ、はい!」
秋ちゃんは慌てて救急箱を取り、ベンチに座った円堂の前に行く。
『みんなも極力座って、体力温存して』
ベンチに座れなかった者もとりあえず芝の上に座らせる。
「やったな!皆!」
秋ちゃんに真っ赤に腫れた手を冷やして貰いながら、円堂がそう言えば、何言ってんだ?と皆が円堂を見つめた。
「コテンパンじゃないか」
「でも!同点だぜ!あんな凄い連中相手にだ!」
感心するほど円堂はメンタルつよつよだよなぁ。
その強さが壁山にもあればなぁ。そう思い大きな身体をしょぼんと小さく沈めている彼に近寄る。
「水津さん...」
『壁山、痛いところはない?』
何度も高いところから着地失敗してお尻から落ちてるし、大丈夫だろうか。
「はい...怪我はないっス...」
うーん、怪我もないけど元気もないなぁ。
「あの、俺をディフェンスに戻してください」
「壁山、」
「ダメなら交代させて下さい。俺にはイナズマ落としは出来ないっス...これ以上ボールを上げてもらったって...」
そんな壁山の言葉を円堂が、いいや!と否定した。
「ディフェンスには戻さないし、交代もさせない!俺はお前と豪炎寺にボールを出し続ける!」
えっ、といった表情で壁山は円堂を見つめた。
「高いのが怖いって言いながらお前、あんなに努力してたじゃないか!精一杯やった努力は無駄にはならないよ!きっと身を結ぶさ!!だから、何度でもお前の所にボールを上げ続ける!いいな!!」
「でも、俺は...」
しょぼくれたままの壁山の両肩に手を置く。
「水津さん?」
『皆ぼちぼち試合再開だろうからフィールドに戻る準備して』
壁山を押さえつけたまま、そう言えば、皆はタオルやドリンクをマネージャー2人に預けていく。
壁山の横にいた豪炎寺が、じっと見つめてくるので思わず笑う。
『先行ってて』
「...、任せる」
そう言ってフィールドに向かっていった豪炎寺を筆頭に、ドリンクなどをマネージャーに渡し終えた選手からどんどんとフィールドに出ていく。そうすれば押さえつけられ座ったままの壁山はオロオロキョロキョロしだした。
「え、あの...俺も」
『なんだ。試合に出る気あるじゃない』
肩を押さえていた手を話せば、壁山はゆっくりと立ち上がる。
「それは...キャプテンが...」
『交代させないって言ったから?それとも...、信頼してくれてるから?』
「...、俺はあんなに、信頼してもらっても」
『そうだね。円堂のはちょっと強引すぎるよね』
ぽんぽんと、立ち上がったその大きな背中を叩く。
『私もね、アクロバットやる時めちゃくちゃ怖いよ。失敗して、落っこちたら、怪我したらどうしようって』
「水津さんでも...?」
『うん。怖かったり、緊張したりする時は、大きく深呼吸して、肺に酸素を取り込むの。やってみ』
「スー、ハー」
大きな音を立てて壁山が呼吸を繰り返す。
「こうっスか?」
『うん。ほら深呼吸したことで、丸まってた背中もシャキッとしたね。イナズマ落とし、出来なくてもいいよ。でもさ、弟くんも応援してくれてるんだからせめてフィールドの上で堂々胸張ってなさい。じゃないと、応援してくれてる弟くんにも、一生懸命練習した過去の自分に失礼だよ』
「堂々と...失敗してもいいんっスか」
『いいよ。それで試合に負けちゃってみんなが怒っても私が庇ったげる。その代わり、約束。フィールドの上で堂々と胸を張ること』
「水津さん...」
そう言って瞳をうるうるさせた壁山の背中をフィールド側に向かってずいずいと押す。まあ私が押してもビクリともしない。
それでも押し続けていれば、壁山が自分の足で一方踏み出した。
『いい、緊張したら、』
「深呼吸っスね...。スー、ハー。よ、よし、い、行ってくるっス」
まだ少し硬いが、それでもまあ、自分の意思でフィールドに向かったんだ。
大丈夫だろう。
「お前、壁山を励ます為とはいえ、負けてもいいはねぇだろ」
ベンチに戻り腰かければ、一部始終を見ていた染岡が呆れたように声をかけてきた。
『いや、その方がプレッシャーにならないかなって思って。でもちゃんと皆が勝つって信じてるからさ』
「そうかよ」
『そうだよ』
さあ、後半戦が始まる。
メンタルケアも仕事のひとつ
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